地震・防災関連用語集

カテゴリ:地質年代と地層

放射年代

放射性元素は放射線を放出して一定の速度で少しずつ別の元素に変化します。この現象を放射壊変といい、元素の放射壊変を利用して求められる年代を放射年代といいます。
炭素は質量数12の12Cのほかに質量数14の14Cの同位体があります。14Cは放射性同位体で12Cに壊変します。
14Cは光合成によって植物に、あるいは食物連鎖によって動物の骨や殻などとして取り込まれますが、取り込まれている間は生物の体内と外界との間で出入りがあるので14Cと12Cの比は一定に保たれています。死滅すると生物の体内への炭素の取り込みが停止し、遺体中の14C が一定速度で減少します。この原理を利用して遺物の14Cと12Cの比から年代を測定する方法を炭素14法といいます。
 14Cの半減期は約5.700年と放射性元素のなかでは短いことから遺跡など比較的新しい時代を対象とした時代測定に用いられています。地質の分野ではサンゴや貝化石を用いた海水準変動や火山活動に伴う熱で炭化した木片を用いて火山活動の年代測定に使用されています。
 なお、地球上のC14の生成量は時代によって微秒に変化しているため、国際基準により補正されています。
 適用可能な放射年代は同位体元素の半減期の数倍程度であるため、下の表に示すように対象物の年代範囲によって測定方法が選択されています。

    年代測定法のいろいろ(地質ニュース 私の20億年 -上麻生礫岩の礫- 2000より 記載順序変更)
 方法  同位体  半減期  試料  年代範囲
  14C法
(炭素14法)
 14C   5730年  木片、泥炭、貝殻、骨   5万年より新しい年代範囲
 K-Ar法
(カリウム-アルゴン法)
 40K→40Ar  1.25×109
(12億5000万年)
 雲母、角閃石、火山岩、変成岩など広範  10万年程度よりも古い年代範囲
 Pb-Sr法
(ルビジウム-ストロンチウム法)
 87Rb→87Sr  4.88×1010  雲母、カリ長石、深成岩、変成岩など広範  1000万年程度よりも古い年代範囲
 U,Th-Pb法
(ウラン、トリウム-鉛法)
 238U→206Pb
235U→207Pb
232Th→208Pb
 4.47×109
7.04×108
1.40×1010
 ジルコン、モナズ石、チタン石、閃ウラン鉱  1億年程度よりも古い年代範囲

同一岩体中の異なった鉱物、異なった測定手法からは異なった年代が得られることが普通であり、ある同位体の系がどの段階で閉じたかと関係しています。系が閉じたときに同位体が時計として動き出すことから、この不一致年代を利用して貫入・固結・冷却いった岩体の形成過程を調べることが行われています。
放射年代を解釈するにあたっては測定方法が前提条件を満足しているか、二次的な熱の影響を受けていないか、周辺環境に汚染されていないかなどの検討が必要であり、貫入・固結・冷却という地質的できごとを時間経過の中で理解することが必要だとされています。