(1) | 従来どおり漢数字を算用数字にして「1億2345万6789円」とするか,
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(2) | 全部算用数字にして,3桁で位取りして「123,456,789」と書くか,
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(3) | 折衷的に「1億2,345万6,789円」と位取りを入れるか,
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いずれの表記法がいいのか,ときとして問題になる。
「普通、この数額の表示には、次の3つの例が考えられる。
1 六〇〇〇万〇二〇〇円
2 六、〇〇〇万〇、二〇〇円
3 六〇〇〇万二〇〇円
1と2が多く、3は少ないながらも結構見かける。
本稿では絶対的に1を推奨し、2・3の用法を根絶することを提唱したい。」
「趣味の問題に近いが、「六、〇〇〇万〇、二〇〇円」と「、」を入れる合理的理由がないなら、今後は「六〇〇〇万〇二〇〇円」で統一したいものである(ちなみにいうと、本多勝一も倉田卓次もこちらの表記を進めている。)。」
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(注1) 倉田卓次「手控の実技」判例タイムズ(1974年)311号60頁
(注2) 「調書等における数字などの表記について」裁判所書記官研修所「書研所報」(1980年)30号243頁
(注3) 「公用文の作成要領」(昭和27年4月4日付け内閣閣甲第16号内閣官房長官依命通知)は,左横書きの場合の数字の表記として次のようにしている。しかし,「1億2,345万6,789円」のような書き方まで許容しているかは定かでない。
・ | 「100億,30万円」のような場合には,億・万を漢字で書くが,千・百は,たとえば「5千」「3百」としないで,「5,000」「300」と書く。
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・ | 大きな数字は,「5,000」「62,250円」のように三けたごとにコンマでくぎる。
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ところが,「司法行政文書の書き方(新訂)」(司法協会1995年)では,「数字の書き方」の項で,「1億2,345万6,789円」のような書き方を許容している。
・ | 数字のけたの区切り方は,3位区切りとし,区切りには,「,」(コンマ)を用いる。
(例) 1,234人 56,789,012円
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・ | 大きな数字を表す場合には,漢数字を用いることができる(千及び百は,用いない。)。
(例) 1,200億 2億58万6,300円 89万5,000人
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司法研修所刊行の「刑事判決書起案の手引(平成13年版)」(法曹会発行)も,「数字の書き方」の項で,次のように記述し,寛容である。
「5けた以上の数字を表すのに「153,025円」と書く方式,「15万3025円」と書く方式,「15万3,025円」と書く方式があるが,そのいずれでなければならないということはない。しかし,この三者を無方針に併用することは適当でなく,同一判決中では統一した書き方によることが望ましい。」
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縦書き時代のものであるが,裁判所書記官研修所実務研究報告書「書記官実務を中心とした和解条項に関する実証的研究」(昭和57年法曹会発行)は,次のように記述している。
「数字の表記については,「金一万五、〇〇〇円」とする記載例も見られるが,「万」を入れるときは「千」の単位を示す「、」は省いて,「金一万五〇〇〇円」と記載するのが妥当である。(「調書等における数字などの表記について」[原文は縦書き] 書研所報30.243参照)」
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最新版「朝日新聞の用語の手引」(2002年朝日新聞社刊)は,数字の表記として,次のような基準を採用している(原文は縦書き)。これは,記者の記事作成の基準となっているものであるが,万進法を採用し,「位取りの点を付けない」表記となっている。
一 洋数字使用の原則
1 日時,年齢,金額,数量など数字の表記には原則として洋数字を使う。
例 25日午後5時ごろ 山田太郎さん(35)
2 次の場合は漢数字を使う。
a 慣用句、成句、専門用語、固有名詞に含まれる数字
(以下略)
二 数字表記の仕方
1 縦書き文中では2けたまで1文字で書く。
例 25人 30組 456回 10万円
2 1万以上の数には原則として単位語を付ける。数表などを除き位取りの点
は付けない。
例 12万3456円
(以下略)
(筆者注)25,30,10,12は,縦書き表記で,横に2文字並んだ表記である。
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「記者ハンドブック」(第8版:1997年共同通信社刊)は,「横書きの方式」(557頁)の中で,次のような基準を採用し,新聞業界でも,必ずしも表記の統一はされていない。
1.横書きの場合は、左横書きとする。
2.数字は、特別の場合を除いて、洋数字を使う。
(1)数字のケタは、千、百万、十億で区切り、その符号として「,」を使う(小数点の
「・」を使うのは間違い。)ただし、年号、文書番号、電話番号、番地など特別なもの
には、区切り符号を付けない。
〔例〕 150万 1,200万 5億6,300万円 7億200万円 14兆5億円
数字の単位として「兆」「億」「万」は使うが、「千」「百」は使わない。
6,300(6千3百としない)
(以下略)
(筆者注)(1)は○数字表記である。
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(注4)
法律家ゴマの研究室「法律実務とパソコン」中
「金額の表示について考える」
(注5) 本多勝一「しゃがむ姿勢はカッコ悪いか?」(潮出版社1992年発行)収録の「数字表記に関する植民地的愚挙」(130頁,家庭画報1973年11月号発表),「四ケタで点を打つ運動」(142頁)
(注6) 数字の相互変換ソフトを作る場合,「2万3456円」を「23456円」又は「23,456円」と変換又は逆変換するプログラム(マクロ)は,そう難しいことではない。しかし,「2万56円」のような表記を許すと,これを「20056円」に変換するためには,プログラムの組み方にもよるが,少し複雑な処理が必要になる。
(注7) 裁判所内では,A4版横書き化に伴い,次のような実務的な統一指針が示されている。
「裁判文書の標準的な書式,表記例」
(以上2002.3.21記,同5.2一部改訂,同6.19一部改訂,2003.10.24一部改訂,
2004.1.31一部改訂,同2.15一部改訂,同8.7一部改訂)
【その後の調査結果】(最高裁判例の表記法)
最高裁判例(最三小判平成13年03月27日民集第55巻2号434頁(平成7(オ)1659号通話料金請求事件(ダイヤルQ2事件判決))では,主文中の表記で,「被上告人は,上告人に対し,5万0539円及びうち4万0762円に対する平成3年3月1日から,うち9777円に対する同年4月2日から,各支払済みの前日まで年14.5%の割合による金員を支払え。」と表記されている。
また,最三小判平成20年06月10日平成18(受)265 損害賠償請求事件では,判決理由中に「547万0320円」の表記がある。
最高裁の判決表記法では,「2万2,500円」や「3万450円」の表記は採用されていない。
(2009.08.16記)
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