大阪府と和歌山県の境界をなす和泉山脈の西部に位置する小さな駅、山中渓。2007年に簡易委託が終了したことにより、JRの駅としては大阪府内で唯一の無人駅となった。
駅のすぐ近くにはローラーすべり台やアスレチックの施設がありながらも無料で入園できる、わんぱく王国という公園や、いくつかハイキングコースがあるため、関西圏の日帰り観光資源に恵まれていると言っていい駅である。
駅から大阪寄りのすぐそばには紀州街道の石柱が立ち、その右側には石畳風に整備された道が通じている。古い木造民家と現代風の民家が入り混じってはいるが狭い街道筋に家が建ち並ぶその風景は、かつてこの小さな集落が山越えの宿場町としての役割を担っていたことを想像する。
駅から和歌山寄りには山中渓温泉があったが、現在は全て廃業してしまった。阪和線の車窓からも見える廃旅館は廃墟マニアの間では有名な所のようで、山中川沿いから建物を眺めてみたら至る所で窓ガラスが割られていて、明らかに荒らされているのが分かった。
駅周辺の線路沿いには地元住民が植樹・手入れをした桜の木が並び、春になると桜の中を駆け抜ける電車の姿は格好のシャッターチャンスである。もう少し暖かくなれば、ピンクのトンネルがみんなを出迎えてくれるだろう。
(2013.3.6)