「阿波室戸シーサイドライン」の愛称を持ちながら、実際に車窓から海が見えるポイントが少ない牟岐線。徳島から列車に乗って初めて海がお目見えした時に到着するのが、この田井ノ浜である。
駅名標をみると、地下鉄で定着し、JRでは北海道と四国で採用されている駅番号がつけられていない。ここは海水浴シーズンにのみ停車する臨時駅で、2008年のシーズンに停車する列車の本数は1日に4往復(うち1本は特急)だった。
駅を出ると、目の前は海水浴場である。ただ目の前が海水浴場であると同時に、周囲に民家がさほどないために、オフシーズンには全ての列車が通過してしまうことは止むを得ない。事実、夏以外に牟岐線に乗って田井ノ浜の駅を見てみると、どこか忘れ去られてしまった駅という雰囲気を感じる。
田井ノ浜に降りて、一通り写真を撮り終えたら、あまりの暑さに耐えかねて、たまらず海岸にあるたった一軒の売店で焼そばとかき氷を注文し、次の列車の時間まで、ゆっくりとくつろぐ。祭や縁日などの屋台によくある食べ物ではあるが、なぜか美味しく味わえ、Tシャツを脱いで上半身裸になっても何もお咎めがないのは、海の独特の雰囲気なのかも知れない。
この年の田井ノ浜の営業期間は7月19日〜8月10日。終了の時期がお盆前とかなり早いが、クラゲの発生がそれだけ早くなっているのだろう。
この年の田井ノ浜発の最終列車は16:46と早々に営業を切り上げる。シーズン最終営業日の最終列車が発車した瞬間、ここに一つの夏の終わりを感じた。
(2008.8.9)