リゾートを住民のための
一昨年の六月に国会で「総合保養地域整備法」(リゾート法)が成立したのを契機にリゾート開発ブームが広がり、全国で計画されているその面積は、十二万平方キロメートル、国土の実に三分の一に達する異様とも思える日本列島あげてのリゾートブームとなっています。
本市においても五浦リゾート開発計画の概要がこのほど発表され市は積極的に推進する構えを見せています。しかし、同計画が本当に地域の活性化や住民の幸せにつながるかといえば、はなはだ疑問を感じざるをえません。
そこで住民のためのリゾートとはどうあるべきかという点であります。リゾートが従来の観光地と違って、中、長期的な保養地ならば、それにふさわしいいくつかの条件が必要です。
一つは、低料金で、誰もが利用できる大衆的な保養地…すなわち質が高いだけではなく「安いサービス」が必要。二は、広く国民が利用できる公共性が確保されていること。三は、自然環境が保全されていること。この三条件が必要だと言われています。
大企業と高額所得者のため?
ところが、五浦リゾート計画は高級ゴルフ場や高級ホテル、貸し別荘、マリーナ(ヨット場)などの施設は庶民には手のでない高嶺の花であり、ごく一部の高額所得者しか滞在して楽しめないのは明らかです。
さらに五浦、長浜地域の面積の大半をゴルフ場にすることになれば五浦の自然環境が破壊され、天心や大観に代表される五浦の歴史的、文化的イメージが失われると危惧されます。
しかも、計画によれば事業総額七百十億円のうち、道路や水道、下水道などの整備は、すべて公共事業として県、市が三百三十億円を投入して行い、ホテルやゴルフ場などの採算部門は大企業が行って利益を吸い上げる典型的な大企業中心の計画となっています。
また、地元との共存共栄がはたしてできるのかという問題ですが、新潟県の苗場という日本最大のスキーリゾート地に西武が進出してから二十年たった今日、既存の旅館では客が減少し廃業に追いやられ多額の借金抱えてリゾートマンション用地への身売りが相次いでいます。
まさに、「西武栄えて地元滅ぶ」という結果になったわけです。
本市の五浦リゾート計画においてもこの点を肝に銘じなければなりません。
このような五浦リゾート計画を見てくると市はバラ色の宣伝とは裏腹に、多くの矛盾を抱えた計画と言わざるを得ません。五浦における開発のあり方は、大企業中心の開発ではなく、これまでの歴史や文化を生かしたなかでの住民本位の計画でなくてはなりません。
なお、先日、岡倉天心の孫にあたる岡倉古志郎(国際政治学者)さんから私のところに「ぜひ五浦リゾート計画を知りたいので資料を送ってほしい」との電話があったので、計画書やわが党の考えを書いて送りました。すると岡倉さんから早速電話があり「ひどい計画の一言につきる。五浦の面影が全くなくなってしまう。私は反対です」と語っていましたが、〃松風と海鳴りが聞こえるところで〃という遺言どおり五浦の地下に眠る天心が、この計画を知ったら、さぞかし憤慨したに違いないでしょう。
(1989年8月、党後援会ニュースより)
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