No.23 コロナとの戦い9 頭上の鳥

 緊急事態宣言から3週間が経過しました。東京都の感染者数に減少傾向がありますが、北海道では一度減少した感染者が再び増加しており安心はできません。

 東京都の感染者減少に効果があったと考えられるのが、三密の危険のある施設の営業自粛要請です。ライブハウスやカラオケなどは自粛しているようですが、パチンコ店が自粛要請に応じないことが問題となっています。パチンコは感染者かもしれない人が座った台で遊ぶので接触感染の危険も非常に高い。私が若い頃は娯楽といえばパチンコで私自身の経験からその誘惑の強さはわかります。今でこそギャンブル依存症として治療の対象ですが、当時の自衛隊では休みといえばパチンコという人は大勢いました。私も研修医の頃は眠る暇もないほど忙しかったのですが、地方の病院は暇で休みには「昨日は1万勝ったのに今日は2万の負けか」などと一日中パチンコ台に座っていたものですが、ある日ふと見ると上官が私をじっと見ていました。目が合ったので挨拶したら、ぼそっと「まあ、あんたはいつまでもこんなことやってられないからなぁ。」とつぶやいて行ってしまいました。今でも覚えていますがその瞬間目が覚めたように我に帰りパチンコはやめました。旧日本軍の教科書に「頭の上を鳥が飛ぶことは防げないが、頭の上に鳥が巣を作ることは防げる」ということが書いてあります。パチンコに熱中していた私の頭には鳥が巣を作っていたのでしょう。思い出に残る人との出会いで鳥の巣は消えました。

 頭の上を鳥が飛ばないためには家にいるのが一番ですが、仕事で出ないわけにはいきません。うれしくはありませんが鳥からの落とし物をいただくこともあります。コロナウイルスも同じで、外に出れば接触は防げません。帰ったら手を洗ってスマホを消毒してわが身を守るしかありません。一方ここは明らかに危険だとわかっている場所があります。パチンコ店もその一つです。だから自粛の要請が出ているのです。この機会に頭の上の鳥の巣も取り除いてはいかがでしょうか。


2020年04月30日