ひなびた非電化のローカル線に現れる近代的な片面ホームの駅、有備館は平成8(1996)年開業と、陸羽東線内では最も新しい駅だ。駅前には交流ホール、休憩所、集会室などの施設を備えた広場、「ユービック」がある。当時の岩出山町(現:大崎市)が町民の交流の場というコンセプトで造られたものなのだろう。

 そんな「ユービック」の狭い道路をはさんだ向側には駅名の直接の由来となった史跡、有備館がある。これは現存する学問所としては我が国最古のもので、元々は岩出山伊達家の二代目宗敏が城の消失を機に1663年に仮住まいとして建てたものを、三代目の敏親が武士の文武両道の必要性を感じとって、現在の地に移築をし、学問所として開設された。

 建物の中は日本古来の座敷と歴史資料の展示ということもあって、見学にはそれほどの時間は必要とはしないが、併設されている庭園は四季折々の花が植えられていて、どの季節に訪れても楽しめる心配りが良い。また館内は電線や電柱、周辺の民家等が見えない立地になっているお陰で、昔の世界に戻った気にさせてくれる。

 なお有備館は駅、自治体施設、観光施設が一体となっていることが全国的にも珍しいようで、平成14(2002)年には東北の駅100選に選定されている。

 有備館の駅を造ったのはローカル線の利用者の伸び悩みの打開策が目的だったと思われるが、駅に降りた鉄っちゃんは駅の写真を撮ったら次の列車にそそくさと乗り込んでしまい、観光地の訪問者の移動手段は車というのが現状である。駅設置における理想と利用者の現実がかけ離れているような気がした。

                                                               (2007.7.28)
有備館の駅名標


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有備館のホーム
Yubikan
伊達家が設立した学問所、有備館
有備館の駅前広場、ユービック
有備館