■2010年6月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●北米事情
●カナダでGM種子法案下院通過

 カナダでGM種子法案が下院第二読会を通過した。法案は議員立法で提出されたもので、GM種子承認にあたっては、作物を輸出する際の経済的な影響評価を求めている。 〔Better Farming 2010/4/16〕
 この法案の賛否をめぐり、激しい論争が起きている。シンジェンタ社は、この法案が成立すると多大な損害を被ると、反対の意向を表明した。 〔ロイター 2010/4/28〕

●オバマ大統領がまたバイテク業界寄りの人事

 オバマ大統領は、米国通商代表部農務交渉責任者にイスラム・シディキを任命した。バイオ技術と農薬の業界団体であるクロップライフ・アメリカの科学・規制関連担当副代表を務める人物で、その名前が候補に挙がったときから、環境保護団体や農家、消費者団体が反対の声を挙げていた。シディキは農務省次官時代にオーガニック表示基準制定を執り仕切ったが、その際、遺伝子組み換え食品や照射食品を「オーガニック」と認めようとしたため、消費者が強く反対して厳しい基準に変更させた経緯がある。 〔Center for Biological Diversity 2010/3/28〕
●遺伝子組み換え作物
●新たな除草剤耐性大豆、試験栽培へ

 4月19日、モンサント社は除草剤ジカンバ耐性大豆の試験栽培計画を発表した。ジカンバは安息香酸系の除草剤である。同社の茨城県にある圃場で栽培し、生物多様性への影響を評価するのが目的。6月上旬に栽培を開始し、10月に収穫を予定、来年1月に越冬調査を終了させる、としている。 〔日本モンサント 2010/4/19〕
●企業動向
●GM小麦を途上国に売り込むための国際機関との提携

 スイス・シンジェンタ社と国際農業研究機関の国際トウモロコシ・小麦改良センター(CIMMYT、本部・メキシコ)が、途上国にGM小麦を導入させるため、共同で働きかけていくことを決めた。シンジェンタ社が開発したゴールデンライスは国際稲研究所(IRRI)が売り込みに当たっているが、それと同じようなことが小麦で取り組まれることになるようだ。 〔Country Guide 2010/4/8〕
●自治体動向
●神奈川県がGM作物交雑防止条例を公布

 3月30日、神奈川県は「神奈川遺伝子組換え作物交雑等防止条例」を交付した。条例では、知事による栽培中止命令や罰則などが規定されている。施行は2011年1月1日。神奈川県ではすでに、GM作物の栽培者は事前に栽培計画書を県に提出しなければならない、などを規定した、「神奈川県食の安全・安心の確保推進条例」第14条第1項に基づいた「神奈川県遺伝子組換え作物の栽培等に関するガイドライン」を今年1月4日に施行している。
●省庁動向
●消費者庁、食品表示の作業部会設置

 消費者庁は、同庁が食品表示を一元管理することになったことから、新たな法体系をつくるための作業部会(代表・泉政務官)を設置した。とりあえずは消費者庁内部で作業を進めるが、消費者委員会・食品表示部会との関係や、最終的には厚労省や農水省など関連省庁との連携もはからなくてはならず、どのような道筋をたどっていくかは不透明である。
 最終的には抜本的な表示制度の改正を目指しているようだが、時間を必要とするため、並行して当面可能なところから着手する方針も立てている。その対象となったのが加工食品の原料原産地表示、トランス脂肪酸、健康食品、遺伝子組み換え食品である。最初の案では遺伝子組み換え食品は含まれていなかったが、この間の消費者の声に応えて、追加された。

●食品安全委員会、GM食品に新たな懸念なし

 食品安全委員会は3月31日、昨年12月にフランスで発表された、GMトウモロコシをラットに与えた実験で、腎臓や肝臓などの解毒器官に損傷を与えるなどの影響が出た、とする論文(本誌2010年2月号参照)について検討を加えた。その結果、新たな懸念はないと評価し、安全審査をやり直す必要はないと結論づけた。
●多能性幹細胞
●厚労省指針改定、iPS細胞など臨床応用解禁

 4月12日、厚労省の専門委員会が開かれ、ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の改定案がまとめられた。今回の指針改定にあたっての最大の焦点は、現行指針では造血幹細胞などの「体性幹細胞」のみと限定していた対象範囲を、胚性幹細胞(ES細胞)と人工多能性幹細胞(iPS細胞)まで、一気に拡大する点である。死亡胎児から採取した幹細胞については、現行のまま対象には含まれないとしている。
 指針の改定案は、4月30日から6月4日までパブリックコメント(一般からの意見)が募集されて最終決定し、運用が開始される。