小さな学会なので、一日限りの開催であった。当日は「博物館周辺に食事の出来る店が少ない」という理由で、大会事務局から500円(600円だったかもしれない)の弁当が配られることになっていた。朝の受け付けで、お金を払って弁当を頼んだ人には引換券が渡され、昼食時に弁当と交換する手はずになっていた。ところが、昼の休憩時間帯になると、弁当を頼んだ(ことになっている)人が会議室のようなところに一斉に集められ、席に着かされると、引換券と交換することもなく弁当が配られていった。部屋の入り口近くに陣取った大会事務局のAさんが、弁当をひとつずつ先頭にいる人に手渡すと、それを順繰りに後ろに回していくという方法であった。
しばらくして私のところに弁当が回ってきたので、それを後ろの人に回すという行為を、幾度か繰り返した。後ろの人に弁当が行き渡り、さて私の番というところで、見事に私の前の人のところで弁当の配給がストップしてしまった。待っても弁当が回ってこないので、席を立ってAさんのところへ行き、私の分の弁当がない旨を告げると「もう弁当が切れた」とのことであった。Aさんに抗議しても「誰か、お金を払わないで弁当を受け取った人がいるのだろう」の一点張りで、私の分の弁当を再手配しようともせず、弁当代を返そうともしなかった。仕方がないので、元いた席に戻り、他の人たちが食べ終わるのを黙って眺めているよりなかった。周りにいる人たちからは「こういうのは、先に自分の分を確保して、それから後ろに回すものだよ」と、慰めにもならない言葉をかけられるばかりであった。
日本爬虫両棲類学会への大会参加は、そのときが初めてであった。当然、知り合いもなく、一緒に参加した指導教官だった教授は、昼食を採りながらの幹事会とかで、その場にはいなかった。どういう学会なのか分からないので、不安感だけが先に立ち、誰に助けを求めることもできなかった。
こうして、苦い思い出だけが、記憶に刻み込まれてしまった(2)。
[脚注]
(1) 夢にまで出て来るくらいだから、よっぽど悔しかったのだろう。大会事務局の皆さん、今からでも遅くないから、私に謝罪して、弁当代を返してくれませんか?
(2) 関係者に誤解なきよう言っておくが、今回の独り言は、日本爬虫両棲類学会を非難するものではない。当時の大会事務局のAさんが、独自の判断で、何もしようとしなかったことを問題にしているわけである(初見参で侮られたのか、単に面倒くさかっただけなのかは分からないが......)。