卵嚢群(クロサンショウウオ)

Egg Sac Mass15e

同所的に生息するクロサンショウウオとトウホクサンショウウオの種間の交配後隔離機構(Hasumi and Kakegawa, 1989; 共著へのクレーム)。

(A) クロサンショウウオの卵嚢の大群(500対以上)。1986年6月1日、新潟県村松町白山の頂上にある小さな池(面積は3平方mくらい; 標高1012m)に産出されたもので、ちょうど繁殖活動が終了したところであった。これらの卵嚢の大部分で、胚発生は尾芽胚期まで進行しており、産み出されて間もない卵嚢は、およそ10対であった。池の中には、クロサンショウウオのオス56匹と産卵後のメス8匹が確認され、オスの多くは完全な陸生型の形態を示した。ここから無作為に選んだ7匹のオスを解剖したところ、精巣と輸精管は萎縮し、輸精管に精液は存在しなかった。調査時に、池の周りに積雪はなかった。

(B) トウホクサンショウウオの卵嚢で、クロサンショウウオの500対以上の卵嚢の中から見つかったもの。卵嚢内にある胞胚期の胚15個は、神経胚後期までに全て死滅した。これは、トウホクサンショウウオの1匹のメスが産出した片方の卵嚢内の卵に、高密度にあるクロサンショウウオのオスの精子が偶然に掛かった結果で、交配後隔離機構の証拠である(もう片方の卵嚢は見つからなかった)。交配後隔離機構とは、同所的に生息するサンショウウオ属の種間雑種の場合、初期発生の途中で胚が死滅するというものである。

トウホクサンショウウオは、白山の麓にある慈光寺(標高160m)周辺にだけ生息している。


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