小海線の列車がしなの鉄道の線路と並走し始めると同時に乙女の駅に到着する。ホームは小海線側にしかなく、しなの鉄道の電車は何事もなく素通りしていってしまう。
全国的にもロマンチックな駅名として知られているが元々は遠くまでよく見えるという、「大遠見(おおとおみ)」が語源となっているらしいが乙女に関する民話がいくつか残されている。
一つは父親思いの娘が父の為に酒を買っていたがお金が底をつき、老人に泉の水を汲む様に教えられてその泉の水を汲んで父に飲ませた所、おいしいお酒だったので「神様が下さったお酒を働かずに呑んではばちがあたる」と改心したといういい方向に向かって行った話もあれば、ある娘が厳しい労働にたまりかねて大遠見で物思いに耽っていた所、若者が優しい言葉をかけて以来、娘は若者に恋心を抱き毎日会いに行っていたがある日誤って小川に転落してしまい命を落としてしまったという哀しい話もある。
かつてはホームに乙女の由来となった看板があったのだがホームを改良してしまったらしく、今はなくなっている。待合室は外見は和の趣があり、室内には駅ノートが備え付けられている。駅ノートというと旅行者向けのイメージが強いが乙女の駅ノートは地元の青少年の交流のきっかけにというコンセプトで小諸市が設置している。
乙女のホームの小諸寄りの出口は乙女湖公園へ行く近道になっている。公園内には文化センター、体育館やテニスコートなどがあり観光地というよりは地元の憩いの場といった感がある。
乙女の駅辺りから並走するしなの鉄道は昔は信越本線で普通列車よりもあさま号の方が本数が多かったように思える。だが今は新幹線ができ、普通列車しか通過しない寂しい路線になってしまった事をレールが物語っていた。
(2004.4.28)