地震・防災関連用語集
カテゴリ:基本用語
テフラは空中を介して移動した火山砕屑物の総称であり、熔岩に対して用いられます。熔岩は溶岩流として火山体の斜面を流下したり、貫入岩として火山体周辺に貫入するのでその分布は狭い範囲に限られます。これに対し、特に粒径の小さいテフラは風によって遠くまで運搬され、噴火当時の地表面を被い、堆積環境の水中などでは薄層として地層間に取り込まれます。
テフラはその形成期間が地形や地層の形成期間と比べて極めて短く、その分布範囲が広いという特徴があり、鍵層として地形面や地層の対比に利用されています。また、テフラに含まれているジルコンや黒曜石を用いてフィッショントラック法という年代測定法でテフラの噴出年代が求められています。テフラの堆積状況を解読して地史を編んでいくことをテフロクロノロジーといいます。
関東ローム層は更新世中期~後期に堆積したテフラが幾重にも堆積したものであり、南関東では上位から立川ローム層・武蔵野ローム層・下末吉ローム層・多摩ローム層の4層に分けられています。立川面・武蔵野面・下末吉面・多摩面と呼ばれる形成時代の異なる地形面の分布や高度はテフラの層序区分を相互に対比することによって明らかになりました。地形面の分布状況は地形面が形成された時代の海水面と大きな関係があり、地形は汎世界的な海水変動と地殻変動とが関連して形成・発達してきたものと認識されています。また、立川ローム層の中に多量の火山ガラスの混じった白色火山灰層が含まれているのが知られていましたが、これが南九州から飛来したテフラ(姶良Tn火山灰層(AT))であり、東北地方の北部より北を除いた本州・四国・九州の全域を被っていることが分かりました。このような広域を被うテフラは広域的な地史の解明に役立っています。仙台平野を中心とした貞観地震(869年)の津波堆積物の同定には915年に降下堆積した十和田aというテフラが使用されているのがその例です。