地震・防災関連用語集

カテゴリ:地質構造

中央構造線

日本列島を大規模な地質構造で区分すると、糸魚川-静岡構造線で東北日本と西南日本に分けられますが、西南日本を内帯(北側/日本海側)と外帯(南側/太平洋側)に分けるのが中央構造線です。中央構造線は長野県の赤石山脈北西側から紀伊半島・四国を経て九州に至る延長1,000kmの大断層です。多くの場合、花崗岩や低温型の変成岩からなる北側の領家変成帯と高温低圧型の変成岩や超塩基性岩からなる南側の三波川変成帯との境界となっています。

中央構造性の形成時期は中生代ジュラ紀末とされ、プレートテクトニクスによる仮説によれば、日本列島が形成される前に生じた大規模な横ずれ断層の跡ではないかと考えられています。

ジュラ紀末に、黒瀬川帯*1を構成する大陸地塊やそれに付随した堆積層(南部北上もおそらくその一部)が衝突してきた。この衝突は、付加体中に大衝上運動*2を引き起こし西南日本のナップ群*3が形成され、三波川帯の大構造(いわゆる大洲-長浜時階のナップ群の形成)もこのとき作られた。

衝突後、プレート運動は、横ずれに変化し、黒瀬川地塊を含むジュラ紀付加体(外帯)は、おそらく、側方の付加体(内帯)の前面へ移動していったと思われる。すなわち、中央構造線の形成である。(資料1 P.375より)

上記の説によれば、内帯と外帯は同じような位置で付加体として順次形成されたのではなく、中生代ジュラ紀の末から白亜紀にかけて、アジアの東縁で横ずれ運動がおこり、南方で形成された付加体(外帯)がプレートに乗って北上し、北方に位置していた付加体(外帯)と合体して日本列島の土台となったということであり、大断層である合体の境界が中央構造線に相当します。

中央構造線は古い横ずれ断層の跡であり、現在はプレート間の横ずれ断層としては活動していませんが、日本内陸の最長の活断層として活動しています。地震調査研究推進本部によると、中央構造線に沿った活断層を中央構造線断層帯*4として6つの区間に区分しています。これらの区間は1つの断層帯として同時に活動する可能性もあり、その場合はマグニチュード8.0程度もしくはそれ以上の地震が発生するとされています。

愛媛県西宇和郡伊方町に位置する伊方原発の沖合に中央構造線断層帯が通過しています。南海トラフで発生する海溝型の地震にまして中央構造線断層帯(活断層)で発生する地震の影響が懸念されています。

参考資料など

資料1 小澤智生・平朝彦・小林文夫 西南日本の帯状地質構造はどのようにしてできたか 日本列島の形成 平朝彦・中村一明編 岩波書店 1986

黒瀬川帯*1 九州の八代付近から九州・四国・紀伊半島を横断して三重県の鳥羽周辺に至る区間には小岩体として、周辺とは異質な地層が点々として連なっています。この地層の連なりを黒瀬川帯と呼んでいます。

大衝上運動*2 上盤側が下盤側の岩層のし上げた大規模な断層運動。

ナップ群*3 低角度の衝上断層や水平に近い褶曲軸を持つ横臥褶曲によって別の岩体にせりあがり重なった地質体群。

中央構造線断層帯*4 中央構造線断層帯(金剛山地東縁-伊予灘)の長期評価(一部改訂)について 地震調査研究推進本部 地震調査委員会 平成23年2月