ホームの出入口には借家のように同じデザインとカラーリングで貨車を改造した待合室が並列に2つ並ぶ駅、伊納はすでに旭川市に位置する駅だ。
まるで人様の家の敷地内と思わせる3〜4軒の民家が建ち並ぶ砂利道を通り抜けて、舗装された道路に出て石狩川に架かる伊納大橋まで歩いてみた。駅前の民家から橋までの距離は300〜400メートル、その間はどこかの会社の敷地であるために人が住むような民家がないので心理的に長い距離を歩かされている感じがする。伊納大橋にたどり着き、石狩川の対岸には旭川のベッドタウンといった数多くの住宅地が確認できたが、伊納の駅に停車する列車の本数は少ない上に、旭川の市街地へは車かバスを使った方が近いために、駅を利用する人はあまりいないというのが現状のようである。
伊納大橋の近くには1つ高校がある。貨車駅の建物財産票を確認してみると、設置されたのが昭和60(1985)年と書かれている。2面2線の上下方向別単式ホームと呼ばれる構造の伊納のホームには屋根がない。しかもここは冬の寒さがとりわけ厳しい旭川、貨車駅を2つ設けたのもなるべく多くの高校生に雨や雪を凌いでもらいたいという配慮だったのかも知れない。
また伊納のホームの石狩川寄りにかつての旧線の線路跡やホームの跡も残されている。駅のまん前にある真っ黒なアスファルト舗装された細い道はサイクリングロードとなっている。伊納の駅周辺の函館本線の線路はトンネルによるショートカットになっているが、かつては石狩川沿いに線路が通っていたという名残である。
貨車を改造した待合室が2つある駅はここだけだが。現状としては2つともきちんと使われているかは微妙なところではある。
(2008.11.9)