会話劇


12月のある夜、グリフィンドール寮の6年生男子の部屋で、
ひそひそと話し声が続いていた。
カーテンを引いたジョージのベッドからかすかに漏れてくる話し声は一人分に聞こえるが、実際はそこに2人の人間がいることを部屋の住人たちは分かっている。
g「どうするんだよ、もうあまり日にちがないぜ」
f「しかし奴に近づける絶好のチャンスをフイにはしたくないからな。慎重に選ばないと」
g「そうだな。あいつが会場内にいて、しかも、あんまり人に囲まれてないときだな」
f「あるかなあ、そんなチャンス」
g「あっても1回、2回、そんなもんだろ」
f「だな。だから、女の子と踊るのに夢中になってて気づかなかったじゃ目も当てられん」
g「いざとなったらダンスの途中で放り出しても、文句言ったり詮索したりしない子でなきゃいけないな」
f「ぜいたく言っていいか?」
g「なんだよ」
f「できたらそれなりにイケてるコがいいんだけどな」
ジョージもにやりと笑った。
g「もちろんそれについては異論はない。だけど今回はそれが最重要課題ではないからな」
f「分かってるって。そうだ、アンジェリーナ、どうだ? 彼女なら、どこへ行くんだとか何してたかとか、うるさいこと言わないだろうぜ」
g「そうだな、いい線だと思うけど……」
ジョージはちょっと考え込んだ。
f「なんか問題あるか?」
g「リーがふられたばっかりじゃないか」
フレッドは、なんだ、という顔で笑った。
f「あいつは慣れてるさ。1年のときから断られ続けてるからな。あいつ、もうすっかりゲーム感覚だぜ。卒業までに1回でも付き合ってもらえるかどうかって」
g「そうだけど……だからっておまえも『無理』のほうに賭けるなよ」
f「だったらおまえが『できる』のほうに賭けてやればいいじゃないか」
g「どぶに捨てる金はないぜ」
f「おまえもたいがいだな。あともう一人はどうする?」
g「うーん……」
f「アリシアかケイティは?」
g「アリシアはたしかもう相手が決まってる。ケイティは知らない」
f「一応当たってみるか」
g「けど微妙だな。彼女、途中で放り出しても……」
f「余計な詮索はしないだろうけど……」
g「怒らないかな?」
f「怒りはしないと思うが……」
g「傷つくかな」
f「……微妙だな……」
g「ああ〜、なんかもうめんどくさいな。やっこさんのことは見張ってなきゃいけないし。いっそ俺一人で行こうか。おまえはアンジェを誘えよ」
f「それじゃ不公平だ」
g「いいよ、俺がめんどくさいんだから。それに、チャンスを逃したくはないだろ? どっちかちゃんと見張ってたほうがいいんだよ」
f「そうだけど……だったら俺も一人で行くよ」
g「それじゃ俺たち2人ともだれも誘えなかったみたいじゃないか。そんなのウィーズリー家の恥だぜ!」
f「そうだなあ。ロンの手前もあるしな。あ、そうだ、いい案があるぜ」
g「あんまりよくなさそうな気がするけど、一応聞いてやるよ」
f「ポリジュース薬を作ろうぜ。俺らならできるって」
g「で?」
ジョージはすでにいや〜な顔をしている。
f「おまえ、だれか女の子に変身……」
ゲシッ!!
フレッドは思いっきりジョージに蹴落とされてカーテンから外へ転がり出た。
f「ってーな! 何すんだよ!」
怒鳴ったフレッドの後頭部に、今度は隣のリーのベッドから無言で枕が投げつけられた。迷惑そうに寝返りを打つリーの気配がした。
フレッドはその枕を拾うとそのまま2倍速の勢いでリーのベッドの中へ投げ返し、またカーテンの中へ戻った。
f「なら逆でもいいぜ。おれが変身しても」
g「中身がおまえだと分かってる女の子なんか気持ち悪くて連れ歩きたくない」
f「……もうちょっとほかに言い様ってもんはないのかよ。あ、そうだ!」
g「今度はなんだよ」
f「3年生以下は上級生が同伴してくれないと入れないんだよな」
g「で?」
f「ジニーを連れてくってのは?」
g「嫌だ! 妹なんか連れてくぐらいなら一人で行く!」
f「でもジニーも、だれか相手が見つからないとパーティーに行けないって焦ってたぜ? ここはひとつ兄貴としては一肌ぬいでやれよ。あいつならそれこそ途中で放り出したっていいさ。ママにも告げ口しないしな」
g「お・こ・と・わ・り・だ!」
f「なんだよ、兄貴がいのないやつだな!」
g「だったらおまえがジニーと行けよ!」
f「おまえがおれにアンジェを誘えって言ったんじゃないか!」
g「だからジニーと行くぐらいなら行かないほうがましだ!」
f「行かないわけにはいかないだろう! ほかにだれかいいのがいるかよ!」

「「「うるさいぞ、ウィーズリー! いいかげんに寝ろ!!」」」

知らぬ間に声高になっていた2人に、ルームメイトたちが声をそろえて怒鳴った。
2人はあわてて口を押さえて、改めて声を落としてひそひそ話を続けた。
f「ほかの寮はどうだ」
g「性格がよく分からないけど、リストアップしてみるか?」
  …………
こうして夜は更けていったが、その晩は結局結論は出なかったらしい。
そのイライラを、次の日ジョージはロンに八つ当たりしてぶつけたとか。

"Why? " said Ron. 
"Because George wants to invite him to the ball," said Fred sarcastically.
"Because we want to send a letter, you stupid great prat," said George.

 


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