2004年3月25日付け
■障害年金――放置は許されない
大学生の時に事故や病気で重い障害を負ったのに、国民年金の保険料を払っていなかったことを理由に、障害基礎年金は支給しないとされた。首都圏の4人が、こうした処分の取り消しと損害賠償を求めていた訴訟の判決が東京地裁であった。
地裁は「救済の機会も方法もあったのに立法的措置をとらなかったのは法の下の平等を定めた憲法に違反する」として、1人の不支給処分を取り消し、ほかの3人に各500万円を支払うよう国に命じた。
原告たちは制度が不備だったために、安全ネットの網目から抜け落ちた。その人たちを救う当然の判決だろう。
国会や厚生労働省は、事態を放置してきたことを戒めたこの判決を重く受け止め、ただちに改善に取り組んでもらいたい。
原告たちが大学生だった80年代は、学生は任意加入の扱いで、国民年金に加入していた人は2%に満たなかった。現在のように保険料を免除する制度もなかった。卒業すれば多くが厚生年金などに加入する。国民年金への加入をうながす広報活動も活発だったとは思えない。
国民年金は61年に制度が始まって以来、何度か改正を重ねた。20歳以上の大学生が強制加入の対象になったのは91年だ。
判決は、全国民に共通する基礎年金制度をめざし、障害基礎年金が設けられた85年の法改正の時が、不平等をなくすチャンスだったと指摘した。20歳未満の若者や子どもは、保険料を払っていなくとも障害に応じて年金が受け取れるようになった。
しかし、成人した大学生は積み残された。原告たちは交通事故などで、いずれも重い後遺症が残り、障害1級と認定されている。だが、障害を負ったとき大学生で、たまたま20歳を超えていた。任意加入と年齢という二つの条件に阻まれて、ほとんど無収入なのに月額約8万4千円の障害基礎年金がもらえないでいる。
原告のひとりは発病したときの年齢が20歳未満だったと判決で認められて、不支給の処分そのものが取り消された。
現在、全国9カ所の地裁で、今回の原告を含めて30人が同じような訴訟を起こしている。今回の判決に力づけられたことだろう。ほかに4千人の無年金の元学生たちが裁判のゆくえを見守っている。
衆参両院の厚生委員会が無年金障害者の所得保障について「福祉的措置による対応を含め、速やかに検討する」と決議したのは94年のことだ。坂口厚労相も02年に救済のための私案を発表している。
政府は、いまの国会に提出した年金改革法案に、サラリーマンの妻である専業主婦が、手続きもれのために年を取ってから無年金者にならないようにするための特例措置を盛り込んだ。
少なくとも強制加入に改められた91年以前に障害を負った元学生たちにも、手をさしのべなければ、法の下の平等はない。
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