■2006年4月号

今月の潮流
News
News2
今月のできごと


今号の目次へ戻る
ジャーナル目次へ戻る






























バイオジャーナル

ニュース


●遺伝子組み換え動物
動物産生の医薬品、承認されず

 ヨーロッパ医薬品庁は、GTCバイオセラピューティクス社が開発した、動物が作り出す医薬品の申請を却下した。理由は、臨床データが少なかったことと、試験した医薬品と販売する医薬品との間では微妙に製造方法が異なっていたため。この医薬品は、ヤギの受精卵に遺伝子を導入し、乳から血漿タンパク質の1つヒト・アンチトロンビンVを取り出す。アンチトロンビンができないため血栓症になりやすい人の治療薬を目指していたが、動物の体を経るため、従来では考えられない危険性があることから、慎重に評価されていた。 〔Nature 2006/2/24〕

●幹細胞
ヒト幹細胞指針、“死亡胎児由来”は対象外

 2月22日、厚労省の専門委員会が開かれ、2002年1月から4年の長きにわたって議論が重ねられたヒト幹細胞を用いた臨床研究の指針が、ようやくまとめられた。今後、パブリックコメントを募集し、本格運用は8月ぐらいになる予定だ。指針では、国と研究機関の二重審査やインフォームド・コンセントの確保が定められているが、最大のポイントは、研究段階のヒトES細胞と、委員の間で賛否が真っ二つに分かれた死亡胎児由来の幹細胞を外し、体性幹細胞のみを臨床研究の対象とした点である。厚労省としては、欲張って議論を長引かせるよりは、とりあえずは無難なところでまとめて、幹細胞を使った再生医療の道を切り開こうと判断したようだ。


●クローン
クローン研究で女性研究者らの卵子提供禁止


 3月6日、人クローン胚の作成・利用に向けた指針作りを進めている文科省の作業部会が開かれ、研究に必要な卵子(未受精卵)を集める際、研究チームに所属する研究者本人や配偶者、またはその親族からの提供を禁止する基本方針を打ち出した。親族の範囲については今後検討していく。韓国ソウル大学の論文捏造スキャンダルでは、研究チーム内の女性研究者が未受精卵を提供していたことや、提供施設で未受精卵の売買が行われていたことなど倫理的な問題が次々と明らかにされた。この事件を受け、文科省では研究関係者の提供について議論していた。人クローン胚研究に対する文科省のスタンスは、今のところ、日本は制度的枠組みをきちんと定めた上で積極的に推進していくとしている。


●遺伝子組み換え作物
GM作物の次世代への影響、続報


 イリーナ・エルマコーヴァによるGM大豆が次世代に及ぼす影響に関する動物実験の詳しいデータをお伝えする(2005年12月号参照)。

表1 子ラットの死亡率

与えた飼料 通常の飼料 通常の大豆 GM大豆
出産した親ラット 6頭中4 6頭中4 3頭中3
出生数 44 33 45
死亡(1週間以内) 2 3 14
死亡(2週間以内) 1 0 6
死亡(3週間以内) 0 0 5
死亡率(3週間以内) 6.80% 9.10% 55.60%

表2 子ラットの体重(2週間目)

与えた飼料 通常の飼料 通常の大豆 GM大豆
低体重(10−20g) 6.00% 6.70% 36.00%
平均体重 30.03g 27.10g 23.95g
  (±6.2g) (±3.3g) (±7.3g)

Irina Ermakova(Institute of Higher nervous Activity and Neurophysiology,Russian Academy of Science)


今月のGMO承認情報
表3 GM作物野外栽培承認(第1種使用規定)一覧
生物多様性影響評価検討会総合検討会
作物 性質 申請(開発者) 名称 認可日*
トウモロコシ 害虫抵抗性+除草剤耐性 ダウ・ケミカル日本 TC6275 2月15日
ナタネ 除草剤耐性 日本モンサント RT200 2月15日
*正式にはパブリックコメントの後に認可される。