旭川の北隣にあるスキーとイチゴの町、比布。この名前を一躍有名にさせたのはピップエレキバンのCMであろう。国鉄時代の駅名標の前で樹木希林と当時のピップフジモトの会長である横矢勲氏のコミカルなやり取りが行われたこのCMは大きな話題を呼び、たちまち全国から鉄道ファンや観光客が押し寄せて入場券が飛ぶように売れたという逸話が残っている。
CMが放送された1980年当時は国鉄職員が在籍する有人駅で、CMのロケ時には1934年に建てられた駅舎の一部が希林さんらの控室にも使われていた。
CMの放映開始からわずか4年で国鉄の職員が比布を去った後、1987年にはかつての駅事務室を喫茶店に改装して切符も取り扱う委託駅になり、店の方も人気があったという。
しかしながらその喫茶店も2010年に閉店。イチゴをイメージしてピンク色に塗り替えた駅舎も一般に使用できるのはエントランスのみとなってしまい、中に入ると駅舎の大きさの割にはちょっと手狭な空間に押し寄せられている感じがした。小さな町ではあるが、旭川まで20〜30分くらいで行けるため、ここ比布で折り返す区間列車も設定されている。
比布はエレキバンのCMから激動の歴史をたどったと言っても良いのかも知れない。しかし無人化され、ブームも過去の話となった今はディーゼルカーの発着を静かに見守る駅となった。
昭和初期に建てられた比布の駅舎が役目を終えたのは、私が訪問をして4日後のことだった。
(2015.6.15)