[靖国・伊勢参拝]「戦没者追悼は日本の国内問題だ」
首相が靖国神社に参拝するたびに、なぜ大騒ぎになるのだろうか。伊勢神宮参拝とは、あまりに対照的だ。
小泉首相が元日に靖国神社を参拝した。首相就任後、二〇〇一年八月十三日、翌年四月二十一日、昨年一月十四日に続く四度目の参拝だ。
イラクへの陸上自衛隊派遣、夏の参院選、北朝鮮をめぐる六か国協議など今後の日程をにらみ、政権運営に最も影響が少ない時期を選んだのだろう。
五日の年頭会見で、首相は「正月ということで、参拝するにはいい時期ではないかなと思い、元日に参拝した」と語った。参拝直後には、今年はもう参拝しないとの意向も示したが、中国や韓国が特に問題にする八月十五日には参拝しないという意味だろう。
それでも中国、韓国の両政府は、強く反発している。
首をかしげるのは、民主党首脳の言動だ。昨年末、中国を訪問した岡田幹事長は、北京で、「日本国総理大臣の判断は間違っているのではないか。中国側はかなり自制している」と語り、小泉首相を批判した。
菅代表も、今回の参拝について「中国との関係で国益を損なう結果になっている」と語った。
逆立ちした論理というほかない。
一国の首相が、戦没者を追悼するためにいつ、どんな形で参拝するかといった問題は、本来、その国の伝統や慣習に基づく国内問題だ。他国からとやかく言われる筋合いはない。
野党とはいえ、日本の内政問題に干渉する口実を外国に与えるようなことがあれば、それこそ国益に反する。
靖国参拝が外交問題に発展すること自体が、異常である。
いわゆるA級戦犯の合祀(ごうし)が問題にされるが、死者に対しては平等に弔うのが日本の伝統的な文化、習俗だ。
一九七八年にA級戦犯が合祀され、翌七九年に公になって以降も大平、鈴木、中曽根の歴代首相は参拝を続けた。八五年に中曽根首相が公式参拝するまで、外交問題に発展することもなかった。
小泉首相は、公人、私人の別に関しては明らかにしていないが、これは、鈴木首相時代の方針に戻ったに過ぎない。
政教分離の問題も、ほぼ決着がついている。小泉首相は五日、伊勢神宮を参拝したが、憲法違反の疑いがある、などという議論は聞かれない。当然だろう。
かつて歴代首相は、伊勢神宮と同じように、ごく当たり前のこととして、靖国神社に参拝していた。そうした静かな靖国参拝に戻したい。