脅かされる住民のいのちと健康「危険な廃棄物汚染の実態」
北茨城市議会議員 福田明
現在、北茨城市内には、二つの大規模な廃棄物処理場があり、県内はもちろん、千葉、埼玉などの各県から約百自治体、年間四十万トンのゴミが持ち込まれている。ちなみに、北茨城市内で一年間に排出されているゴミの量は0.4万トンであり、ここに「関東のゴミ捨て場」と呼ばれる所以がある。
処理場周辺の農家の中には、自分で作った米を食べない人もいるほど、地下水や河川の汚染を心配し、将来、我がふるさとはどうなるのかと不安を抱えている人も多い。
一九八九年度、市の公害審議会に提出された資料を見ると、この地域でカドミウムや亜鉛、ヒ素などの重金属が過去の平均値に比べて、二倍から五倍に跳ね上がっている。
この重金属汚染の問題を三月の県議会と市議会で、私と高橋県議(当時日本共産党の県議)が取り上げ大問題となったわけである。
特にカドミウムについては、処理場の排水が流れ込む磯原町大塚の袖振川で1.32ppm。同じく関南町の河川でも0,9ppm。大塚地域の水田でも0.9ppm検出されている。これらの数値を比較するうえで参考になるのは富山県を流れるイタイイタイ病で有名な神通川流域でのカドミウムの測定値である。イタイイタイ病の発生後、神通川流域を国は公害の「対策地域」として指定し、一九七一年から一九七六年まで測定しているが、その最高値は婦中町のぬ1.10ppmで平均は、1.08ppmとなっている。
そうした点を考えると、磯原町の袖振川で測定された1.32ppmというのは、神通川のどの地点よりも高い訳である。そこで私は、土壌調査においては、日本学界の権威であり安中公害の調査を行った本間慎教授(東京農工大)に今回のデータについて意見を求めた。その中で本間教授は「カドミウムが1ppm
を超えれば、汚染の恐れがあると判断し精密な調査が必要である」と言われた。
まさに、市内の処理場周辺の重金属汚染は極めて危険なものなのである。この点を市長にも、厳しく質問したが、「異常はいっさい発生していません」と答弁を繰り返すのみである。この姿勢では、住民のいのちと健康は守れない。
国の公害の歴史を見ると企業や自治体が率直に公害の責任を認めた例はほとんどない。足尾鉱毒事件の田中正造に代表されるように、住民の粘り強い運動があってこそ、初めてその責任と実態が明らかにされる。その意味では、北茨城を第二の水俣やイタイイタイ病にしないためにも、私達の奮闘が切に求められている。
〔1989年4月、党後援会ニュース〕
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