吉堀から25パーミルの勾配を懸命に駆け上がり、渡島地方と檜山地方を分ける稲穂峠を越えて少し下って行った所にあるのが神明である。
木古内寄りにある踏切が神明駅周辺の生活道路であり、その道沿いに民家がほんの数軒点在している。また江差線と沿うようにして走る道道が、ここ神明に限って数百メートル離れており、いたって静かな雰囲気を醸し出しているために、秘境駅の趣がある。
片面の板張りホームと待合室は木製で、ホーム土台と柵は古いレールを使用したものである。待合室に入ってみると北海道の無人駅ではお馴染となった駅ノート、窓枠を見てみると昔ながらの木製のものが今も使われている。
神明の古い木造の待合室の中で北海道の大自然からこだまする虫の声を聞いていると、子供のころ親の実家に泊まりに行った頃の懐かしい時間を思い出してしまった。
次にやって来る列車の時間がけっこうあったので、木製の長いベンチの上で横たわっていたら少しばかり昼寝をしてしまった。北海道新幹線建設の影響で2014年5月に木古内〜江差間の廃止が決まっている今、江差線神明駅としての最後の夏をじっくりと噛みしめている瞬間であった。
(2013.8.12)