阿佐海岸鉄道は1992年に海部~甲浦間にて営業を開始した、営業キロわずか8.5キロメートルという小さな第3セクター鉄道で、阿波海南は牟岐線の中間駅にすぎなかった。
しかし短い営業キロに少ない利用者であるが故に赤字体質の路線だったため、阿佐海岸鉄道はその打開策として鉄道とバスの二刀流的役割を果たすDMV(デュアル・モード・ビーグル)の導入を打ち出す。これにより阿波海南の存在意義が大きく変わる運命となる。
元々牟岐線の終点だった海部が高架上にあり、周囲は小さいながらも町が形成されているために直接車道に出るための道路を造るのが難しかったため、鉄道からバスへモードチェンジして車道に出るには海陽町内で唯一の地上駅である阿波海南が最も適していたのかも知れない。
DMV工事に先がけて、2020年に牟岐線の終着駅という扱いになった後、2021年末に阿佐海岸鉄道は世界初となるDMVによる運行を開始した。阿佐海岸鉄道側はバスから鉄道に切り替わるモードインターチェンジを備えたバスの停留場といった施設となっている。
阿佐海岸鉄道が阿波海南を終点としなかったのは両端をバスとしての役割を持つ他に、阿波海南文化村~道の駅宍喰温泉を繋ぐことによって、海陽町の観光に一役買ってもらおうという狙いが見えた。
阿佐海岸鉄道のDMVは小さな車両であるために1便の定員が16人の座席指定となっており、予約した方が確実に乗れるが、当日直接乗る場合は直前まで空席状況をチェックした方が良い。
阿波海南の線路の終端部はぷっつりと途切れ、その先は代わりに走ると言わんばかりに阿佐海岸鉄道の所有物と化してしまっている。阿波海南が牟岐線の終着駅かつDMVの乗換駅となり、近くに高校もあるため列車の到着時は海陽町内の駅の中で最も賑わっている。
阿波海南のDMVのモードインターチェンジではバスから鉄道へのモードチェンジを目の前で見ることができる。これも阿波海南の大きな魅力ではないだろうか。
(2002.9.2)