マグニチュードと震度

このページの内容

地震が発生すると、発生日時、マグニチュード、場所及び深さ、発震機構等、震度などが気象庁より発表されます。

本ページでは、マグニチュードと震度についてまとめました。マグニチュードと震度は地震の基本的な用語であり、報道で最もよく用いられる用語です。

  1. マグニチュード
  2. 震度
  3. 震度階の変遷

マグニチュード

マグニチュードは最初、アメリカの地震学者リヒターが考案した尺度であり、震源から放出される地震波のエネルギーの大きさを間接的に表現する手段として用いました。定義としては、震央(震源の真上の地表)から100kmの位置に設置してあるウッドアンダーソン型地震計の記録の片振幅(振れ幅の半分)をマイクロメートル(1/1000mm)の単位で読みとり、これを対数で表した数値としており、リヒタースケールと言われています。本来、マグニチュードはカリフォルニアに起こる浅い地震を対象としていたため、震源の深度は無視されています。その後の地震の研究によると、地震の性質が多様であり1種類の尺度では地震の規模を正確に表現できないため、便宜的な量として多種類のマグニチュードが考案されています。

日本で普通に用いられているマグニチュードは、気象庁マグニチュードであり、日本周辺で起こる地震を日本で観測したときに最も無理なく表現できるように改良されたものが使用されています。気象庁マグニチュードをMまたはMjで表記されます。理科年表には「マグニチュードの決め方」として、次の7つが記載されています。

  1. 最初の定義(C.F.Richter,1935)
  2. 表面波マグニチュード(B.Gutenberg.1945)
  3. 実体波マグニチュード(B.Gutenberg.1945)
  4. 気象庁マグニチュード(2003年9月25日改訂)
  5. 地震動の継続時間を用いたマグニチュード
  6. 震度を用いたマグニチュード
    地震計がない時代や地震計が設置されていない地方の地震についても震度からマグニチュードが推定できる特徴があります。震度を用いたマグニチュードには、震央距離100kmのところの震度でマグニチュードを表す方法(河角廣、1943)や震度5以上の地域の面積からマグニチュードに換算する方法(村松、1969)があり、古文書の被害記載状況から過去の地震についてもマグニチュードを推定することができます。
  7. モーメントマグニチュード(金森,1977)
    剛性率(断層のずれにくさを示す数値)、震源断層面の面積、平均変位量より求められるので、表面波マグニチュードや実体波マグニチュードのようにある数値以上では頭打ちになる現象は生じません。モーメントマグニチュードは本来断層運動から算出される量ですが、長周期地震動とモーメントマグニチュードが理論的に比例することが確かめられているので、長周期地震動を用いて決められます。



マグニチュードMの大きさによって、Mが7以上を「大地震」、5以上7未満を「中地震」、3以上5未満を「小地震」、1以上3未満を「微小地震」、1未満を「極微小地震」に分類されています。M7.8程度以上を「巨大地震」と呼ぶこともあります。

震度

表マーク 表1 気象庁震度階級(1996)
(理科年表 文部科学省 国立天文台編 2002)
震度階級 計測震度
 震度0 0.5未満
 震度1 0.5以上 1.5未満
 震度2 1.5以上 2.5未満
 震度3 2.5以上 3.5未満
 震度4 3.5以上 4.5未満
 震度5弱 4.5以上 5.0未満
 震度5強 5.0以上 5.5未満
 震度6弱 5.5以上 6.0未満
 震度6強 6.0以上 6.5未満
 震度7 6.5以上

震度は、ある地点での地震の揺れの程度を表します。ある地点の揺れは、地震のエネルギー規模(マグニチュード)だけでなく、震源からその地点までの距離、震源の深さ、伝播経路、その地点周辺の地盤条件等に左右されます。

従来、震度は気象庁が地震の体感や被害状況あるいは地変の程度から決めていました。平成7年の兵庫県南部地震でも当初最大の震度が6と発表され、被害状況を調査することによって一部の地域が震度7に認定されました。震度の最大階級が7であるのに、当初震度6と報道されたことは、被害の程度が少なくイメージされ、救援の初動が遅れた原因ともなったのではないかとの批判がでました。気象庁はこのような状況を改めるため、表1に示すように、従来の震度階級の5と6を弱と強に細分して10階級とし、これらの震度を計測震度より求めるように改正されました。計測震度は、全国各地に展開されている約600点の震度観測点の計測震度計を用い、計測震度計の記録から自動的に計測震度に変換することによって得られます。また、従来の震度階級表にあった「障子が鳴動する」などの表現や微震、軽震、弱震、強震などの名称は廃止され、新しく「気象庁震度階級関連解説表」が作成されました。

表2の気象庁震度階級関連解説表には、震度と身の回りの状況との関係が示されていますが、震度は計測震度によって決定されるものであり、この表に記述されている現象から決定されるものではありません。

新しい震度階級は平成8年(1996)10月から運用されていますので、今後、6.5以上の計測震度が観測され、その結果が送信るならば、地震直後のテレビの画面に震度7が表示されるようになります。

震度7についてはこちら

【参考】震度は気象庁震度階の震度が一般に通用していますが、耐震設計では別の意味の震度が設計震度という言葉で使われています。

表マーク表 2 気象庁震度階級関連解説表(1996) (理科年表 文部科学省 国立天文台編 2002)
震度階級 人間 屋内の状況 屋外の状況 木造建物

鉄筋
コンクリート
造建物

ライフライン 地盤・斜面
人は揺れを感じない。              
屋内にいる人の一部が、わずかな揺れを感じる。
屋内にいる人の多くが、揺れを感じる。眠っている人の一部が、目を覚ます。 電灯などのつり下げ物が、わずかに揺れる。
屋内にいる人のほとんどが、揺れを感じる。恐怖感を覚える人もいる。 棚にある食器類が、音を立てることがある。 電線が少し揺れる。
かなりの恐怖感があり、一部の人は、身の安全を図ろうとする。眠っている人のほとんどが、目を覚ます。 つり下げ物は大きく揺れ、棚にある食器類は音を立てる。座りの悪い置物が、倒れることがある。 電線が大きく揺れる。歩いている人も揺れを感じる。自動車を運転していて、揺れに気付く人がいる。
5弱 多くの人が、身の安全を図ろうとする。一部の人は、行動に支障を感じる。 つり下げ物は激しく揺れ、棚にある食器類、書棚の本が落ちることがある。座りの悪い置物の多くが倒れ、家具が移動することがある。 窓ガラスが割れて落ちることがある。電柱が揺れるのがわかる。補強されていないブロック塀が崩れることがある。道路に被害が生じることがある。 耐震性の低い住宅では、壁や柱が破損するものがある。 耐震性の低い建物では、壁などに亀裂が生じるものがある。 安全装置が作動し、ガスが遮断される家庭がある。まれに水道管の被害が発生し、断水することがある。

[停電する家庭もある。]
軟弱な地盤で、亀裂が生じることがある。山地で落石、小さな崩壊が生じることがある。
5強 非常な恐怖を感じる。多くの人が、行動に支障を感じる。 棚にある食器類、書棚の本の多くが落ちる。テレビが台から落ちることがある。タンスなど重い家具が倒れることがある。変形によりドアが開かなくなることがある。一部の戸が外れる。 補強されていないブロック塀の多くが崩れる。据え付けが不十分な自動販売機が倒れることがある。多くの墓石が倒れる。自動車の運転が困難となり、停止する車が多い。 耐震性の低い住宅では、壁や柱がかなり破損したり、傾くものがある。 耐震性の低い建物では、壁、梁(はり)、柱などに大きな亀裂が生じるものがある。耐震性の高い建物でも、壁などに亀裂が生じるものがある。 家庭などにガスを供給するための導管、主要な水道管に被害が発生することがある。

[一部の地域でガス、水道の供給が停止することがある。]
6弱 立っていることが困難になる。 固定していない重い家具の多くが移動、転倒する。 開かなくなるドアが多い。 かなりの建物で、壁のタイルや窓ガラスが破損、落下する。 耐震性の低い住宅では、倒壊するものがある。耐震性の高い住宅でも、壁や柱が破損するものがある。 耐震性の低い建物では、壁や柱が破壊するものがある。耐震性の高い建物でも壁、梁(はり)、柱などに大きな亀裂が生じるものがある。 家庭などにガスを供給するための導管、主要な水道管に被害が発生する。

[一部の地域でガス、水道の供給が停止し、停電することもある。]
地割れや山崩れなどが発生することがある。
6強 立っていることができず、はわないと動くことができない。 固定していない重い家具のほとんどが移動、転倒する。戸が外れて飛ぶことがある。 多くの建物で、壁のタイルや窓ガラスが破損、落下する。補強されていないブロック塀のほとんどが崩れる。 耐震性の低い住宅では、倒壊するものが多い。耐震性の高い住宅でも、壁や柱がかなり破損するものがある。 耐震性の低い建物では、倒壊するものがある。耐震性の高い建物でも、壁、柱が破壊するものがかなりある。 ガスを地域に送るための導管、水道の配水施設に被害が発生することがある。

[一部の地域で停電する。広い地域でガス、水道の供給が停止することがある。]
揺れにほんろうされ、自分の意志で行動できない ほとんどの家具が大きく移動し、飛ぶものもある。 ほとんどの建物で、壁のタイルや窓ガラスが破損、落下する。補強されているブロック塀も破損するものがある。 耐震性の高い住宅でも、傾いたり、大きく破壊するものがある。 耐震性の高い建物でも、傾いたり、大きく破壊するものがある。 [広い地域で電気、ガス、水道の供給が停止する。] 大きな地割れ、地すべりや山崩れが発生し、地形が変わることもある。

*ライフラインの[]内の事項は、電気、ガス、水道の供給状況を参考として記載したものである。

震度階の変遷

表マーク 表3 気象庁震度階の変遷
1880年頃
最初の震度階
4階級
中央気象台震度階
(関谷震度階)
7階級
1948年の福井地震を契機とし、
翌年から適用
8階級
1995年の兵庫県南部地震を契機として、
翌年10月から適用
(計測震度使用)
10 階級
----- 0無感覚 0無感 震度0
微震 Ⅰ微震 Ⅰ微震 震度1
弱震 Ⅱ弱震(弱き方) Ⅱ軽震 震度2
Ⅲ弱震 Ⅲ弱震 震度3
強震 Ⅳ強震(弱き方) Ⅳ中震 震度4
Ⅴ強震 Ⅴ強震 震度5弱
震度5強
烈震 Ⅵ烈震 Ⅵ烈震 震度6弱
震度6強
Ⅶ激震 震度7

表3に気象庁震度階の変遷を示します。

藤井陽一郎著「日本の地震学」(1967)によると、気象庁の震度階の基礎になったのは、「微、弱、強、烈」の4段階の震度階で、明治十三年(1880年)には既に工夫されていたらしいと述べられています。

石本巳四雄「地震とその研究」(1935)には関谷震度階として表3の2列目に示す7階級の震度階が記載されています。