高松から高徳線で徳島県に入って最初に到着する駅が、この阿波大宮である。主に平野部を走る高徳線ではあるが、讃岐相生を過ぎると讃岐山脈越えをするため、勾配を上り、いくつものトンネルを抜けていく。讃岐相生と阿波大宮の駅間距離は高徳線内においては最も長く、それだけ時間もかかるが、山深いところを走る上に、徳島方面に向かって左手には播磨灘が見えるため、最も景色が面白い。
阿波大宮の駅は、その讃岐山脈越えの途中といった感じの駅で、平坦なところに立地しているのが多い高徳線の駅の中では、とりわけ独特な雰囲気を醸し出している。
駅舎の出口には「大坂峠ハイキング下車駅」と掲げられ、駅前には馬酔木の径(あせびのこみち)という、簡単なイラストマップが造られている。駅から歩いて20分くらいの所に峠の御番所の跡があるみたいだが、あまりにも蒸し暑かったために、そんな山登りなどする気にもならなかった。
高徳線で唯一山間に位置する阿波大宮。そこには、やや古めの民家が点在し、限られた平地には田畑が造られている。訪問したのが夏場であったために、周囲のいたるところでセミの泣き声が飛び交っている。線内で独特な雰囲気を醸す駅は、都会の人が忘れつつある、ふるさとの雰囲気を感じさせる駅であった。
(2008.8.8)