No.28 コロナとの戦い14 コロナ腰痛

 緊急事態宣言が解除され通勤の電車も少し混み合ってきているようにも思いますが、以前ほどではありません。長い自粛期間のために仕事を失った人も多いと推測されます。今までが順調であったほど急な変化に順応するのが大変でしょうが、頑張って生きていくしかありません。コロナに負けるな!と申し上げたい。

 最近外来で原因不明の腰痛を訴える患者さんが増えています。外出を自粛することになれば体力、特に筋力が落ちるので自宅で運動を続けてくださいとこのコロナとの戦いの最初に書きました。皆さんラジオ体操を何回もやっていますなど頑張っていると言われてはいますが、それでは足りないのでしょう。最近あちこちいたくなった、特に腰が痛くなったと訴える人が多いようです。念のためレントゲンなど調べても異常は見つからないので「これは運動不足ですね」というと、「そうなんですよ、最近全然運動していません。以前はジムにも通って元気だったのに。」と言われます。どうも他人が見ていないと自分だけで運動しても効果が少ないようです。そんな患者さんには腰を中心に鍛えるように前にも書いた寝転んでやる腰痛体操を紹介しています。

 この時期の腰痛を勝手にコロナ腰痛と命名しましたが、コロナ腰痛は運動不足だけでなく精神的なストレス、特に刺激の減少が関係しているようです。外での楽しみがないと家の中で楽しみを見つけるしかないのですが、突然そう言われてもすぐ何か見つかるわけではありません。なにも注意を向けるものがないと自分の中で何かないかと探すようになります。そうすると普段の忙しい生活の中では気にしなかったわずかな違和感を見つけて、それを痛みと認識して、その痛みが次第に大きく感じるようになります。患者さんの話をよく聞いてみるとそのような症状が結構みられます。その場合はお薬やまして手術で治そうとするのは適切ではなく、もちろんそれでは治りません。痛み以外に注意が向くように生活を工夫しなければなりません。何か見つかると痛みも和らいでどこかに行ってしまいます。何がよいかは人それぞれですが、この機会に意外な生きがいが見つかるかもしれません。しばらくは新しい生活にあわせて身体を鍛え、心を整えて乗り切りましょう。

 コロナ自体は外に出ず、人と接触しなければ感染することはありません。しかしそんな生活をいつまでも続けられないと諸外国でも外出の制限を解除し始めました。するとまたコロナが増え始めるところもあるようです。最初の奇襲と違って医療態勢が充実していればコロナが増えても何とかなります。しかし、日本ではコロナ患者の減少とともに民間病院の中には経営が苦しくなったところもあるようです。患者の急増に対応するためには、ベッドと人員を準備しておかねばなりません。次の戦いに向けて十分な医療態勢を維持するために政府の支援は欠かせません。自衛隊にいたころ大先輩から「戦争中は問題ない。戦争のない時にどのように軍隊の医療を維持し続けられるかが問題だ。」と言われたことを思い出します。



2020年06月01日