2003年衆議院選挙
朝日新聞三重版

2003年11月11日第一記事
知的障害者に投票干渉容疑 施設職員を逮捕

 9日に投開票が行われた総選挙(三重3区)で知的障害者に特定の候補者の名前を書くよう指示するなど投票に干渉したとして、三重県警は10日、「四日市福祉会」=同県四日市市別名3丁目=が運営する知的障害者更生施設の作業指導員、森正樹容疑者(52)=同県北勢町阿下喜=を公職選挙法違反(投票干渉)の疑いで逮捕、施設や容疑者の自宅など十数カ所を家宅捜索した。施設長は今年5月まで自民党県連の副会長で、県警は、組織ぐるみの関与があったのかを調べる方針

 調べでは、森容疑者は7日夕、車3台を手配し、ほかの職員3人と、同福祉会が運営する知的障害者更生施設「垂坂山ブルーミングハウス」の入所者11人を同市役所の不在者投票所に引率。自民党新顔の平田耕一氏(比例で復活当選)の名前と「自民党」と書かれた紙を全員に持たせ、「この通りに書くように」などと指示して投票させた疑い。

 森容疑者は「投票所に連れて行き、メモも渡したが、干渉するつもりではなかった」と供述しているという。

 投票所で警戒中の捜査員が不審な行動に気付いた。同施設は定員40人で、県警は、職員らがほかの入所者にも同様の投票干渉を行っていたとみて、柏木厳理事長らからも事情を聴く。

 柏木隆子施設長によると、投票を希望する入所者の漢字練習のため、後援会が持ってきた平田氏のパンフレットの名前部分を森容疑者がコピーして配布。この紙を投票所に持参し、ポケットから出した入所者がいたという。コピーしたのは平田氏の名前だけで、柏木施設長は「ほかに誰もパンフレットを持ってこなかったから」と弁明している。

 平田氏は10日、朝日新聞の取材に対し、逮捕された職員や施設について「あまり親しくしていない」、事件に関しては「全然知らなかった。どういう経緯でそんなことになったのか」と話した。

 同福祉会は、この更生施設のほか授産施設なども運営している。理事には自民党県連副会長の岩名秀樹氏も名前を連ねている。岩名氏は「施設として特定の候補者を支援していたことはないはずだ」と話している。

2003年11月11日第ニ報
知的障害者施設舞台に衝撃 公選法違反


知的障害者更正施設に捜索に入る県警の捜査員ら=10日午後6時20分、四日市市別名3丁目で
 「許されることではない」−。四日市市で起きた総選挙の投票干渉事件で、施設職員逮捕の知らせは、舞台が知的障害者施設だけに関係者に衝撃を与えた。

 「警察です」。同市別名3丁目の知的障害者更生施設「垂坂山ブルーミングハウス」では10日午後6時20分ごろ、県警の捜査員約10人がインターホン越しに声を掛けて中に入り、家宅捜索を開始した。

 同施設を運営する「四日市福祉会」の柏木厳理事長の妻の隆子施設長は同日午後7時ごろ、研修先から旅行かばんを持って施設に戻ってきた。報道陣に対しては、「何も弁明はありません」「ほとんどの施設が選挙に連れて行かない中で、自立を支援するために連れて行った」などと話した。

 また、逮捕された施設の作業指導員森正樹容疑者(52)については、「おとなしく気の弱い人。警察の厳しい取り調べにあったのだろう」と話し、捜査員には「しっかり見ていってください」と語気を強めた。

 しかし、ある入所者の親族は「もし本当なら許されることではない。障害者ならなおさらひどい話だ」とショックを受けた様子で話した。

 事件の舞台となった同市選挙管理委員会の担当者は「気がつかなかったし、そんなことができるとは考えられない」と当惑していた。

 同市内にある別の知的障害者施設の男性職員は「不在者投票に連れていくことはある。候補者がどういう主張をしているかの話をすることもあるが誰に入れろなどは言わない」と話した。

 今回、事件の端緒をつかんだのは不在者投票所で警戒中の県警捜査員だった。県警は、全市町村の庁舎に捜査員を張り付け、身代わり投票などの不正行為に目を光らせていた。

閉じる
日韓障害者交流大会
「選挙」ページへリンク