地震・防災関連用語集
カテゴリ:試験・測定・観測
地層や堆積岩中に含まれる花粉や胞子の化石を取り出し、顕微鏡下で植物を同定する分析法を花粉分析といいます。
花粉類はいかにもか弱そうですが、花粉の外皮膜は強靭で地圧や地熱に抵抗して硬い堆積岩石中にもよく保存されており、胞子化石は先カンブリア時代の地層からも発見されています。花粉化石は中生代以降の地層に多く、新生代第四紀の新しい地層には草本類が多くなります。
花粉分析の前処理として可溶物質を溶かして花粉や胞子を取り出します。この際、試料の種類に応じてカ性カリ、酢酸、硝酸、塩素酸カリ、フッ化水素などを使い分けて作用させます。
花粉分析の結果は花粉群の地域変化や堆積時期の異なる地層間での花粉群の変化などを花粉分析図として表示し、森林の歴史、古気候、古植生の解明に役立てています。
例を挙げると、ミケーネ、メソポタミアやイースターのようないくつかの古代文明の衰退や滅亡の原因は文明自身が自然環境を変化させたことにあることが花粉分析から推定されています。各時代ごとの地層の花粉分析を行うと古くは雑多な自然の植生であったものが栽培植物だけの植生へと移行しており、栽培植物だけに偏るような植生が地力を弱らせ耕土の流出を促進させて作物の実りの少ない農地あるいは不毛の地へと変わったことを示していると考えられています。
また、青森県の三内丸山遺跡は木製の漆器が出土したことで有名な縄文時代の遺跡ですが、花粉分析によってブナ林から栗林に移っていったことがわかりました。自然界ではあり得ないような同一種の栗の花粉が大量に含まれていたことから、食料として栽培されていたと推定されています。
現在、花粉といえば花粉症であり、杉やヒノキの大量の飛散花粉が原因になっています。大量に花粉が飛ぶと山火事と間違うほどの状況を呈し、時には山火事との通報に消防車も出動するほどです。