笠取山 (かさとりやま)

(1,953m、埼玉・山梨)


「小さな分水嶺」を過ぎ水神社との分岐手前から見た笠取山


2006年12月23日(土)

作場平橋〜ヤブ沢峠〜笠取山〜水神社〜一休坂〜作場平橋

〔車、日帰り〕
自宅600−相模湖IC−勝沼IC−825作場平駐車場834〜853一休坂分岐〜(ヤブ沢)〜944ヤブ沢峠〜1005笠取小屋1015〜1102笠取山1130〜水神社(水干)〜1240笠取小屋〜(一休坂)〜1340作場駐車場

 例年は11月下旬に行われる丹沢・大山清掃登山が終わると、クマみたいに冬眠してしまうが、今年は絶対に冬眠しないことにした。
 それもこれも全ては来年のためである。来年は日本二百名山の中でも最も難関と言われている笈(おいずる)ケ岳やカムエク、ペテガリなどを計画しているため、冬眠などしていられない。

 そこで、「さて、どこへ行こうか」と思いめぐらした時、笠取山が浮かんで来た。笠取山は和名倉山へ行った時に唐松尾山の隣に見えたような気がするが、確信はない。とにかく私は地元の山とも云える丹沢や奥多摩、奥秩父の山には疎いのである。こんな機会に少しでも近郊の山を登ってみようと思った。

 朝6時に家を出た。朝起きた時は北斗七星が輝いていた。今日は冬晴れの絶好の登山日和である。
 相模湖ICから中央道に乗り、勝沼ICで降りた。塩山からR411(大菩薩ライン)で一ノ瀬へ向かって行く。

 登山口の「作場平」は、新犬切峠から行くと近いようだが、入り口を通り過ぎてしまい一ノ瀬林道から周って行った。一ノ瀬林道は和名倉山へ行った時に通っているので安心感があった。

 作場平の駐車場には、2、30台も置けそうなところにポツンと1台だけ止めてあった。この季節は登る人も少ないようだ。(左の車は私のです)

 私がザックを背負って「作場平橋」を渡ろうとした時、登山者が一人下って来た。忘れ物をしたので戻って来たという。

 広いなだらかな道を登って行った。しばらくして私も車のキーロックを忘れたことに気がついた。しかし、もう戻る気はない。どうせ盗まれるものはないから、車さえ盗まれなければいい。

 ホッペタが冷たい。やはりこの時期は目出帽があった方がいいのかも知れない。
 一休坂との分岐で一服していると、忘れ物を取に戻ったオジさんが、追い付いて来た。コースについて聞いてみると「どちらも同じようなもの」だという。
 私は早く稜線へ立ちたいので、真っ直ぐ「ヤブ沢」を登って行くことにした。オジさんは一休坂を登るという。お互いに「上で会いましょう」と言って分かれる。

 歩き出してすぐに十字路があった。「山と高原地図」には載っていないが標識には左が巡視道、右が一休坂と書いてあった。(写真右は案内板、拡大できます)

 登山道の近くには鳥の巣箱が沢山掛けてあった。きっと地元の子供達が学校の授業で作って掛けたのだろうと思った。

 背後から陽が差して来た。今日は風もなく最高の陽気である。

 ヤブ沢は一跨ぎで渡れそうな小さな沢だが、丸太橋が何箇所もあった。よく整備された道で歩き安いが、なにか物足りない気がしないでもない。
 峠近くなって、しっとりと汗をかいた。セーターを脱いだ。

 ヤブ沢峠へ9時44分着。峠の標識には「東京都水道局」と書いてあった。近くには何日か前に降った雪が所々に残っていた。

 ここは樹木が多く展望がないので、笠取小屋へ向かって歩いて行く。峠からは稜線歩きが出来るかと思っていたが、車が通るほど広い林道歩きでガッカリした。

 笠取小屋は閉まっていた。周りが広く、なかなか良い所である。庭先のベンチで、しばし休憩。

 この小屋は地図には自炊のみと書いてあるが、二食付の値段が書いてあるので予約をすれば食事も出来るようだ。

 すぐ南側に冬季小屋があったので覗いてみた。少しくたびれてはいるが避難小屋だと思えば充分だろう。この小屋かテント場で、初夏の一夜を過ごすのもいいかも知れない、と思った。

 小屋からわずかに登ると、窪んだ登山道に雪が積もっていた。わずか1、2cmだが、サクッ、サクッという足音に、ちょっぴり雪山へ来た感触を味わった。
 10分ほど歩くと雁峠との分岐があり、その奥に小さな丘のようなピークがあった。
 寄り道のつもりでそのピークを登って行くと、案内板や石柱、ベンチなどがあった。案内板には、『〜ここへ降った雨が、多摩川、荒川、富士川に分かれる。ここが小さな分水嶺となっている』というようなことが書いてあった。

 新しい発見に感動した。大雨の日にここへたたずんで、三方へ流れる水を見てみたいと思った。

(写真左が案内板に書かれていた図)

 その「小さな分水嶺」を下った所が水干(みずひ)と笠取山の分岐になっていた。迷わず笠取の標識に従って小さなピークを登って行くと、正面に笠取山が見えた(TOPの写真)。ドーンと立ちはだかってはいるが、いかんせんスケールが小さく、迫力という点で物足りないと思った。笠取山はなぜか人気があるようだが、単なる縦走路の1ピークに過ぎないような気がした。

 その笠取山は、少し下ってから一気の登りになった。雪が着いていないので助かったが、ここは雪が着くと下山がいやらしい。

 笠取の山頂へ立つと、忘れ物をとりに戻ったオジさんが、少し離れたところで風を避けながら昼食の準備をしているのが見えた。山頂からは真っ白になった富士山や南アルプスが見えた。


富士山

南アルプスを遠望

甲武信ケ岳らしい?

 山頂でしばし展望を楽しんでいたが、風が冷たく汗ばんだ身体がガタガタ震えて来た。私もオジさんの近くで風を避けながら昼食にした。

 正面に見える山がカッコいい。オジさんに聞いてみると、 「甲武信じゃあないですか」という。あれがコブシか・・・、と頷く。甲武信は国師ケ岳から登ったことがあるが、その時は「何と平凡な山だろう」と思った。「何でこんな山が日本百名山なのか」とさえ思ったが、ここから見ると一際目を惹く。山は見る角度によってこうも違うものかと改めて思い知らされた。

 食事が済んだオジさんが、早々に下って行った。オジさんは「ヤブ沢峠」を周って帰るという。私は水神社へ寄っていきたいので山頂から反対側へ下ることにした。

 ここからは、今までの整備された遊歩道のような道と違い、岩や木の根っこなどの坂道となり、やっと登山道らしくなって来た。しかし、岩や木の根っこの間にへばりついた雪がいやらしかった。

 山頂からわずかに下って少し登り返した所に、笠取山の標識があった。「え、ここが山頂?」いったいどうなってんだろう。山頂が2ケ所ある。心持ちこっちの方が高いような気がした。

 ここからの下りで少々苦戦した。日陰の急坂がツルツルに凍っていたからだ。念のためアイゼンは持って来たが、凍っているのは一部分なのでわざわさ装着するほどでもない。岩や根っこなどに掴まりながらやっと下った。

 縦走路との分岐を右に折れて水神社へ向かって行くと、中年のご夫婦がなだらかな凍った斜面で身動き出来ず、四つんばいになってキャキャ騒いでいた。

 旦那さんから「先に下って下さい」と云われ、さっそうと下り出す。そしてオバさんとすれ違った瞬間、足が滑ってスッテンコロリンと見事にひっくり返ってしまった。痛いやら恥ずかしいやら、全く情けない。

 そこから数10メートルで水神社があった。
(水干の標識と岩の上に水神社の石碑がある→拡大すると見えます)
 案内板には「ここが沢の行き止まりの意味で水干(みずひ)と名付けられた多摩川の始まりです〜」と書いてあった。

 笠取小屋まで戻ると、テント場に4人のパーティーがいた。

 ここからは「一休坂」を下って行った。ここもヤブ沢とほとんど変わらなかった。道はよく整備されて歩き安い。すっかり葉を落としたブナやミズナラの森を下って行った。ここは小さな流れがいたる所にあるため水には困らない。

 途中で小鳥の巣箱を覗いてみた。巣箱は底が蝶ツガイで開くようになっていた。なるほどこうすれば毎年、雛が巣立ったあと清掃するのが簡単な訳だ。我が家にも巣箱が2つ掛けてあり、1つはシジュウカラが巣を作ったがそのままにしてある。帰ったら掃除をしてやろう!

 さらに下って行くと「サワラ」と表示された木があった。南アルプスの基地である「さわら島」はサワラの木が多いことから名付けられたというが、私はまだ見たことがなかった。てっきり落葉樹かと思っていたが、ヒノキに似た針葉樹だった。

(写真左がサワラの木)

 今回は小さな分水嶺や2ケ所あった山頂、小鳥の巣箱、初めて見たサワラの木など小さな発見があった山だった。