ドアをノックせよ


2003年12月12日(金曜日)のお昼頃、また誰かがドアをいきなり開けて、部屋の中を覗いていった(1)。これで、何回目になるのだろう? 現在、私が一人で部屋を使っていることは、行き先表示板をみれば一目瞭然である。私に用事のない人は尚更のこと、用事のある人でも勝手にドアを開けるのは言語道断である。それとも、私の行き先表示が「在室」になっていて、部屋の明かりも点いているのに(不在のときは電気を消している)、その誰かは「部屋には人がいない」とでも思い込んで、ドアを開けているのか?

大学というところは、どうも「他人の部屋に入る前にはドアをノックして、その部屋にいる人の了承を得てからドアを開ける(2)」という世間の常識が、全く通用しない世界のようである。仕方がないので、ドアのところに以下の貼り紙をすることにした。日本人以外の留学生にも理解できるように、貼り紙の文章は英文にし、これには「please」という単語を付けなかった。このような命令形にしたのは、世間の常識をわざわざ「お願い」するまでもないからである。

Knock the door before opening it, and then enter the room.

これで「どれだけの人がドアをノックするようになるのか?」は、全く見当も付かない。学生や大学院生、更には大学の教職員までもが「ドアをノックしないで他人の部屋に入る」のを「当たり前」と思っているところが、怖い(だから今回の「立てこもり事件(3)」のように不審者の侵入を招くのである)

[脚注]
(1) 私はドアに背を向けて座っており、6段組みの衣装ケース(書類ケース代わりに使用)で、ちょうどドアが死角になっているので、誰かがドアを開けた気配を感じて廊下に出てみても、それが誰なのか確認できた例し(ためし)がない。
(2) 思い出してみるがいい。この部屋に人がたくさんいたときでも、外部から訪ねてくる業者は、ドアを開ける前に必ずノックしていたはずである。この部屋を私の友人が訪ねてくるときもドアをノックする。自分が使用している部屋ではないから当然である。こうしてみると、部屋に入る前にドアをノックするのは、大学の外にいて社会人として活躍している人々が、ほとんどのようである。大学の内にいる人は、一部の常識人を除いて、このような世間知らずの「モラトリアム人間(1)」をずっと続けていくのかもしれない。
(3) 2003年12月19日(金曜日)の午後3時頃、新潟大学工学部の事務室(学務係)に、危険物(ナイフと液体の入ったビニール袋)を持った米国籍の男が入り込み、約1時間にわたって立てこもった。こういった外国人の場合、大学では基本的に「留学生」と考えるので、不審者という認識はなかったものと思われる。

[脚注の脚注]
(1) 「モラトリアム人間(a moratorium human being)」は和製英語で「精神的に未熟な人間(a mentally immature human being)」と書くのが、本来の意味を表す英語のようである。


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