「タクテクス」中の記事の引用

(レイアウト、彩色及び明らかな誤植の修正以外は原文のまま)


「異界のクリスタル」より

輝くトラペゾヘドロン

Shining Trapezohedron  トラペゾヘドロンは4インチくらいの大きさで、不規則な多面体をしています。黒い色で、血管のような赤い石理が走っています。非対称形の箱におさめられており、箱の中で、箱の内側から伸びている7本の腕のような物に支えられて宙づりの状態になっています。箱は黄色い金属でできていて、ちょうつがい止めになった蓋がついています。また、箱には小さい浮き彫り模様で怪物の姿のようなものが描かれています。クリスタルは内部からの光によって闇の中で輝きます。

 このクリスタルの原産地は、遠い昔のユゴス星です。この地球上では、太古の非人類による文明であるアンタクティカ文明とバリューシア文明時代にこのクリスタルの存在が知られていました。また、レムリア人、アトランティス人、及び古代ギリシャ人にもその存在は知られていました。

 トラペゾヘドロンがこの地球と関係をもつのは、〈闇に棲むもの〉ニャルラトテップのためです。クリスタルが暗闇の中にありさえすれば(箱の蓋が閉まっていれば中は真っ暗闇です)ニャルラトテップはその近くの同じような暗闇の中で、実体化することができます。しかしながら、ニャルラトテップはトラペゾヘドロンを通じて人間と接触しない限り、光に耐えるだけの力を集めることができず、ニャルラトテップ、あるいはクリスタルのどちらかが光にさらされると、彼は退散させられてしまいます。

 クリスタルをのぞき込む人間は、CON×5%のロールに成功しなければなりません。ロールに失敗した者は、うまく目をそむけることに失敗したということですから、幻想的な都市や、巨大な山脈や、宇宙の深い裂け目などの映像を見ることになってしまいます。これを見た者はSANを1D6ポイント失います。そして、クリスタルの向こう側から何か邪悪なものが自分を見ているような感じにおそわれます。それから映像は突然消えてしまいます。これがこの地球の世界とニャルラトテップとの接触なのです。しかし、這い寄る混沌は光が存在すると実体化することができないし、トラペゾヘドロンが闇の中に置かれていない時には実体化することができません。(中略)人間の接触者がいれば、トラペゾヘドロンを闇の中から持ち出してもニャルラトテップに影響を与えることはありません。ニャルラトテップが実体となるときにとる形は、あやふやな輪郭をして、赤い1つ目をもった怪物です。その目は裂け目によって3つの部分に分かれています。大きな翼をもっていて、それを羽ばたかせることによってものすごいスピードで空を飛ぶことができます。しかし、力を集めて十分強くなるまで(このことに関しては下記を見てください。)、彼は闇の中に留まっていなければなりません。光があると、彼は退散しなければならなくなり、犠牲者およびこの地球との接触は断たれてしまいます。ニャルラトテップは最初はわずかな光にも耐えられませんが、時を経るに従って耐え得る光の強さはだんだん強くなります。

 ニャルラトテップは力をたくわえるために、トラペゾヘドロンをのぞき込む者と精神的な接触を保とうとします。クリスタルを見た日から、犠牲者は毎晩恐ろしい悪夢を見るようになります。たいていニャルラトテップが実体化する場所の夢であり、闇の中で何かがうごめいているという夢です。このような夢を見る者は、1週間に1度ずつSANロールに成功しなければなりません。失敗すればSANを1D6ポイント失い、その上にPOWを永久的に1ポイント失います。犠牲者のPOWがゼロに達したら、ニャルラトテップは光に耐えられるようになります。そうするとニャルラトテップは隠れている場所から出てきて、まっすぐ犠牲者の所へやって来ます。もう抵抗する力もなくなっている犠牲者の肉体を乗っ取るためです(注:犠牲者のPOWがゼロになる前に、ニャルラトテップが犠牲者の所へ来ることができた場合には、やはり肉体を乗っ取ろうとするでしょう。ただし、その場合にはニャルラトテップは抵抗表でPOW対POWのロールに成功しなければ相手の肉体を分取ることはできません)。

 新しい肉体を所有したニャルラトテップは、その肉体を使って世界を破壊しようとします(たとえば、核兵器の開発を助けたりします)。ニャルラトテップの化身は、姿は人間でも、ニャルラトテップのINTとPOWを持っています。ただし、APP、STR、CON、DEX、SIZは人間のものです。ニャルラトテップの化身が、肉体の以前の持ち主である人間と外見上で違っているのは、肌がひどく日焼けしているということです(実は、ニャルラトテップの化身の肌は闇の中で光るのです。ただし、彼は自分の招待を暴露するようなそんなチャンスは作らないようにするでしょう)。

……

トラペゾヘドロンが存在する限りニャルラトテップが完全にいなくなってしまうことはありません。だから、このクリスタルを四、六時中光の中にさらしておくか、あるいは破壊してしまわなければなりません。破壊するためには、重機のようなものを使って押しつぶすか、あるいは高温で焼いてしまうのがいいでしょう。溶鉱炉あるいは火山の溶岩のような高温でなければなりません。

……

 犠牲者のPOWがゼロになった夜には、激しい雷鳴がとどろき、嵐になります。嵐や稲妻の交錯する大騒ぎの間に、ニャルラトテップは……まっすぐ犠牲者の所へ行くのです。犠牲者と一緒にいる仲間の探索者は、ニャルラトテップの到着と、肉体の乗っ取りを目撃します。

 肉体を乗っ取って化身となった怪物は、物理的に殺すことも可能ですが、〈忌まわしき狩人〉を召喚して、混乱の中で逃げ出して行くはずです。

 ニャルラトテップが逃げ出すことに成功した場合、彼はその後の2、3週間の間は人々の前から姿を消していますが、やがて大学や科学院などをまわり歩いて、大変進んだ兵器開発技術を講義してまわるようになります。このときにはもう探索者は、旧支配者(グレート・オールド・ワン)と異形の神々が帰ってくることを阻止するという本来の目的に失敗したということなのです。たとえ、化身を探し出して殺したとしても、すでにニャルラトテップは核の技術を紹介して、将来の世界破壊の種をまいてしまった後なのです。


(「プレイヤーのための資料」より:)名前からして各辺がすべて台形をしているに違いないこの素晴らしいクリスタルは、オカルト的な力(フォース)を持っている石だと言われており、正しくない者の手に落ちれば、大変危険なものになり得るものだと言うことです。

……

(「キーパーのための資料」より:) 1843年、考古学者でオカルト学も学んでいたイノック・ボウエン教授という人物が、エジプトのネフレン・カにある“忘れられたファラオ”の墳墓の中で、“輝くトラペゾヘドロン”を発見しました。彼は1844年にプロビデンスに戻ってきて、“星の知恵”という宗派を創始しました。そしてフリー・ウィル教会という古い教会を買い取って、“星の知恵”の総本部としました。この宗派は、〈這い寄る混沌〉ニャルラトテップを召喚するためにこのクリスタルを用いたのでした。彼らはニャルラトテップに血のいけにえを捧げました。

 そのうち“星の知恵”の活動について世間から非難の声があがるようになりました。非難の声が高くなったため、1877年5月、とうとう“星の知恵”は当局の手で解散させられてしまいました。メンバーのほとんどは、すぐにこの土地から立ち去っていきましたが、クリスタルだけは教会の尖塔の中に残されました。しかし尖塔の中には光がもれてさし込んでくるので、ニャルラトテップの姿がすっかり現れてしまうということはありませんでした。

 迷信深い地元の人々は、不吉な噂のある教会に近づこうとはしなかったので、1893年になるまで教会の中に入った者はありませんでした。教会の中に入ってクリスタルを発見したのは、プロビデンス・テレグラム新聞のエドウィン・M・リリブリッジ記者です。彼は教会が悪霊に取りつかれているという迷信の出どころを調査しようとして、教会の中に入ったのでした。しかしリリブリッジはうっかり怪物を召喚してしまったため、怪物に殺されました。しかし、その後教会を調べてみた者がないため、彼の死体は誰にも発見されませんでした。リリブリッジ以来、教会の中に入った者は誰もいません。

……

(プロビデンス・ブレティン誌の事務所あるいはプロビデンス中央図書館において入手可能な情報:)

(フェデラル・ヒル地区にある聖霊教会の記録から入手可能な情報:)

〈図書館〉ロールに成功すれば、その記録の中に「“星の知恵”による“悪魔崇拝”」という小さい項目があることに気がつきます。1853年当時、この教会の神父であったオマリー神父によって書かれたもので、オマリー神父は“彼らは光の力を恐れる悪魔を呼び出すのだ”と述べています。


湖の隣人による追記

以上がシナリオの設定時点での状況です。原神話「闇をさまようもの」においてはこの後、作家ロバート・ブレイクがリリブリッジの死体とトラペゾヘドロンを発見し、数週間後に怪死しています。トラペゾヘドロンはアンブローズ・デクスター医師によってナラガンセット湾の深海に遺棄されました(1935年)。

そしてブロックの「尖塔の影」において、ブレイクの怪死の謎を調査していた作家エドマンド・フィスクが核兵器開発者となっていた“デクスター”と接触し、その対面中に急死します(1950年)。


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「神話的恐怖をあなたに
――“クトゥルフの呼び声”追加異種族データ――」より

永劫の珠 (THE ORB OF EONS)

 この物体はウボ=サスラと直接に結びついており、これを利用する探索者は重大な危機にみまわれます。

 「永劫の珠」は極部がわずかに平らになった乳白色の水晶球で、濁った球の中心部は不規則に明滅していますが、その光の源はわかりません。

 「永劫の珠」を覗きこむ者は、夢を見ているような状態になり、時を遡って過去の生命形態を逆の順序で生きることになりますが、これは夢などではありません。この「旅」から逃れるためには、探索者は自分のPOW値によって「抵抗表」で「永劫の珠」のPOW値(20)に対するロールをしなければなりません。これに失敗した者は、自分の意志とは裏腹に旅を続けなければならないのです。「抵抗表」でのロールは1ラウンドに1回試みられますが、失敗するごとにPOW値を1ポイント永久に失います。

 「永劫の珠」の力から逃れられなかった探索者は暗く霞んだ道をたどって彼方へと旅して、人類以前に地球上を徘徊した異形の存在達の歴史を逆行することになります。そして最後には、人間としての記憶を失った、意識のないアメーバ状の「落し子」としてウボ=サスラの前に現われるのです。そうなった探索者は、まるで存在していなかったかのごとく跡形もなく消え失せます。これが、始源であり終末であるウボ=サスラを追い求めようとした者の運命なのです。


旧き神々(外なる神々)

描写:……(ダーレス「ハスターの帰還」の最後の場面を参照してください)

注意:唯一名前が与えられている「旧き神」は「大いなる深淵の大帝:ノーデンス」だけです。その他の「旧き神々」はノーデンスよりも重要性・力で劣っており、名前も与えられていません。

 「旧き神々(エルダー・ゴッズ)」は、「異形の神々(アザー・ゴッズ)」や「旧支配者(グレート・オールド・ワンズ)」ほど人類に対して敵意を持っていませんが、人類に関与しようとはせず、中立であろうとします。しかし、「旧支配者」に対する戦いに干渉することもたまにあります。「旧き神々」はベテルギウス星の付近に住んでおり、彼等に対する信仰は地球上には存在しません。

 ノーデンスと同じく、「旧き神々」は相手を退去させる試みをすることができますが、相手がPOWロールに成功すれば退去させることができず、そうなれば「旧き神」はたいていその場から退却します。

 「旧き神々」は燃える肢で攻撃することができます。

基本能力値平均値
STR4D20+2062
CON1D100+2070
SIZ1D100+50100
INT4D2042
POW1D10050
DEX3D6+616〜17
耐久力 85
移動 10/20(飛行)
武器命中率ダメージ
75%8D6

装甲:なし。しかし、「旧き神」に触れた物は全て1D8ポイントのダメージを「旧き神」の燃える体から受けます。そのため、銃弾は「旧き神」を傷付ける前に溶け去ってしまい、その他の物理的な武器は命中時にダメージを受けます。
呪文:「旧き神々」は、消費する1マジック・ポイントごとに「旧き印」「ノーデンスとの接触」の呪文が使えます。また、消費する1マジック・ポイントごとに1D6匹の「夜のゴーント」を召喚することができます。その他の召使いも召喚できますが、それらはキーパーが自由に決めてください。
SAN:「旧き神」を見てSANロールに失敗したキャラクターは1D20ポイントのSAN値を失い、成功したキャラクターも1ポイントのSAN値を失います。


ショグラン(小型の奉仕種族)

Shugoran

描写:ショグランはおよそ人間型の外形をしていますが、小さな翼と象のような吻を持っています。皮は黒く、詳しく観察すれば鯰(なまず)の皮のように見えます。

注意:ショグランは東南アジアに住むチョー=チョー人に奉仕あるいは助力するものとして知られています。そこでは、ショグランは「悪鬼(ブギーマン)」の一種として畏敬の念を持たれています。

 ショグランの翼は小さすぎて飛行の役には立ちませんが、泳ぐ時に鰭(ひれ)もしくは水掻きの役を果たしていると思われます。

 ショグランは吻を使って2種類の攻撃をします。まず、吻の吸引力によって15フィート以内の相手を攻撃できます。この「吸引」によって攻撃された者は呼吸不能になり、「窒息」ルールが適用されます。いったん「命中」すれば、ショグランが攻撃をやめるか犠牲者が死ぬまでの毎ラウンド、この「吸引」攻撃は自動的に成功することになります。呼吸不能状態の者は、銃器の使用を除き攻撃することができません。

 もうひとつの攻撃方法は接近戦で使用されます。ショグランは吻の先端を相手の口に貼りつかせ、相手の肺を吸い出そうとするのです。吻が命中した相手は次のラウンドに死亡します。

基本能力値平均値
STR1D6+69〜10
CON2D6+613
SIZ2D6+310
INT3D610〜11
POW3D610〜11
DEX2D6+613
耐久力 11〜12
移動 8/10(泳ぎ)
武器命中率ダメージ
吸引55%窒息が始まる
40%次のラウンドに死亡

装甲:表皮による3ポイント
呪文:なし
SAN:ショグランを見てSANロールに失敗したキャラクターは1D6ポイントのSAN値を失います。

このショグランは、"The Creature Companion"においては「シュゴラン、ニャルラトテップの化身」及び「シュゴランの子供、下級の奉仕種族」として紹介されています。

ヨグ=ソトースの落し子(大型の奉仕種族)

〔『ルーン・クエスト・ベスティアリー』のデータに基づく〕

描写:……(「ダンウィッチの怪」を参照してください)

注意:「ヨグ=ソトースの落し子」は、ヨグ=ソトースと人間の女性が交接した結果生まれたものです。この混血児は上にあるように完全な怪物的形態になることもできますが、ほとんど人間の姿をとることもあります。(いくつかの非人間的な特徴を持ってはいますが、それらは簡単に隠してしまえます)中には姿が眼に見えないものもいます。そのため、個々の『ヨグ=ソトースの落し子』の正確な外見はキーパーが決めてください。

 「ヨグ=ソトースの落し子」はその生涯の最初の十五年ほどを、初めにヨグ=ソトースを召喚した魔術師の庇護の下に過ごします。その期間、「ヨグ=ソトースの落し子」は急速に成長しますが、大量の生肉を必要とします。そして、クトゥルフ神話の知識を集め、それによってヨグ=ソトースにこの世界への永遠なる通路を与える方法を発見しようとするのです。

 「ヨグ=ソトースの落し子」が殺されると、その体は溶けて粘液のプールになります。

 以下に掲げる能力値は生後十五年目の「落し子」のものです。STR値とSIZ値は5歳ごとに2D6ずつ増えます。APP値は人間型の「落し子」のみに適用されます。

 掲げた攻撃方法はかぎ爪によるものです。しかし、「落し子」の攻撃手段は実際にはその肉体的形態によって異なります。触手や口、吸盤、もしくはこれらを併せ持つ「落し子」もいるでしょう。

基本能力値平均値
STR6D621
CON3D610〜11
SIZ6D621
INT4D614
POW2D6+1219
DEX3D610〜11
APP3D610〜11
耐久力 16
移動 6、さらに年齢5歳ごとに1増加
武器命中率ダメージ
かぎ爪55%3D6

装甲:なし。眼に見えない「落し子」の場合、相手の命中率は1/4になります。
呪文:全ての「落し子」は、年齢5歳ごとに少なくとも1D4の呪文を知っています。
SAN:「ヨグ=ソトースの落し子」を見てSANロールに失敗したキャラクターは1D20ポイントのSAN値を失い、成功したキャラクターも1D3ポイントのSAN値を失います。

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「超能力」 "Psychic Powers"より

超感覚

 超感覚はそれほど派手な超能力ではありませんが、これを持つキャラクターは人間、場所、あるいは物などが発する波動を見つけ出したり、感じたりすることができます。

 魔術的、精神的、または感情的なエネルギーに満ちた何かと接触したり、善なる場所や邪悪に包まれた場所、かつて暴力がふるわれた場所などに立ち入ったりした場合、超感覚能力者は1D100によって自分のPOW値ロールを行うことができます。このロールに成功すると、触れている物体が特殊な遺物などであるのなら、超感覚能力者はそこから尋常でない暖かさや冷たさ(キーパーの判断による)を感じます。対象が場所であるのなら、かつてそこで行われたことが良いことだったのかそれとも悪いことだったのかによって、能力者はその場所が急に好きになったり、あるいは嫌いになったりします。

 対象となる地域が何らかの霊、または存在の憑依下にある場合、超感覚能力者は異様な暖かさもしくは寒さ、及び好き嫌いの感情を同時に感じることになりますが、その感じ方はそこにとりついている霊または存在の善悪によります。

 超感覚の成功率は、当初はそのキャラクターのPOW値と同じにすぎません。しかし能力者の〈オカルト〉が20%上がるごと、あるいは〈クトゥルフ神話〉が5%上がるごとに(さもなくば、書物や知識のある存在などから学んだ場合に)、この成功率はPOW×2%、POW×3%、POW×4%という順で、最大値POW×5%に達するまで増加してゆきます。


リトロカグニション(過去視)

 この超能力を持つキャラクターは、過去に何らかの凄まじい暴力や何らかの強大な力による行為――例えば殺人や呪文――にかかわったことのある物体に肉体的に触れると、その過去に起こった出来事についての瞬間的な「フラッシュバック」を得ることができます。リトロカグニション能力の成功率は、そのキャラクターのPOW×3%です。この能力によるロールに失敗すると、能力者は何ら精神的な手がかりを得られなかったことになります。ロールに成功した場合は、能力者が対象からどのような性質の精神的な印象を受けたかを決めるために、「フラッシュバック性質表」上で1D8のロールを行ってください。

■フラッシュバック性質表
1D8結果

1視覚
2
3感情
4臭い
5手触り
61D5を2回振る
71D5を3回振る
8視覚、音、感情、臭い、手触りの5種類の感覚すべて

 キーパーは、過去視能力者ひとりについてただ一回だけこの表上でロールを行うことにしてもかまいません。その後は、その能力者がリトロカグニションを使用するたびに、先のロールで決められたとおりに、常に同じ種類のフラッシュバック――視覚、音、感情など――が得られることになるわけです。さらにキーパーは、過去視能力者が感じることのできる感覚がどのくらい実際に役立つかに応じて、この能力の成功率を変えることもできます。例えば、フラッシュバックに「臭い」しか感じることのできないキャラクターのリトロカグニション能力の成功率はPOW値×5%で、一方「視覚」、「音」、そして「感情」の3種類の感覚を感じることのできるキャラクターの持つ成功率はPOW値×1かまたはそれ未満であるという風にするわけです。

 フラッシュバックに、SANに影響を与えるような生物の印象が含まれている場合には、過去視能力者は適当な正気度チェックを行わなければなりません。ただし、能力者がリトロカグニションに失敗した際には、SANの喪失もまた適用されません。

 リトロカグニション能力の使用は、MP4ポイントの消費を必要とし、また能力者は何ものにも邪魔されることなく1D4×5分間の精神集中を行わねばなりません。しかし実際にフラッシュバックそのものが感じられる時間は短く、長くともせいぜい2秒間というところです。


オーラの知覚

 この超能力を持つキャラクターは、人間や生物の体をとりまいているオーラを見ることができます。オーラを見ることによって、能力者にはその人間が善人なのか悪人なのか、健康なのか病身なのかとか、また相手が今どんな気分でいるのかとか、人間以外の生物の場合にはそれはいったい何なのかとかいったようなことが明らかになります。オーラの色は、一般的にその人物の気分を表しています。例えば黒いオーラは狂気か邪悪を、赤いオーラは興奮や欲望、また場合によってははっきりと表には出てこない何か良くない気持ちを、そして灰色のオーラは病気を、それぞれ意味しているわけです。

 ただし、人間のオーラは決してただひとつの決まった色ではなく、実際にはさまざまな色が斑状に混ざり合った色彩を呈しています。だから、オーラの色を正確に判断するためには、この能力によるロールの成功が必要とされるわけです。能力ロールに失敗すると、能力者にはオーラの色彩の乱舞が何を意味しているかが、まったく理解できなかったことになります。ロールの目で96〜00が出たら、能力者は見ているオーラから悪い印象を得たことになります。SANに影響を及ぼすような、クトゥルフ神話中の存在のオーラを見た場合、能力者はその存在自身を見た場合と同じように、SANチェックを行わなければなりません。この種の怪物に体を乗っ取られていたり、操られていたりする人間のオーラは、人間のものではなくその主である怪物のものとなります。能力者は、不可視の怪物をそのオーラによって見ることができます。

 この能力ロールの基本成功率は5%で、一般の技能と同じく能力者の経験によって成長させることができます。

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「『クトゥルフ・ハンドブック』で書き残した事」より

パーセンテージ・ロールの加減

 たとえば〈忍び歩き〉を例に取ると、コンクリートの床であろうと、古くてきしんでいる木の床であろうと、成功率がいつも同じというのは変です。女性キャラクターが「足音がしないようにハイヒールを脱ぎます」と宣言したら、キーパーは当然、成功率をおまけしてあげなくてはいけません。

 〈オカルト〉や〈歴史〉などの知識に関するロールも同じです。その知識がどれほど一般的なものであるかによって、成功率を倍にしたり半分にしたり、いろいろな操作が必要です。

 問題はその判定基準です。おのおのの技能について、様々な状況に応じた判定基準をいちいち設定するのは、繁雑になりすぎます。そこで次のようなおおざっぱな基準を考えてみました。

 仮に、ある技能の成功率が50%以上ある人を、その技能に関する「プロ」と呼びます。25〜49%の人は「セミプロ」、1〜24%の人は「アマチュア」です。〈0%の人は「ド素人」とでもしておきましょう〉

 そして行為の難しさを次の5段階に分けます。

[湖の隣人による註:以下の難易度レベルの説明と具体例は、原文では別々に記載されていましたが、見やすくするためにまとめて一部を箇条書き及び強調表示にしています。]


ルールブックにない行為の判定のしかた

 もしプレイの途中で判定に困るような状況に出会ったら、次の点を考慮して、その場で判定方法を考えてください。

  1. それがどれくらい偶然に左右される現象であるかを考える。偶然性のきわめて大きい現象なら、ダイスの目の大小だけで判定する。
  2. その現象が探索者のどんな要素に関連しているかを考える。筋力か? 器用さか? 外見か? 知性か? 精神力か? 複数の要素が関係しているなら、そのうちの最も大きいか最も小さい数値を用いる。
  3. その行為の平均的な成功率がどれくらいかを考える。常識に照らしてみて、難しすぎたりやさしすぎたりしないか注意する。
  4. その場の状況やシナリオの都合も考慮する。場合によっては、自動的成功、または自動的失敗にしてもよい。

 忘れないでいただきたいのは、ある行為の成功・失敗の判定というのは、そのゲームの中の一要素にすぎないということです。細かいことにこだわりすぎて、プレイの大きな流れを見失わないように注意してください。

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リーダーズコミュニケーション:コミュニケーションポートより

 まず『ルルイエ異本』ですが、この書の英題は『The R'lyeh Text』、中国語に訳される(半ば伝説の夏王朝の時代のことと思われます)以前は、ルルイエ語で書かれていたものなのでしょう。そして中国語での題名は、『螺湮城本伝』1です。「螺湮」の発音は、古代中国語音(秦、漢の代)では「Luar lan」、現代語音では「Luo Yin」です。「螺」は螺旋の螺で、もとは巻貝の一種を指した言葉ですが、形からの類推により、青々とした遠くの山の形容としても用いられています。また「湮」は沈むという意味で、つまり「螺湮」とは、「曲がりくねった沈んだもの」という意味なのです。あの反ユークリッド的建造物群からなる水底の都市の名としては、まさにうってつけといえましょう。なお、タイトルで「螺湮」の後に「城」がついているのは、単なる意訳です。中国の城は西洋のものと同じく、城塞都市を表します。

(中略)

 次に『サンの七秘聖典』についてですが、この(おそらくは)固有名詞の「サン」は、英語では「Hsan」となっています。これは明らかに、文字改革以前(清の時代)の「冱山」の発音、「Hu san」(現代公用語ではHu shan)の誤りです。したがって実際には、これは『フサンの七秘聖典』となるべきです。そしてこの書の中国語でのタイトルは、『冱山七密経典』2です。「冱」とは、「凍るように冷たい」、という意味ですから、「冱山」とは、「凍てつくような山」という意味になります。

 では、「冱山」とは一体どこのことなのでしょう。結論から先に言えば、「冱山」とはあのレン高原のことなのです。アジア中央部の寒冷の地レン高原のことは当然中国でもよく知られていました、というか、この「レン」自体が、「冷」という中国語、上古から現代まで、ほぼ一貫して「Leng」と発音されてきた漢字なのです。これらの事実を併せて考えれば、この書物の題になっている「冱山」と、あのレン高原とが同一の場所であることに異論はないでしょう。そもそも(レンを通して現実の中国と交流があったと思われる)ドリームランドでは、この書は『大地の七経典』(おそらくこちらが原題でしょう)と呼ばれているというのですから。

(中略)

 P.S.:『ネクロノミコン』についていくつかの意見を交わしたときのこと、冉氏3はこのような暗示的な科白を口にしました。

 「『尸条書』4(Shi Tiao Shu――『ネクロノミコン』のこと)についてジョン・ディーがやった程度のことなど、我ら漢民族はとうに元代になし終えておる。もしかするとあんたの国にも入っておるかもしれんて。」

*なお、漢字の読み方は、藤堂明保編『学研漢和大辞典』を参考にしました

湖の隣人による註

  1. 「螺湮」は日本語音では「ライン」か?
  2. 「冱山」は日本語音では「コサン」あるいは「ゴサン」か?
  3. 著者が『螺湮城本伝』及び『冱山七密経典』を短時間ながら借り受けたという冉虎(Ran Hu)氏の事。
  4. 日本語音では「シジョウショ」か?

 また、原文では、発音表記のアルファベットは音節ごとに中黒によって区切られています。

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リーダーズコミュニケーション:Q&A HJクトゥルフの呼び声

Q. 〈フェンシング〉や〈ナイフ〉やらの技能はどうやったなら持てますか?

A. 技能は誰でも持っていると考えます。その場合各武器の基本命中値を使用します。命中値を増大させるにはINT×5で得られる数値を割り振ります。

Q. 受け%とはなんですか?

A. 戦闘において近接戦用武器による“命中”を受けたキャラクターは、受けのための武器を持っているなら、受けのチャンスがあります。受けのロールは、受けの成功率によるだけで、あとは攻撃のロールと同様で、受けが成功したなら、“命中”を受けたキャラクターは、その命中打から何のダメージも受けません。

 最初、受け%は攻撃命中率と同じです。INT×5で得られる数値を割り振るときは、攻撃と受けと別々に割り振らねばいけません。

Q. 〈フェンシング:攻撃〉と〈フェンシング:受け〉とは別々に成長させるとはどういうことですか?

A. 上の例を読んだ上で、P14の成長と経験のルールをもう一度読んでください。

Q. 学校へ1年通うごとにEDUは増大するなら、時間の経過を明確にしなければならないのですか。

A. プレイヤーは既に教育を終え、社会に出たキャラクターを演じます。いったん社会に出た人間が(EDUを増加させるような効果的な)教育を受けることは非常に困難です。ルールにはEDUと学歴との関係が書いてありますが1年学校へ通っても、人によって得る知識には差ができるでしょ? EDUの数値が必ずしもそのまま学校へ通った年数というわけではないと思います。EDUが低くとも大学を卒業した人もいるだろうし、その逆もあるでしょう。キャラクターのEDUは変更しないのが基本です。EDUを変化させてみたい人はTAC62号の有坂氏の記事を参考にしてみてはいかがでしょうか。

Q. “召喚”の呪文で呼び出された怪物は術者の命令に従うのでしょうか?

A. いいえ。“従属”の呪文を使ってください。“接触”の呪文も“召喚”と同じように命令には従いません。

 “召喚”と“接触”では対象(奉仕種族と独立種族)と出現の方法に違いがあります。

Q. よくPOWの永久的な消費と書いてありますがただのPOWの消費と違いがあるのですか?

A. 違いはありません。魔術のルールには消費したり回復したりするMPがあるので、念のためPOWには「永久的」と書いてあるだけです。

Q. POWの増減で“幸運”には変化はありますか?

A. あります。

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「クトゥルフ・ワールド・ツアー」より

ンガ=クトゥン、目なき神、あざ笑うもの(旧支配者)

描写:ンガ=クトゥン (NGGUA=CTHUNNG) は、無数のおぞましく震える触手がはえた、球状の体を持つ旧支配者です。頭頂部には大きな口がついており、ここから常にあざ笑うような笑い声を漏らしています。この笑い声は同時に呪文にもなっています(呪文の項参照)。

信仰:地球上にンガ=クトゥンを信仰する宗教は伝えられていません。ただ、『ナコト写本』『エルトダウン・シャーズ』の中にわずかに述べられているにすぎません。そのわずかな記述をまとめると、だいたい以下のようになります。

 ンガ=クトゥンは、ふだんは惑星トゥンッア (TTHUNNGTTHUA) の地下に広がる亜硫酸の海に潜んでおり、惑星の住人たちから崇拝されています。住人たちのくわしい姿や性質はわかっていませんが、それほど高度な知性を持ってはいないようです。

 またンガ=クトゥンは、理由はわかりませんが、ニャルラトテップとその忌まわしき狩人を極度に恐れています。

注意:旧支配者に分類されてはいますが、このンガ=クトゥンはダメージを与えることによって殺すことができます。

 ンガ=クトゥンが殺されてしまった場合、惑星トゥンッアの原住民の中の一体が急激に成長(変形?)しはじめ、新たなンガ=クトゥンになります。このンガ=クトゥンは、オリジナルとまったく同じ能力(呪文なども含む)を持っています。

 ンガ=クトゥンは、無数の触手を使って攻撃します。体じゅうから何本もの触手を突き出して、それぞれが犠牲者を狙って伸びるのです。触手の届く範囲にいる限り、何度でも攻撃をかけられます。ですから、70%の確率で当たる攻撃というよりは、被害者が確率30%の〈回避〉ロールをしていると解釈したほうがいいかもしれません。

 この触手の攻撃が当たると、触手に巻きつかれたことになります。STR対STRの抵抗ロールに成功しない限り、この触手を振りほどくことはできず、毎ラウンド自動命中でダメージを受けます。2ラウンド目からは触手が皮膚を突き破って血を吸いはじめるので、通常のダメージの他に被害者のSTR値が1D3ずつ減っていきます。STR値がゼロ以下になると、その犠牲者は死にます。(幸運にも)ンガ=クトゥンから生き延びた場合、STR値の低下は一時的なもので、ゆっくり休養を取ることで一日に1ポイントずつ回復させることができます。

STR 23CON 80SIZ 20INT 5POW 20DEX 24
移動 ?耐久力 50
*招来時の値。上限なし
武器命中率ダメージ
触手70%3D6+2D6+特殊
かみつき40%4D6+2D6

装甲:なし。ただし、物理的ダメージは1ラウンドに1D10ずつ回復できる。
呪文:《ンガ=クトゥンの笑い》《星の精の召喚/従属》《精神力の吸収》《マインドブラスト》《手足の萎縮》
正気度喪失:ンガ=クトゥンを見てSANチェックに失敗した探索者は1D20、成功した探索者も1D6のSANを失います。

新しい呪文

《ンガ=クトゥンの笑い》

 ンガ=クトゥンの笑い声を聞いた者は、麻痺して動けなくなってしまう可能性があります。目標は、術者(ンガ=クトゥン)とPOW対POWの抵抗ロールを行います。ンガ=クトゥンがこれに成功すると、目標は1D4ラウンドの間麻痺してしまい、まったくの行動不能となります。攻撃や移動はもちろん、声を出すことすらできません。

 この呪文には対象人数の制限はなく、ンガ=クトゥンの笑い声が聞こえる範囲内にいる対象なら、同時に何体でも麻痺させることができます。また、たとえ影響範囲内でも、術者が望むなら特定の相手を呪文の目標から外すこともできます。

 ンガ=クトゥンは、この呪文をまったくMPを消費することなく使えます(というよりも、ンガ=クトゥンの笑い声が呪文としての効果を持っているのです)。ンガ=クトゥン以外の生物の発声器官では、この笑い声を少しでも真似するのは不可能です。また、この笑い声を録音して再生しても効力はありません。

《記憶写し》

 この呪文は、目標の記憶を写し取るものです。非常にまれな呪文で、手に入る確率、学習・修得率ともに普通の呪文の五分の一になります。

 まず、記憶を写し取る相手は精神的に無抵抗の状態である必要があります。気絶、仮死状態、真の発狂状態、植物人間状態などがこれに当てはまります。睡眠中はこれに入りません。

 術者はまずPOWを12ポイント永久に消費します。したがって、術者のPOWが12に満たない場合、この術をかけることはできません。

 続いて、目標の隣に横たわり、ドリームランド産の特殊な香木からつくった特殊なお香を焚きながら、八時間に渡って呪文を唱えます。この時、術者は1D10、目標は2D8のSAN値を失います。

 この呪文をかけ終わった後、術者の新しいEDUの値は、(目標のEDU+1)か(術者の以前のEDU+1)のいずれか高い方になります。

 この呪文で、技能欄に並んでいるような専門の知識を得ることはできません。得られるのは、あくまで一般常識(EDU値)と目標の日常生活での記憶です。

新しい魔道書

聊斎志異

蒲松齢著、一七一五年(ただし、これは一九〇〇年に復刻されたもの)

 原本は清朝の頃の本で、中国各地に伝わる怪談を集めたものです。中にいくつかクトゥルフ神話的事件が載っています(クトゥルフ神話+2%、呪文倍数×1、SANマイナス1D2)。

沒鬼都外記

???

 先史時代に太平洋に沈んだ謎の大陸にあったという都市と住人たちを中心に、その都市の神々やそれを祀る宗教について書かれた本です。

 原本は、(そこに書かれている記述を信用するなら)人類以前の言語で書かれたもののようです。

 この本は、西洋の研究家の間では一般に『ルルイエ異本』と呼ばれています。ここにあるのは完全版ではありません。長い年月に渡って写本で伝わっているため、かなり内容が変わってしまっているようです(クトゥルフ神話+10%、呪文倍数×2、SANマイナス2D6)。


湖の隣人による註釈及び考察

「新訂クトゥルー神話事典」(学研)においては、ンガ=クトゥンは綴りが"N'gha-Kthun"となっていて、「〈旧支配者〉の一と思われるが、詳細は不明である。」という解説があります。この神性はダーレスの「ハスターの帰還」の中で名前だけ言及されています。

もともと項目が書かれていないのですが、たぶん「ダメージ・ボーナス:+2D6」でしょう。また、「*招来時の値。上限なし」というのはおそらくSTR、SIZ、耐久力及びダメージ・ボーナスの値の事ではないかと思われます。触手の吸血によって得たSTR値を任意に振り分ける、等のような処理をするのではないでしょうか。また「移動」については……動く事は出来ると描写されていますが、その形態からしてあまり素早いとも思えませんし、しかし何と言っても神ですから……「人間並みかそれよりちょっと上」ぐらいの数値では。


《ンガ=クトゥンの招来》の呪文の条件は書かれていませんが、記事の内容から推測してみると以下のようになります。

ンガ=クトゥンを招来するためには、まずンガ=クトゥンを祀るための祭壇を準備する必要があります。祭壇の広さは30メートル四方くらいで、床には血で魔法陣とンガ=クトゥンの姿を描きます。この絵はある程度の迫真性を要求されるもので、これを見て正気度チェックに失敗した人間は1D3ポイントの正気度を失います。ただし、この絵は一定以上(4〜5メートル?)の高さから見ないと、その全体像を把握する事が出来ない(=正気度チェックが必要にならない)くらいの大きさのようです。

招来時には、まず人間一人分ほどの血を魔法陣に振りまき、それから《ンガ=クトゥンの招来》の呪文の詠唱を始めます。招来の成功率は基本ルールと同じです。ただし、作成された魔法陣にPOWが封じ込められていた場合、(おそらく、消費されたPOW1ポイントにつき)呪文の成功率が+10%され、詠唱終了までの時間が5分短くなります。詠唱時間は最低でも1分必要です。この事から考えると、《血の魔法陣に魔力を付与する》という呪文の存在も考えられますね。

呪文のロールに成功した場合、詠唱が完全に終わる前から魔法陣の上には白い霧が立ちこめ始めます。そしてぼんやりとですが、ンガ=クトゥンのいやらしい笑い声がだんだん聞こえてきます。術者以外のその場にいる人間は以降のラウンド、笑い声の強度である10に対して自身のPOWで抵抗ロールを行わなくてはなりません(笑い声は時空の彼方から聞こえてくるので、まだ威力が弱いのです)。抵抗ロールに失敗すると、1D4ラウンドの間麻痺してしまいます。ちなみに《ンガ=クトゥンの笑い》は、能力値POWを持つ全ての奉仕種族及び独立種族に影響を与えるようです。また、霧の向こうにはおぼろげながらンガ=クトゥンの忌まわしい姿が見え隠れし、それを見た者は正気度チェックを行い、失敗すると1D10、成功しても1D3ポイントの正気度を失います。呪文のロールが成功していても、詠唱を終えてしまうまでに術者を倒す事が出来れば、ンガ=クトゥンは招来する事なく時空の彼方へと帰っていきます。


最後に重要な情報を。ケイオシアムの「クトゥルフ神話」カードゲーム"MYTHOS"等によれば、ンガ=クトゥンは旧支配者ではなく、風の神ハスターに仕えるミ=ゴを率いる存在という事になっています。カード上部の綴りは"N'gah-Kthun"です。けえにひ様に閲覧させていただいたイラストに描かれていた姿も「蓄音機とラジオを合わせたような機械を使いガラスケースに入った人間の脳と会話(?)している、頭部の大きな、いかにも頭脳派といった感じのミ=ゴ」でした(そばに置かれている書物の中に、ダーウィンの「種の起源」があります)。ちょうど火の神クトゥグァに仕える炎の精を率いているフサッグァと同じ位置づけですね。ま、神話の真実など卑小な人間には知る由もありませんから、先述の旧支配者が「ンガ=クトゥン」と呼ばれていても良いのではないかと思います。

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