地震・防災関連用語集

カテゴリ:地震

津波地震

・・・・・ 三陸沿岸に微弱な地震を感じた。震度はたかだかⅡ~Ⅲ程度であったらしい。しかし、宮古では緩慢ながらも5分も続いたという。これは、遠方に起きた大地震の兆しであったが、住民は気にもしなかった。住民は2年前の明治27年3月22日の同じ夕方7時23分ころの根室沖地震のときは、もっと激しくゆれたことを思い出していた。そのときは、宮古・大船渡などに小津波があったにすぎなかった。しかし、今回は違っていた。地震後、30分で沿岸各地に津波が来襲した。一瞬にして三陸沿岸は地獄と化したのである。 ・・・・・(宇佐美龍夫著「歴史地震」より)

上記の文章は1896年(明治29年)の明治三陸沖地震津波(死者約2万6千人でマグニチュードは8 1/4)についての記述です。地震動による被害はなく、被害は津波によって発生しました。このように、地震の規模から予想される以上の大きな津波が発生することがあり、このような地震を津波地震と呼びます。

地震は断層面の破壊現象ですが、海域での浅い地震の場合は隆起や沈降といった海底の地殻変動によって津波が発生します。津波を発生させるような地殻変動が起こる領域を津波波源域といいます。

津波地震は通常の地震よりもゆっくりとした破壊速度*が原因となって大きな津波を発生させると考えられていますが、典型的な津波地震は破壊速度だけでは説明が十分でないとされ、海溝陸側斜面の未固結堆積物が地震による隆起量よりも余分に隆起するためであるとも言われています。また、震源域の位置が関係するといわれ、海溝寄りを震源域に含む場合は津波が大きくなるとされています。

* 断層面の破壊の進行速度はいろいろであり、人には震動として感じられないような破壊速度の遅い地震をスロー地震とかサイレント地震あるいはゆっくり地震と呼ばれます。これらの用語はその破壊速度にあわせて使い分けが行われていますが、英語と日本語の対応関係などから専門家の間でも用語として曖昧さを含んでいるようです。