一日に一本しか列車が来ない駅としてファンの間では有名になっている楓駅。私自身もここに来ることが一つの目標であったため、今回はエピソード風にしてご報告をして行こうと思う。ちなみに訪問日は2002年2月26日である。
ある日突然に楓に行こうと思ったのはこの年の3月号の時刻表を買った時である。前々から他のサイトで楓が今年の3月になくなるという情報を耳にしていていた(というよりは勝手に思い込んでいた)ので「なくなる前に何が何でも楓に行かなければ」と突っ走ってしまったのが要因である。それに私の飲食関係の仕事は来週のシフトができるのが土曜日または日曜日(要は直前)なのでまともな予定がたたないという旅行好きには結構厳しい立場なのである(それでも3年近くやってきている)。
ある日偶然にも仕事が休みの日の次の日が夕方の出勤と言うシフトになっていたので膳は急げとばかりに早速北海道への航空券を入手して楓に行く計画を立てた。楓の訪問の際の大きな障害となったのが宿をどうするかと言う問題であった。楓に行くには新夕張6:45発の列車に乗らなければならないが新夕張周辺にホテルが見当たらず、もう一つの策として追分5:47発で新夕張6:18着の列車に乗ろうと思ったが追分周辺にもホテルが見当たらず困惑していた。(仕事をしている身なので駅寝は当然×、自分の体力的な事もあるが・・・)しかし楓の訪問を可能にする一本の赤い糸を見つけ出した。釧路から発車する夜行特急「まりも」である。「まりも」は23:00に釧路を発車し、新夕張は通過となるが追分には翌朝の4:51着。これで追分5:47発の石勝線の始発に乗れ、楓の訪問が可能となったのである。
北海道1日目は富良野線に乗車後、高倉健主演の映画「鉄道員」の幌舞駅の舞台となった幾寅を訪問(無人かと思ったら委託駅でした)。一旦東鹿越に行って新得から「スーパーおおぞら9号で釧路に向かい、それから「まりも」で一路追分へと向かった。ちなみにこういう行動をとった理由は私は「北海道フリーきっぷ」を買っていて、少しでも元を取ろうとしていた事と新得や帯広の「まりも」の到着は深夜に及ぶため、列車の待ち時間を少しでも省こうと思ったからです。
4:51、定刻どおりに追分に到着。降りたのは私一人だけだった。実際に追分の訪問も初だったが本当に宿泊施設は見当たらなかった。追分発の石勝線の始発列車は30分くらい前から乗車可能でその時は北海道のローカル線にしては超豪華キハ40が3両連結されていた。しかし乗車できるのは前1両のみで後ろ2両は回送列車であった。(しかもその内の1両は楓行に使う列車だった) 5:47に追分を無事発車したが乗車したのは私一人だけで新夕張まで誰も乗らずほとんど列車貸切の状態だった。新夕張でやっとお客さんが乗ってきたが私が降りたために乗客入れ替わりとなる。新夕張からはいよいよお目当ての楓の訪問となる。折角乗るのだから運転士さんに挨拶を済ませておこうと思ったが発車の時刻が5分前、3分前と近付いてくるが運転士さんは一向に現れない。もしや今日は客がいないので運転取り止めなのではと考えたが、1分前にようやく運転士さんが登場。無事に楓に向かうこととなる。このときも乗客は私一人で、運転士さんは律儀にもワンマンの車内アナウンスを流していた。6:54に楓に到着。列車の発車時刻は7:02、停車時間8分で楓の駅の写真を撮らなければならない。しかも乗り遅れることは決して許されない行為である。なぜなら7:02発の列車が楓駅の始発であり、最終列車であるからだ。(しかも日曜は運休) 待合室には駅ノートがあったが書いている暇はなかった。ひととおり写真を撮り終えて、列車に乗ろうとしたら珍ハプニングがあった。運転士さんはどういう訳かドアをホームのない反対側に開けていたのだ(当然乗れない) でも運転士さんはそれに気付かずにのんびりと朝ご飯を食べていた。列車に乗り込んでいない私にようやく気付くと「(7時)1分だよ」と乗らないのを疑問に感じると、私が「ドアが開いていない」と言ったら、「ゴメンゴメン(笑)」と言い、ドアを開けて事なきを得た。楓駅は周囲に住宅はあるものの普段からあまり利用されていないんだなと感じた。この日楓から乗った乗客は私だけだった。(もちろん車内放送つき)
7:08に新夕張に到着。7時ごろに駅業務を開始したと思われる新夕張の駅員さんに楓駅はなくなるのかと聞いた所、「当分は(駅は)あるよ、なくなるときには多分大きく報じられるよ」と言った時、一種の安心感と同時に自分の勇み足がちょっぴり恥ずかしかった。
千歳方面の列車の待ち時間の間にこの日の楓行きの列車を運転した運転士さんとも話をした。私が思ったより寒くないのと雪があまりなかったのを指摘すると、「最近雨が降ってねえ、それにここ数日は20℃(もちろんマイナス)いかなかったし・・・」とこの季節の北海道は暖かいと思っていたようだ。またこれからどこへ行くのかと聞いて、「気を付けて下さい」と暖かいエールを送って職場に戻っていった。
楓駅に来れたと言う満足感と当分の存続と言う安心感で「また来よう」と心に決め、次の無人駅訪問に向けて7:34発の列車で新夕張を後にした。