駅を降りると無駄に広いアスファルト舗装された広場にポツンと立つ駅看板、駅からは民家が見当たらず、秘境駅の雰囲気を醸し出す釜石線の上有住だが、1993年までは石灰石輸送の拠点駅としての役割を持ち、現在の広場には駅舎が建っていて、駅員もいる駅だった。無人化された今は駅舎は取り壊され、線路も1本だけになり、ホーム上に待合室が設けられている。

 「銀河ドリームライン釜石線」の愛称を持ち、各駅にエスペラント語の別称がある釜石線だが、上有住の別名は「カヴェルノ」で、これは洞窟という意味がある。上有住から徒歩3分という場所に滝観洞という観光スポットがあり、これがエスペラント表記となった由来である。

 滝観洞はおよそ800m奥にある天の岩戸の滝を見に行くための洞窟であり、落差が29mは洞窟内にある滝としては日本一だという。天井が低いところがあり、途中で足元が水につかり、なおかつ中は低温であるため、ヘルメット・長靴・ジャンパーが必須になっていて、入洞するときはレンタルをしてくれる。所要時間は往復で約1時間ほど見ておいた方がよい。訪れる人がさほど多くないため、洞窟探索はさながらダンジョンのようなスリリングな体験ができ、暗闇の中でライトアップされた滝は非常に神秘的である。

 時代の変化によって秘境駅となってしまった上有住。快速「はまゆり」は通過してしまうが、滝観洞があるおかげで、臨時快速「SL銀河」は停車してくれる駅である。

                                                      (2019.8.27)

上有住のホーム。山あいの小さな無人駅である。
周囲に民家が見当たらない秘境駅、上有住。昔駅員がいたという話は想像し難いかも知れない。


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Kami-Arisu
「カヴェルノ」の由来となった、滝観洞。奥にある滝を見に行くための洞窟である。
上有住の駅入口。階段を上るとかつては駅舎があった。土台はその名残である。
こんな秘境駅でも、観光地を控えているせいか、臨時のSLが停車する。
上有住のエスペラント語の愛称は「カヴェルノ」で近くにある洞窟にちなんだものだ。
上有住