(A) 生息域 R1: 1997年5月10日の調査時に10.5×4.1mの面積を持つ池(深さ52cm)。水表面近くには、発生段階が神経胚から尾芽胚までのエゾアカガエルの卵塊が約20個あった(気温15.3℃, pH5.90)。水温は、池の底が凍っていたため、2.8℃(深さ50cmで)から14.5℃(深さ0cmで)まで変異した。
6月8日には、発生段階が26(平均=26.0, 標準偏差=0)で、体重が0.03〜0.13g (平均=0.079g, 標準偏差=0.025)のオタマジャクシ24匹を、池から採集した(深さ65cm; 気温11.2℃, pH5.84)。水温は、6.1℃(深さ30cmで)から8.7℃(深さ0cmで)まで変異した。
7月8日には、発生段階が26〜32(平均=28.7, 標準偏差=1.7)で、体重が0.05〜0.38g (平均=0.201g, 標準偏差=0.074)のオタマジャクシ38匹を、池から採集した(深さ62cm; 気温16.9℃, pH6.04)。水温は、13.0℃(深さ50cmで)から15.0℃(深さ0cmで)まで変異した。
8月10日には、発生段階が28〜37(平均=32.9, 標準偏差=2.5)で、体重が0.14〜0.68g (平均=0.458g, 標準偏差=0.164)のオタマジャクシ24匹を、池から採集した(深さ63cm; 気温14.7℃, pH5.69)。水温は、12.9℃(深さ0cmで)から13.9℃(深さ60cmで)まで変異した。
これらの調査期間を通して、池の中に捕食者は見られなかった。
(B) 生息域 R3: 1997年5月11日の調査時に42.7×3.5mの面積を持つ池(深さ55cm)。水表面近くには、発生段階が神経胚から尾芽胚までのエゾアカガエルの卵塊が約10個あった(気温4.2℃, pH5.98)。水温は、6.6℃(深さ0cmで)から7.4℃(深さ50cmで)まで変異した。
6月8日には、発生段階が26(平均=26.0, 標準偏差=0)で、体重が0.11〜0.19g (平均=0.141g, 標準偏差=0.025)のオタマジャクシ7匹を、池から採集した(深さ64cm; 気温16.5℃, pH5.80)。水温は、9.5℃(深さ60cmで)から19.9℃(深さ0cmで)まで変異した。
7月8日には、発生段階が32〜35(平均=33.2, 標準偏差=1.3)で、体重が0.54〜1.25g (平均=0.780g, 標準偏差=0.289)のオタマジャクシ5匹を、池から採集した(深さ64cm; 気温21.4℃, pH5.80)。水温は、13.2℃(深さ60cmで)から16.0℃(深さ0cmで)まで変異した。
8月10日には、池からはオタマジャクシを1匹も採集することが出来なかった(深さ73cm; 気温17.7℃, pH5.53)。水温は、15.1℃(深さ0, 10, 20, 30, 40cmで)から15.9℃(深さ60cmと70cmで)まで変異した。
池の中には、6月8日にルリイトトンボの幼虫1個体(イトトンボ科)、エグリトビケラ属の幼虫1個体(エグリトビケラ科)、7月8日にエゾトミヨの成魚2尾・稚魚5尾(トゲウオ科)、ゲンゴロウ科の幼虫2個体、8月10日にエゾトミヨの稚魚2尾、ゲンゴロウモドキの成虫オス2個体(ゲンゴロウ科)が見られた。いずれも、エゾアカガエルの卵塊が集まっていたところから半径3mの範囲を、タモ網で5回すくうことで得られた結果である。これらの中で、イトトンボ科とゲンゴロウ科の種は、エゾアカガエルのオタマジャクシの明らかな捕食者であった。
高い水温と高い捕食圧が、生息域のR3では、オタマジャクシの成長を促進したと考えられる。
羽角正人・神田房行. 1998. 別寒辺牛湿原の両生類相. 環境教育研究 1(1): 165-169.
羽角正人・神田房行・藤塚治義. 1998. 別寒辺牛湿原に生息するエゾアカガエル幼生の生育環境. 環境教育研究 1(1): 171-174.