No.22 コロナとの戦い8 戦場での自由

 今年初めから始まったコロナとの戦いは瞬く間に世界中に広がり、今や第三次世界大戦ならぬ第一次コロナ大戦の様相を呈しています。アメリカでは大統領が「消毒薬が効くらしいから患者に注射してはどうか」と言ったとか。その時政府の医療担当者も同席していたようですが、ただうつむくばかりではいけません。私が防衛医大に勤務していた時に当時の日本医師会長が来られ、「君たちは患者を治すためにここにいるのではない。」と話を始められました。なんのことかと思ったら自らの戦争体験から「負け戦になると司令部は狂う。それを正せるのは君たちだけだ。」と。非常に印象に残るお話でした。当然消毒薬は注射してはいけません。最悪患者が死んでしまいます。もし私がその場にいれば大統領、ご冗談でしょ?とごまかしたでしょう。それが専門家の仕事なのです。それにしても負け戦とまでは言わないもののアメリカもこの戦いには相当苦戦しているようです。

 かつてゴールデンウイークと言われた大型連休の季節になりました。毎年どこか行きたいけど人が多いからなと悩んでいましたが今年は外出するな、よその県に行くな、うちに来るなの大合唱です。他県ナンバーだと石を投げられることもあると報道されていて、家でじっとしているほうが賢明なようです。先週まで海でサーフィンをやっているということが問題となり海岸が封鎖される事態となっていますが、戦いの場でどこまで自由が許容されるかは議論のあるところです。しかし平和な時と違うことは間違いありません。

 自衛隊に入りたてのころ、夜間の訓練があり出発前にぺちゃくちゃしゃべっていたらゴツンとヘルメットをたたかれました。まだ訓練始まっていないのにと不満でしたが、まあ仕方ない。後で考えると夜間は闇に紛れて敵に見つからないように移動するので出発前でも敵にわかるような音を出すのは絶対ダメということでしょう。戦場に行くのは命がけです。自分だけならまだしも仲間まで危険さらします。そう、戦場では連帯責任なのです。それ以後一人が失敗すると全員で腕立て十回という自衛隊ならではの連帯責任生活が始まりました。自由の前提は自己責任ですが、戦場ではそれは通じません。最初はとても不快であったのですが、一人の勝手な行動が仲間の命を危うくする、隣りの人の勝手な行動で自分が危険になるのが戦場なのです。不平、不満いろいろあるでしょうが、今は国民が連帯して、しばらく不自由を我慢してコロナと戦わなければなりません。戦いはすでに始まっているのですから。


2020年04月27日