「不慮の事故」から子どもを救う方法 まず心肺蘇生を
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「不慮の事故」は1958年以来、子どもの死因の第1位です。家庭内で工夫したり、救命方法を身につけたりすれば1年に500人の子どもの命を救えるという試算があります。対策を調べてみました。 ■年間500人の命救える 昨年12月、静岡で風呂上がりの2歳と1歳の兄弟が、浴槽に落ちて水死した。大人がパジャマを取りに行っている間の出来事だった。 00年の人口動態統計によると、0〜14歳までの子ども933人が不慮の事故で亡くなっている。1〜4歳児の内訳は、交通事故34%、水死25%、のどにものを詰まらせたなどの窒息16%。水死の半数は浴槽でおぼれていた。 国立保健医療科学院の田中哲郎・生涯保健部長によると、0〜4歳の事故による死亡率は、先進国の平均に比べて高い。建物からの墜落死が4倍、水死が1.4倍などの特徴があるという。 「事故率を最も低い国並みにできれば、年間で0〜4歳の子ども500人の命を救える」と話す。 田中さんらは01〜02年に、岩手から熊本までの1都6県で1歳半の子どもを持つ保護者3414人にアンケートした。1年以内に事故による受診歴のある子どもは765人(22%)に上った。 家庭でどんな事故対策をとっているか尋ねると、「窒息対策にピーナツなどを子どもの手の届かないところに置く」は94%と高率。「浴槽の水を抜いている」は64%と高めだった半面、「階段の転落防止さくの使用」(46%)、「家具の鋭い部分のガード」(32%)、「浴室のドアが子どもに開けられないようにする」(31%)は低かった。 ■119番より先に人工呼吸 実際に事故が起きて、我が子の呼吸が止まったらどうしたらいいのだろう。 日本救急医療財団では、大人が1人しかいない時は、119番より先に心臓マッサージと人工呼吸をする必要を説く。救急隊が持つ電気ショック装置が無くても、救命できる可能性が高いからだ。 やり方は年齢により微妙に異なり、けっこう複雑だ。 1歳未満の乳児だと、心臓マッサージは、中指と薬指の指先で1分間に少なくとも100回のペースで押す。押す場所は、乳首と乳首の中間点より指1本分へそ側。人工呼吸は、口と鼻をまるごと口でおおって吹き込む。心臓マッサージ5回に人工呼吸1回の割合で続ける。 ■頼りになるお父さん、お母さんに NPO法人のセントジョンアンビュランスジャパン協会が文京学院大(埼玉県大井町)で、幼稚園や保育園の先生を目指す学生向けに開いた実習を見せてもらった。うまく人工呼吸ができると、人形につながった表示装置に緑のランプがつく。 「あごを上げて気道を確保するのが難しい」など、最初はうまく息が吹き込めなかった。しかし、練習するうちに緑ランプをつけられるようになった。 1〜8歳の場合は、心臓マッサージでは、かなり強く押す必要がある。 8歳以上は大人と同じ。心臓マッサージは両手を使い、1分間100回のペースで15回の心臓マッサージの後、2回の人工呼吸を繰り返す。 羽鳥文麿・千葉県こども病院部長は「子どもが相手だと、どのくらい強く押していいのか、息を吹き込む強さ、やめるタイミングなどがわかりにくいらしい」と語る。 このため、羽鳥さんも参加する厚生労働省の研究班が、分かりやすい教材づくりに取り組んでいる。電話のスピーカー機能を使って消防署員から指示を受けながらするのも一つのコツだそうだ。 「講習を受けて何となく程度でも知っていると、いざという時役立つ。世界で一番頼りになるお父さん、お母さんを目指してほしい」と羽鳥さんは話している。 (2003/03/03) |