安田しん二レコーディング日記
私、安田しん二のスタジオ、FAB ROCKS REC. HOUSEでの奮戦記です。
FAB ROCKS REC. HOUSEはNon DIGITALにこだわった、
ANALOG専門のレコーディング・スタジオです。


 

2004年11月18日木曜日
 私達は昨日の夜、久々にFAB ROCKS REC. HOUSEに集合しました。私とよすおさんは青ちゃんよりも若干早くFAB ROCKS REC. HOUSEに着き、ノート・パソコンでカーペンターズやサイモンとガーファンクルなどのライヴDVDを鑑賞して待ってました。
 私とよすおさんから遅れる事およそ2時間、青ちゃんも到着し、簡単なおつまみとサッポロのラガー・ビールで乾杯です。「まあ飲みながら」と言う事で、今後のスケジュールについて話そうとしてましたが、段々とアルコールが回っていくうちにそんな事も忘れ、何やらいつもの音楽&楽器・録音機材の話しになって行きました。盛り上がるだけ盛り上がり、時計を見るとなんともう朝の5時半…。このまま行けば、延々と飲み続けてしまいそうなので、今日はここらで飲み会を切り上げて、布団に入りました。
 私が目を覚ますと外は雨が降ってました。時計を見るとまだ11時前でしたが、寝室の電気を付け、青ちゃんとよすおさんを起こしました。
 朝のァ食事を取る前に、近所のレコーディング・スタジオに行きました。急な話だったので、朝はいきなりあわただしくなり、私は歯を磨く時に、歯磨き粉とよすおさんのシェービング・ジェルとを間違えて歯ブラシに付けてしまいました……。

 今回はレコーディングは無し。実は、私とよすおさんは先日コンピューターを買い換え、「お家用」のシーケンス・ソフトと周辺機器も購入したので、それのインストールやらセッティングをしました。私達BANANASのレコーディングでは、コンピューターなどは一切使わないのですが、私やよすおさんが他人に曲を提供したりする時などは、これでデモ・テープを創らなくてはいけませんので、この様な文明の利器も必要です。それから、今後はよすおさんもBANANASの曲を書くと言って張り切ってますので、彼はこれでデモ・テープを創って来る事でしょう。私の方は、BANANASの曲に関しては相変わらず、ほとんどの場合が「デモ・テープ無し」と言うスタイルが取られると思いますが…。しかし、これらを使って、FAB ROCKS REC. HOUSEでレコーディングしたトラックをシーケンサーの音声トラックに録り込んで、家に持って帰ってプレイやアレンジを再度チェックしたりも出来る様になります。
 とりあえず、インストールも上手く行き、ホッとしてます。最近のシーケンス・ソフトにはソフト・シンセなるものが入っていて、MIDIインターフェイスとキーボードがあれば、それで一応音が出てしまうのであります。実に便利な時代になりました。……と、そうは言いつつも、これからもノン・デジタル/オール・アナログなレコーディングは、どこまでも頑固に続けて行きたいと思ってます。

2004年11月24日水曜日 at『伊豆スタジオ』
 今日は音響専門誌、『プロ・サウンド』のレビューの為のマイクロフォン・テストです。
 私の役目はピアノを弾きながら歌う事。1本のマイクロフォンを使って歌を録るのですが、その時に、その歌のマイクロフォンにどれだけピアノの音がかぶって来るかも同時にテストします。勿論、かぶりの音がどんな風に聞こえるかも重要なチェック・ポイントになります。
 エンジニアリングはレビューを担当する青ちゃんが行い、よすおさんも出来る事をアシストしてくれてます。使うマイクロフォンは、一本数百万円もする数本のマイクロフォンです。これらの詳しい内容は、実際に『プロ・サウンド』が発行してからお読みください。あしからず…。

 『プロ・サウンド』のレビューはお昼頃始まりましたが、夕方には無事終わりました。その後はいよいよBANANASのレコーディングです。私とよすおさんはFAB ROCKS REC. HOUSEからベースとドラム・セットを取ってきてセッティングです。しかし、なんだかみんな疲れてしまったのか、気分がどうも乗りません。みんな朝はやかったからなぁ…。しょうがないので、今日はこの辺で切り上げて、明日気持ちをリセットしてレコーディングを始めたいと思います。

2004年11月25日木曜日 at『伊豆スタジオ』
 昨日、ドラム・セットとマイクロフォンのセッティングをしておいたので、今日は音を素早く創り、早速録りと行きたいところです。
 そうそう、曲の事を言い忘れてましたが、今回(数ヶ月間続くと思います)のレコーディングは『セルフ・カヴァー・シリーズ』であります。私が以前、他のアーティストに提供した曲をセルフ・カヴァーして、6〜7曲ほどレコーディングしたいと思ってます。何故そう言う事になったかは、いずれあらためて説明致しますので、ちょいとお待ちを
…。
 さて、『セルフ・カヴァー・シリーズ』の第1弾目、今日演る曲は、浅香唯さんに提供した、「ひとり」と言う曲です。
 この曲の浅香唯ヴァージョンは、私が作編曲、穂早菜さんと言う方が作詞されたもので、当時、ギターとコーラス以外はほとんど打ち込み(ソロは私のシンセによる手弾き)で録音されました。勿論、今回のBANANASヴァージョンはデジタル&打ち込みは無し……ですが、あらかじめクリックとガイドのコードは打ち込んだものを入れておきます。私はこれを聴きながらドラムを叩くつもりです。クリックを入れる場合、いつもでしたらリズム・ボックスを使うのですが、今回は先日買ったばかりのロジックを使ってみます。勿論、ドラムを録った後は、カウント以外、これらは使わなくなります。
 さて、クリックと仮コードを録る時、せっかくだから、ロジックをSMPTEと言う信号に合わせ、MTRと同期させてみる事にしました。別にそれが絶対に必要なわけではありませんが、今後の為と言う事です。ところが、これが上手く行かず……と言った事態に。色々と調べた結果、私達が使ってるインターフェイス、MOTU828mkIIが、まだMacOSX版ロジックには完全に対応出来てないと言う事が判明……。つまり、現時点ではこのインターフェイスだけではSMPTEが使えないって事です……残念、斬り!!(ボケてる場合じゃないですが…)。と言うわけで、これでかなりの時間を費やしてしまいましたが、まあ、しょうがない…。結局はクリックと仮コードをMTRに同期を掛けずに流し込みました。だったら、最初からそうしておけば良かった…。『伊豆スタジオ』のアシスタントさんに随分迷惑を掛けてしまいました……。
 なんだかんだで、ドラムを録音し始めるまでにそうとう時間が掛かってしまいましたが、いざ始まってしまえば、終わるまではアッという間でした。先ずはドラムを1、2度叩いてそれを録音し、録れた音を確認する
と同時に、私の方のヘッド・フォンのモニター・バランスもチェックします。録れた音は、私がコントロール・ルームでその音を聴き、青ちゃんとディスカッションして行きます……っと、そんな感じで、すぐに音が出来上がり、青ちゃんが「とりあえず、これはこれでOKとしておいて、試しにスネアのマイクを換えてみる?」と聞くのでその様にしてもらうと、そっちの方が更に良かったので、結局それで行く事にしました。この時、私と青ちゃんのやりとりを見ていた『伊豆スタジオ』のアシスタントさんは、私達のディスカッションが絶妙だとかで、かなり驚いてたみたいです。まあ、私達の付き合いは永いですから……。ですが、考えてみれば、BANANASのレコーディングではいつも私が自分でドラムを録ってましたので、青ちゃんにドラムを録ってもらうのは、ミラクルシャドウ時代以来初めてかもしれません。お陰で今回はプレイに集中出来ます。それにせっかくだから、試みとして、いつもの様にイコライザーなどを使わずに録るのだけではなく、コンプレッサーも使わないで録ってもらいました。
 さて、いよいよ本番……、テイク1か2で終わり…。あっけなかったです…。録れた音にも満足。

 ドラムの後はアコースティック・ピアノを録ります。ここのスタジオのピアノは、ヤマハのコンサート・グランドです。ここのヤマハの音は乾いていて、とても良い音です。
 ロジックから流し込んだもののうちで、私がヘッド・フォン・モニターする音は、仮コードは全て消去、クリックも、(カウントは残しで)ドラムが出てこないところ以外は消去しました。つまりは、ドラムの音にピアノを合わせて行きます。まあ、これは当然の話しですが、クリックに合わせてドラムを叩いたにせよ、生身の人間の叩いたドラムのノリと言うのが出て来てしまうので、もはやドラムの入ってるところのクリックは不要になります。

 ピアノの後はいよいよベース。前半の私達が「ド・イントロ」と呼んでる部分は、唯ちゃんのヴァージョンはムーグ・ベースでしたが、よすおさんにはファズ・ベースで演って貰いました。この時、機材のトラブルが次々と起こり、かなりの時間が掛かってしまいましたが、最終的には無事録り終える事が出来ました。
 そして、そのまま曲中のベースを入れて行きます。使用するベースは1966年製(65年だったっけ?)の白いフェンダー・ジャズ・ベース。今回、私のたってのリクエストに応え、よすおさんのジャズ・ベースには、ピック・アップ・カヴァーとフェンダーのFの字が入ったブリッジ・カヴァーが取り付けられてます。……カッコイイです。昨今、ジャズ・ベースを使ってる人の大部分は、これらのカヴァーを外してます。ですが、元々はジャズ・ベースやプレッション・ベースにはこれらのカヴァーが付いてたわけです。私の変なこだわりの様ですが、これを付けると見た目だけではなく、プレイや音も私の好みになると信じているのであります。
 ベース・アンプは、ここのスタジオに常備してある(アシスタントさんの持ち物だそうです)、アコースティックのベース・アンプを使いました。これが良いんです!
 よすおさんには、「こんな感じでベース弾いて」と言ってあるので、弾き方にも注意をはらってくれてました。青ちゃんがマイクをアンプに立て、コンプなどを微調整してる時、それと平行して、私がベース・アンプのトーン・コントロールを微調整して行きます。普通はこんな事をすると、ベーシストやエンジニアには叱られますが、私達の場合はこれが普通なんです。1つの音を創るのにも3つ(3人)の視点を持って、役割を分担してるのです。勿論、方向性は1つでなくてはいけません。テープには既にドラムとアコースティック・ピアノが録音されています。言い忘れましたが、私の仮のヴォーカルも入ってます(ベース録る前に入れたんだった…)。この音を出しながら、それらの音とはぶつからない様にベースの音の居場所を創って行くのであります。
 音色が決まると、青ちゃんはコンソールの前を離れ、ブースに行きます。逆によすおさんは「コントロール・ルームで弾きたい」と言うのでコントロール・ルームに入って来ました。青ちゃんは、ベース・アンプの接点が良くなかったので、それを直接チェックしに待機してるのです。その代わり、私がコンソールの前に座り、コントロール・ルーム内のモニターを決めていきます。よすおさんには、このモニター・バランスでプレイして貰います。例えば、「ここはピアノを聴いて!」とかって言う様にその曲の場所によってバランスを変えてしまうのです。普通のベーシストだと結構嫌がるとは思いますが、私とよすおさんのコンビはそうやってディスカッションするのが恒例です。勿論、基本的には、よすおさんの演りやすいバランスを優先しますが…。
 いざ、本番に入ると、1テイク目でノリもバッチリ良かったので、基本的にはこれでOK。ベース・アンプの接点不良により、ノイズが出てしまった所を1〜2カ所だけプレイし直して、「あとはよすおさん宜しく!」と言ってよすおさんにセルフ・ディレクションとして任してしまいました。

 ベースが入ったところで、ひとまず今回のレコーディングは終了です。いつもと違い、後片づけをして、機材等を車に積み込みます。帰り際、青ちゃんが「眼鏡が無い!」と言って大騒ぎしましたが、1時間ほど探した結果、無事見つかりました。
 次回からは、またFAB ROCKS REC. HOUSEに戻ります。12月のレコーディングは、かなり多くなりそうです。また、寒さとも戦わなくてはなりませんが、この時季は鍋も美味いし、露天風呂も気持ち良いです。


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