地震・防災関連用語集

カテゴリ:都市機能

防波堤

防波堤

防波堤の開口部から出港する漁船

(千葉県館山市船形)

港湾を波浪から守るための構造物を防波堤といいます。波が静かなことが港湾の1つの条件であり、古くは半島の付け根や島影などが港として選ばれていました。

沖から港に船が帰ってくる場合、通常は防波堤上の灯台を目印にして防波堤の開口部から入港します。沖側から見て防波堤の端に白い灯台があればそこが港への出入口の左端(赤い灯台ならば右端)に当たることを示しています。防波堤は港外と港内との境界であり、防波堤上の灯台は港のシンボルともなっています。

【釜石港湾口防波堤】

釜石湾口防波堤は中央開口部300mを大型船舶の航路とし、その両側に990mの北堤と670mの南堤をハの字型に配置し、両端部に50mの小型船舶用航路を設けた防波堤で、津波災害から港や市街を守り安全な物流拠点を構築することを目的として平成20年に完成*1しました。また、平成22年には最も水深の大きな防波堤としてギネス世界記録に認定*2されました。
防波堤の構造は海底から基礎石(捨石)をその断面が台形となるような形状に積み上げ、その上にケーソンを設置した混成堤と呼ばれるタイプです。混成堤は水深の大きな場所や比較的軟弱な地盤上にも築堤可能ですが、基礎石とケーソンとの境界に洗掘が生じやすいとされています。
釜石湾口防波堤は最新の技術で完成した誇りとなるような構造物でしたが、東北地方太平洋沖地震の津波でケーソンに大きな水圧が作用するとともに洗掘によってケーソンが大きく変位し、多くのケーソンが水没しました。この防波堤があったことにより津波高13.7mから8.0mに低減し、津波到達時間を6分遅延させたとされる計算結果*3が国土交通省によって示されました。

参考資料

*1 釜石市役所 http://www.city.kamaishi.iwate.jp/index.cfm/7,316,38,229,html

*2 釜石市役所 http://www.city.kamaishi.iwate.jp/index.cfm/7,13903,38,229,html

*3 国土交通省 報道発表資料 釜石港における津波による被災過程を検証 平成23年4月1日(http://www.mlit.go.jp/report/press/port05_hh_000019.html)

※ケーソン コンクリート製または鋼製の大形の箱で、防波堤の他に橋梁の基礎あるいは海底トンネルなど水中や地下構造物として用いられる。釜石湾口防波堤はコンクリートケーソンを基礎石の上に並べて築造された防波堤である。