地震・防災関連用語集

カテゴリ:地質構造

断層

断層は、対象とされる分野によって使われ方が異なりますが、一般には「断層は地盤中のある面を境にしてその両側で変位が認められる割れ目もしくは割れ目ゾーンである」と定義されます。

土木工学の分野(ダム、トンネル)では、実態としての断層が重要であり、周辺の岩盤とは異なる連続した箇所を岩盤分離面または地質不連続面と呼び、これに伴われる軟弱な層全体を断層と総称しています。断層は成因的な意味を有する概念ですが、この場合は単に状態を表すものも含まれます。また、断層と区別して、破砕帯、シームといった状態を表す表現が用いられることもあります。

断層は幾何学的な分類によると、すべりの方向(走向すべり断層、傾斜すべり断層、斜めすべり断層)、断層のパターン(平行断層、雁行断層、環状断層、放射状断層)、傾斜角度(高角度断層、低角度断層)、見かけ運動様式(正断層、逆断層、走向移動断層、ちょうつがい断層)に分類されます。また、成因的には構造応力によるもの(スラスト断層、走向すべり断層)と重力によるもの(地すべりのすべり面)に分類されます。その他、地震と関連して、地質学的に最近活動し、今後も活動する可能性のある断層を活断層と呼んでいます。

断層周辺は岩盤が連続して角礫状に破砕を受けていたり、粘土化していることがあり、それぞれ角礫帯、細粒粘土化帯と呼ばれて、力学的にも劣っています。細粒粘土化帯は一般に軟質で透水性が小さいことから遮水ゾーンとなることがあり、角礫帯には多量の地下水を保水していることがあるので時としてダムやトンネルなどの障害となります。

トンネル掘削に際して、細粒粘土化帯を突破した瞬間に高水圧の突発湧水に見舞われたり、角礫帯に含まれている多量の地下水が土砂と共にトンネル内に流入するなどがその例であり、トンネル掘削面の自立性の低下や地山の崩壊を招く原因となります。

一方、断層が役に立っている例に温泉があります。温泉は熱源と地下水の両方が必要です。地下深く井戸を掘ると温度は上昇しますが地下水があるとは限りません。地下深部に地下水を蓄える亀裂の多い岩盤(断層破砕帯)が存在することが良好な温泉の条件となります。