空中庭園タイトル
演出家 渡邊守章 過去の作品

渡邊守章の仕事

昨年の岩波文庫『繻子の靴』(上・下)刊行という大きな仕事をして、更に『朗読オラトリオ『繻子の靴』』とクローデルによる創作能『薔薇の名−長谷寺の牡丹』と舞台の創造も続けたから、さすがに疲れが出て、後の仕事が遅れがちである。お陰様で、『繻子の靴』については、松浦寿輝氏(『読売新聞』)、渡辺保氏(『毎日新聞』、『朗読オラトリオ』については『悲劇喜劇』)、野崎歓氏(『読売新聞』)等のお褒めの言葉を賜った。この欄にも、再録させていただいてある。(※近日掲載いたします)これらの記事は、フランス大使館文化部の文化通信欄にも、詳しく紹介されている。また、『ポール・クローデル協会報』には、パトリック・ド・ヴォース氏のフランス語による批評が掲載される予定である。
こういう訳で、さしあたっては、「物書き業」に専念しており、10年以上原稿が寝ていたロラン・バルトの名著『ラシーヌ論』(みすず書房)の校正が本格化し、また1984年から85年にかけてパリとジュネーヴで書いたエッセー『パリ感覚−都市を読む』が、岩波現代文庫に入ることになって、その校正が始まっている。水声社からは、これも10年以上眠っていた『かもめ/ハムレット』という、この古典的二作についても演出ノートと上演台本を一冊に纏めたものが出る予定。哲学者のミシェル・フーコーが二度目に来日した1978年に、フーコーと共に作った『哲学に舞台』(朝日出版社)も、新装版として再販される。他に、岩波文庫のラシーヌ悲劇『フェードル アンドロマック』に続くものとして、ラシーヌのローマ物悲劇の傑作二篇『ブリタニキュス ベレニス』の刊行も検討中。夏までにこれらがうまく刊行の運びに至れば、今年の夏は、いよいよ筑摩書房版『マラルメ全集1』つまり『全詩集』に『イジチュール』『賽の一振り』などを収めた最終配本に取り掛かるはず。『半獣神の午後』の変奏と、未完の哲学的小話『イジチュール』などが分担であり、今年の後半はこれにかかりきりになるだろう。
そうは言っても、舞台のほうも、久し振りで「能ジャンクション」の『葵上−湯浅譲二のミュジーク・コンクレートによる』と『当麻−折口信夫『死者の書』による』を作り直す予定であり、出来ればパリでも公演したいと考えている。
京都造形芸術大学では、9月に集中講義のいかたちでジュネ『女中たち』を作って見る予定。
いずれにせよ、『繻子の靴』上演への模索は続いているので、皆様方の絶大なご支援を賜りたく、この場を借りてお願いする次第である。    2006年3月 渡邊守章

空中庭園第九回公演
クローデルの詩による創作能上演
―ポール・クローデル没後50周年記念行事―

空中庭園第九回公演 創作能「薔薇の名 長谷寺の牡丹」

2006年1月15日(日)14時開演
◎作・構成・演出...渡邊守章/◎節付・作舞...観世榮夫
◎出演
観世銕之丞(福州鼓山湧泉寺の尼僧〔イゼの霊〕/長谷観世音〔牡丹の精〕)
梅若晋矢(若き詩人)
茂山逸平(間・福州鼓山の精=童子)
地頭...............観世榮夫
笛..................一噌幸弘
小鼓...............大倉源次郎
大鼓...............亀井広忠
太鼓...............三島 卓
◎場所
宝生能楽堂
〒113-0033 文京区本郷1-5-9
電話 03-3811-4843・ファックス 03-3811-4591
◎スタッフ
作・構成・演出 ...渡邊守章
節付・作舞 ...... 観世榮夫
照明...............服部基
演出助手.........前川錬一
舞台監督.........本城義明
制作...............渡邊清子
荻原達子
制作助手.........岩崎マチ子

◎主催
空中庭園/『繻子の靴』上演委員会
◎助成
芸術文化振興基金 企業メセナ協議会認定事業
◎後援
駐日フランス大使館・ポール・クローデル没後50周年記念企画委員会
日仏経済交流会(パリ・クラブ)・自由が丘日仏協会・日仏演劇協会
◎料金(全席指定)
S席:8,000円
A席:6,000円
B席:5,000円
学生:3,000円(当日のみ)
◎チケット取り扱い
空中庭園
電話 03-5753-0418・ファックス 03-5753-0419
チケットぴあ
電話 0570-02-9999・9988
0570-02-9966 (Pコード 365-833)
◎お問い合わせ
空中庭園
電話 03-5753-0418・ファックス 03-5753-0419

■チラシ■

2005年は、フランスの劇詩人で、大正年間には大使として東京に駐在したポール・ クローデルの没後50周年に当たり様々な行事が催されました。空中庭園では2005年3月に、その記念行事の幕開けとして、クローデルの詩による創作能連続上演を行い、『薔薇の名長谷寺の牡丹』の 初演と、『内濠十二景 あるいは《二重の影》』の能楽堂ヴァージョンの上演を行い、幸いにも皆様のご好評を得ました。 その間に、クローデルの集大成的戯曲『繻子の靴』の初版全訳が渡邊守章訳・校注で岩波文庫から刊行され、「今年の日本の文学シーンにおける最大の事件」(作家・東大教授松浦寿輝氏の評)として話題となっております。 3月の創作能連続上演の折に再演のご希望の強かった『薔薇の名長谷寺の牡丹』を、第九回公演として上演いたします。 謂わば『繻子の靴』の余白に書き込まれていく詩人の深層の劇を、音楽劇として舞踊劇として、そして詩劇として、舞台上に読み解いていく企てです。日本の伝統演劇と現代における舞台創造の接点を求める実験の一環です。 『薔薇の名長谷寺の牡丹』は、 詩人大使の日本滞在を飾る《毛筆自筆に よる日本風短詩》である『百扇帖』の中で、 最も重要な主題系をなす「長谷寺の牡丹」のシリーズを出発点に、「牡丹」の紅に 「薔薇」の記憶を読もうとする謂れを能 に仕組んだものです。 1900年から5年間滞在した中国福州で、 美しい人妻との不倫の恋を体験した詩人の内心の劇が、福州鼓山の湧泉寺(これも長谷寺と同じく観音寺です)の絶壁の草庵を訪れる日本人の詩人に、尼僧の姿をとって現われた、かつての「禁じられた恋」のイゼの霊によって語られます。 イゼは、この事件の破局の後に書いた戯 曲『真昼に分かつ』(1906年)のヒロインの名です。この謎めいた名の背後には、 ワーグナーの『トリスタンとイゾルデ』 が透けて見えるだけではなく、アマテラス神話が重ねられており、「イゼの名」 は伊勢に所縁の名でもあるというのが、 この創作能の作者の解釈です。そして、 モデルとなったポーランド系の美しい人妻の名はロザリー、愛称は「ローザ(薔 薇)」だったのです。 《薔薇の名》をめぐって、詩人の《真昼 時の情念=受苦》と、老境に入った詩人の《瞑想の眼差し》とが、鼓山湧泉寺と初瀬の観音寺(長谷寺)を繋いで、《禁じられた恋》の意味を問います。

空中庭園第八回公演
―ポール・クローデル没後50周年記念行事―

空中庭園第八回公演 繻子の靴タイトル

2005年11月29日(火) 東京日仏学院 エスパース・イマージュ
  18時開演 朗読オラトリオ『繻子の靴』(上の巻)
2005年11月30日(水) めぐろパーシモン・ホール・小ホール
  13時開演 朗読オラトリオ『繻子の靴』(上の巻)
  18時開演 朗読オラトリオ『繻子の靴』(下の巻)

出演:後藤加代・平栗あつみ・入江純・茂山逸平(30日のみ)
小田豊・錦部高寿・田原正治・吉見一豊・石井英明・瑞木健太郎

ポール・クローデル(1868-1955)は、20世紀フランスの最も重要な作家・劇詩人で、外交官でもあり、日本には大正年間に5年近く大使として滞在し、日本の文化を深く愛した。滞日中に完成する長編戯曲『繻子の靴』は、詩人が生涯の集大成と考えた壮大な規模の作品で、16世紀スペインを中心に、新旧両大陸に展開される若い貴婦人ドニャ・プルエーズと新大陸の征服者ドン・ロドリッグとの地上では叶わぬ恋を主軸とする。プルエーズに地上における不可能な政治的使命を託す夫ドン・ペラージュ、彼女に邪な恋を抱く背教徒ドン・カミーユという悲劇的な四角関係と対をなすようにして、ドニャ・ミュジークとナポリの副王の幻想的な恋物語が展開する。これらの主筋に絡む道化芝居の千変万化。この「四日間のスペイン芝居」は、ワーグナーの『ニーベルンクの指輪』四部作を凌駕する世界大演劇であり、西洋と東洋の、古典と前衛の演劇言語が絢爛たる火花を散らす、まさにグローバルな祝祭演劇である。クローデルの戯曲は、長短入り混じる独特の自由詩形で書かれており、まずその言葉の力を、俳優の声=身体によって捉えることが不可欠である。今回の《朗読オラトリオ》は、まずは劇詩人の言葉の響きあう場を、書物のページから現実の空間へと開いてみたい。

渡邊守章

料金
11月29日(火) 全席自由 予約2,000円 当日2,500円 日仏学院会員2,000円
11月30日(火)全席自由 昼の部 2,900円 夜の部 2,900円 昼夜通し券 5,000円

チケット取り扱い・問い合わせ
空中庭園 TEL 03-5753-0418 FAX 03-5753-0419

主催:空中庭園 『繻子の靴』上演実行委員会
共催:東京日仏学院(11月29日)
助成:芸術文化振興基金
企業メセナ協議会認定事業
後援:駐日フランス大使館、ポール・クローデル没後五十周年記念企画委員会
   日仏経済交流会(パリ・クラブ)
   自由が丘日仏協会
   日仏演劇協会