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バイオジャーナル

ブタの腎臓移植患者、またも2か月足らずで死亡

 

5月11日、マサチューセッツ総合病院は、豚の腎臓を移植したリチャード・スレイマンさんの死亡を発表した。スレイマンさんは末期腎不全で、3月16日に同病院においてゲノム編集で遺伝子を改変した豚の腎臓を移植していた。スレイマンさんは腎臓病に加えて2型糖尿病、高血圧も患っていた。また2018年に腎移植を受けていたが、その腎臓がうまく機能していなかった。

移植した豚の腎臓を作成したのは、米国のバイオ企業イージェネシス社で、拒絶反応をもたらす遺伝子を壊すために、69ものゲノム編集を行なったという。これほど多くのゲノム編集は、他の分野を含め初めてのことである。これまで豚の臓器の人間への移植は腎臓が4人(スレイマンさんを除く3人が脳死患者)、肝臓が1人(脳死患者)、心臓が2人である。脳死患者以外では、スレイマンさん以前に心臓移植が2人に行われているが、いずれも2か月足らずで死亡した。今回も2か月に満たなかった。4月12日には新たに54歳の女性へ豚の腎臓と胸腺の移植が行われ、米国での異種移植は計8件となった。

このように繰り返し豚の臓器移植は行われているが、けっしてうまくいっておらず、人体実験が繰り返されている。それでも、これからもブタの臓器移植は増えることが予想される。今後増えそうなのが中国での移植である。中国では3月10日に、ゲノム編集した豚の肝臓を脳死状態の患者に移植した。移植を行なったのは、中国科学院と空軍軍医大学西京医院の研究チームで、肝臓を提供したのは、成都にあるクロノルガン・バイオテクノロジー社で、ゲノム編集で3か所の遺伝子をノックアウトしている。そのほか、空軍軍医大学西京医院は、戦時などに必要な大量輸血のためにゲノム編集した豚の赤血球の試験移植を始めると発表した。また韓国のバイオ企業のオプティファーム社も豚の臓器移植を開始すると発表しており、ゲノム編集技術の豚の臓器への応用と人間への移植が競争になりつつある。〔Global Times 2024/5/15ほか〕