地震・防災関連用語集
カテゴリ:災害
東京都台東区浅草寺の被災イチョウ
歩道右側のサンゴジュ(珊瑚樹)の植え込み
珊瑚樹の果実
珊瑚樹という名は赤い果実に由来する
神社などには多くの樹木がありますが、イチョウなどのように火災から建築物を守るために植樹されたものがあります。これらの樹木は火伏の木とも呼ばれています。
関東大震災の火災調査を実施した中村清二*は樹木の効力として次のように述べ、実際に樹木によって延焼が阻止された箇所を拾い出しています。
「樹木ハ種類ニヨッテ防火ノ程度ガ違ウ。松、杉ノ如キハ反対ニ火勢を助長スル有害ノモノデアッテ山火事デモ杉林ノ火ハ中々ニ鎮ラヌ。樹木デ有効ナノハ従来ノ経験デ樫(カシ)、椎(シイ)、珊瑚(サンゴ)樹などが最良で公孫樹(イチョウ)、梧桐(アオキリ)等ガコレニ次グ。ソシテ「プラタナス」モ今度ノ火事デ良イコトガ判ッタガ、コレラノ落葉樹ハ葉ガナイ時ハ効能ガナイ。公孫樹モ寺院等ニコノ目的デ植エラレテイルガソノ葉ガ青イ時ハ良イガ黄変スルト余リ効能ガ無イト伝エラレテイル。」(漢字をカタカナにするなど一部を編集)
植物は火によるダメージを受けても枯れ死することなく生存する場合が多く、東京では関東大震災や戦災で被災したイチョウなどが現在も生存しています。右上の浅草寺のイチョウがその例です。
水分の多い樹木としてはイチョウ、ムクゲ、サンゴジュ、アオキ、モクレン、キリなどがあり、含油率の少ない樹木としてはアオキ、イヌマキ、サンゴジュなどがあります。これらの樹木は防火能力の大きな樹種と知られている樹種に一致しており、水分の多さと油の少なさが着火を遅らせたり防止したりしています。
樹葉などの含水率が20%以下になると樹種に関係なく着火の危険性が高くなることや樹葉の形状・蒸散の持続力のほか、生育状況・樹齢・季節・昼夜などの要因によって防火能力が変化することが実験によって確かめられています。
防災公園や延焼遮断帯あるいは避難路ではその機能を高めるために防火能力の大きな樹種を植栽する取り組みが行われています。
* 中村清二 「大地震ニヨル東京火災調査報告」 震災予防調査会報告、第100号戊 1925