沼久保は富士宮市内に位置する駅ではあるが、市街地から離れた小さな駅である。ホームに降り立つと目の前には富士山が美しい雄姿を見せてくれる。鉄道で山梨県と静岡県を結んでいるのは身延線だけだが以外にも富士山をはっきりと望めるポイントが少なく、身延線のホームから最も雄大かつ印象に残る駅はこの駅であると言っても過言ではない。
駅は県道沿いにあり、駅前には高浜虚子と堤俳一佳の歌碑が並んで立っている。駅前の県道の脇の坂道を下ると集落があるが規模が小さいのであまり多くの駅の利用者が望めないのは致し方ない。
私が小学生の頃この駅に下車した経験があり、今回は車での訪問になったのだが昔は県道が駅のそばにはなく今では集落沿いのカーブがきつい生活道路が昔の県道であり高浜虚子の歌碑も当然なく、90年代の世紀末の間に変わってしまったという印象を受けた。それは沼久保の駅のみならず、身延線沿線全体でもあてはまる。
小学生の頃にこの駅に下車してお気に入りだったのが沼久保小学校という木造の校舎があることだった。今この学校はどうなっているかと思い行ってみた所、すでに廃校になって校舎もなくなって広場になっていた。この広場を調べてみた所、沼久保小学校校歌の歌碑と体育館と思しき建物、そして渡り廊下がかつて小学校があった事を偲ばせていた。
そんな渡り廊下には廃校時に当時の小学生が校舎に対する思いをこめた落書きが今でも残っていた。「この校舎が好きだった」という校舎に対する愛着心をこめたものがあると思えば、「どうしてなくなってしまうのか」と校舎がなくなってしまう寂しさと憤りを感じていた落書きもあった。
(2004.2.8)