甲斐、信濃、木曽における重要な幹線ルートである中央本線だが、長野県内には現在でも単線の区間が残されている。大正時代に信号場として開設された倉本は単線と複線の境界駅の一つになっている。
木曽川と国道19号線沿いに立地する駅で高台に建てられた木造駅舎は手狭なところにようやく落ち着いている感じである。駅舎は下りホーム側にあり、上りホームへ行くには名古屋寄りのガード下をくぐって行かなければならない。
駅前に「空木(うつぎ)岳登山口」の標柱が立つが、駅からはだいぶ離れていて、相当な山好きでないと向かうのは難しい。その代わりに倉本から電車で上松に向かって行くと、左側の車窓からは木曽川の流れによって作られた奇岩の名勝「寝覚めの床」の景色を堪能できる。
これまでに4500駅を訪問して写真を撮って来た駅旅写真家の越信之氏によると、倉本を訪問するのに最も良い時期は、周囲の山々が紅葉している秋だという。私も越氏の本を参考に駅裏の道路沿いで電車を待っていたら、やって来たのは通過する特急「しなの」だった。
(2019.12.11)