土讃線で香川県から徳島県に入って最初の駅、坪尻はスイッチバックの駅である。山奥の駅で廃屋が1軒しかないという四国の中では最も秘境感がある。
なぜこんな所に駅があるのかと言うと香川、徳島の県境に猪ノ鼻峠というのがあり、この坪尻付近では25パーミルの急勾配を走る事になる。土讃線が出来た当時は非力なSLが主体だったために途中に交換設備と休憩所の役割をもつ信号場が必要だった。信号場ができると地元の請願で駅に昇格するという車がない時代のお決まりの(?)パターンにはまってしまった感がある。
またスイッチバックはたくさんのポイントを切り替える為に人手が必要だったので今では信じられないがこのような山奥の駅でもきちんと駅員がいた。現在はCTC化で無人駅になり現在に至っている。
駅からは国道32号線へと行く道がある。踏切を渡ってすぐに廃屋がありそこからはハイキングの様な急坂が続く山道を歩く事になる。しかもこの道はあまりにも日が当たらないので、去年の枯れ葉が未だに土に還っていない状態であった。
駅から国道へは約600メートルの道のりだが標高差が憶測で100〜200メートル位で所要時間は10分だった。国道は車が比較的多く走り、その近くにお店を発見!・・・と思ったら中古車の無人展示および販売場で車が欲しかったらケータイに連絡を取る形の店だった。その先にやっと民家を発見したらそこで飼っている10匹の犬に吠えられてしまった。さらにその家をよく見ているとニワトリやイノブタを飼っていることが分かった。
私はこの坪尻には8年前に初めて駅寝をした駅で、最終の阿波池田行きの列車と始発の琴平行きの列車の車掌さんが同一人物で、始発に乗った私を見て「おはようございます。泊まったん?」と声をかけられたのが今ではいい思い出となっている。
現在この駅では一部の普通列車が通過してしまい、上り列車の場合は朝停車したら、夕方まで停まる列車がなく日中にこの坪尻から琴平方面へ行く場合は一旦阿波池田行きの列車で隣の駅へ行く事になるという何とも寂しい駅になってしまっている。
(2003.6.4)