6章 9と3/4番線からの旅

「フレッド、次はあなたよ」とふっくらしたおばさんが言った。
「僕フレッドじゃないよ。ジョージだよ。まったく、この人ときたら、これでも僕たちの母親だってよく言えるな。僕がジョージだってわからないの?」
「あら、ごめんなさい、ジョージちゃん」
「冗談だよ。僕フレッドさ」
と言うと、男の子は歩き出した。双子の片方が後ろから「急げ」と声をかけた。一瞬のうちにフレッドの姿は消えていた……でも、いったいどうやったんだろう?
 今度は三番目の男の子が改札口の柵に向かってキビキビと歩き出した――そのあたりに着いた――と思ったら、またしても急に影も形もない。
 こらこらフレッド、初登場がこれかい(笑)。いたずら好きのフレッド。しかしモリーは何のつもりで「ごめんなさい、ジョージちゃん」と言ったのか? 本気で分かってない?(笑)

 ……トランクの片側さえ持ち上がらず、二回も足の上に落として痛い目にあった。
「手伝おうか?」
さっき、先に改札口を通過していった、赤毛の双子のどちらかだった。
「うん。お願い」ハリーはゼイゼイしていた。
「おい、フレッド! こっち来て手伝えよ」
双子のおかげでハリーのトランクはやっと客室の隅におさまった。
 親切な双子。ハリーだと気づかないでも声をかけてあげたところがナイス。ジョージの細やかさが最初から伺える
「ありがとう」と言いながら、ハリーは目にかぶさった汗びっしょりの髪を掻き上げた。
「それ、なんだい?」
双子の一人が急にハリーの稲妻型の傷跡を指さして言った。
「驚いたな。君は……?」もう一人が言った。
「彼だ。君、違うかい?」最初の一人が言った。
「何が?」とハリー。
「ハリー・ポッターさ」双子が同時に言った。
「ああ、そのこと。うん、そうだよ。僕はハリー・ポッターだ」
双子がポカンとハリーに見とれているので、ハリーは顔が赤らむのを感じた。その時、ありがたいことに、開け放された汽車の窓から声が流れ込んできた。
「フレッド? ジョージ? どこにいるの?」
「ママ、今行くよ」
もう一度ハリーを見つめると、双子は列車から飛び降りた。
 ポカンと見とれるなんて、後の2人からしたらなんか考えられないわ。やっぱりまだ子供っぽい。双子が同時にしゃべるとこ好き。

「あらら、ロニー坊や、お鼻になんかちゅいてまちゅか?」と双子の一人がはやしたてた。  これはどっちだ? からかってばかりのフレッドか。ママ好きのジョージか。

「おお、パーシー、君、監督生になったのかい?」
双子の一人がわざと驚いたように言った。
「そう言ってくれればいいのに。知らなかったじゃないか」
「まてよ、そういえば、なんか以前に一回、そんなことを言ってたな」ともう一人の双子。「二回かな……」
「一分間に一、二回かな……」
「夏中言っていたような……」
「だまれ」と監督生パーシーが言った。
「どうして、パーシーは新しい洋服着てるんだろう?」双子の一人が聞いた。
「監督生だからよ」母親が嬉しそうに言った。
 ロンほどしょっちゅう愚痴ってはいないけど、多分二人もビルとチャーリーのお古だったりするだろうから、新品がうらやましい気持ちがあったのかな。自分たちで稼ぐようになって最初の自分たちへのご褒美が服だったものね。なんかそう思うとちょっと可哀想。
「さあ、みんな。楽しく過ごしなさいね。着いたらふくろう便をちょうだいね」
 母親はパーシーの頬にさよならのキスをした。パーシーがいなくなると、次に母親は双子に言った。
「さて、あなたたち……今年はお行儀よくするんですよ。もしも、またふくろう便が来て、あなたたちが……あなたたちがトイレを吹き飛ばしたとか何とかいったら……」
「トイレを吹っ飛ばすだって? 僕たちそんなことしたことないよ」
「すげえアイデアだぜ。ママ、ありがとさん」
「バカなこと言わないで。ロンの面倒見てあげてね」
「心配御無用。はなたれロニー坊やは、僕たちにまかせて」
「うるさい」
とロンがまた言った。もう双子と同じぐらい背が高いのに、お母さんに擦られたロンの鼻先はまだピンク色だった。
「ねえ、ママ。誰に会ったと思う? 今列車の中で会った人、だーれだ?」
ハリーは自分が見ていることにみんなが気がつかないよう、あわてて身を引いた。
「駅でそばにいた黒い髪の子、覚えてる? あの子はだーれだ?」
「だあれ?」
「ハリー・ポッター!」
ハリーの耳に女の子の声が聞こえた。
「ねえ、ママ。汽車に乗って、見てきてもいい? ねえ、ママ、お願い……」
「ジニー、もうあの子を見たでしょ? 動物園じゃないんだから、ジロジロ見たらかわいそうでしょう。でも、フレッド、ほんとなの? なぜそうだとわかったの?」
「本人に聞いた。傷跡を見たんだ。ほんとにあったんだよ……稲妻のようなのが」
「かわいそうな子……どうりで一人だったんだわ。どうしてかしらって思ったのよ。どうやってプラットホームに行くのかって聞いた時、本当にお行儀がよかった」
「そんなことはどうでもいいよ。『例のあの人』がどんなだったか覚えてると思う?」
母親は急に厳しい顔をした。
「フレッド、聞いたりしてはだめよ。絶対にいけません。入学の最初の日にそのことを思い出させるなんて、かわいそうでしょう」
「大丈夫だよ。そんなにムキにならないでよ」
 フレッドのほうが本能のままに行動する傾向が?(笑) でもちゃんとこの母親の言いつけは守ったんだよね。ハリーのために。しゃべり方がまだ可愛いです。まあ翻訳のおかげでしょうけれど

 妹のジニーが泣き出した。
「泣くなよ、ジニー。ふくろう便をドッサリ送ってあげるよ」
「ホグワーツのトイレの便座を送ってやるよ」
「ジョージったら!」
「冗談だよ、ママ」
 ジョージのほうが神経こまやかなイメージがありますが、フレッドも妹思いです。続巻で何度もその様子が伺えます。そしてジョージもやっぱりいたずら好きですね。当然ですが。この発想が好きです。

「おい、ロン」
双子が戻ってきた。
「なあ、俺たち、真ん中の車両あたりまで行くぜ……リー・ジョーダンがでっかいタランチュラを持ってるんだ」
「わかった」ロンはモゴモゴ言った。
 関係ないけど、この「モゴモゴ」は今思うと、「タランチュラ」にびびってたのかな?(笑)
「ハリー」双子のもう一人が言った。
「自己紹介したっけ? 僕たち、フレッドとジョージ・ウィーズリーだ。こいつは弟のロン。じゃ、またあとでな」
「バイバイ」ハリーとロンが答えた。
双子はコンパートメントの戸を閉めて出ていった。
「君、ほんとにハリー・ポッターなの?」ロンがポロリと言った。
ハリーはこっくりした。
「ふーん……そう。僕、フレッドとジョージがまたふざけてるんだと思った」
 ロンはさぞ双子にいろいろだまされてきたんでしょうね(笑)。さらりとハリーと友達(?)になった双子。自己紹介したのはどっちだろう? フレッドって感じだけど。

「ホグワーツに入学するのは僕が六人めなんだ。期待に沿うのは大変だよ。ビルとチャーリーはもう卒業したんだけど……ビルは首席だったし、チャーリーはクィディッチのキャプテンだった。今度はパーシーが監督生だ。フレッドとジョージはいたずらばっかりやってるけど成績はいいんだ。みんな二人はおもしろいやつだって思ってる」
 双子最初に興味持ったのはここかなあ。こういう子、タイプだなあって。成績はよかった二人。どこからどうなって3ふくろうに? 多分、事業に必要ないことは切り捨てていったのではとふんでるんですけどね。

「ジョージが言ってたけど、鼻くそ味に違いないってのに当たったことがあるって」
 どんな味だったんだろう。好きだわ、ジョージ。

「へぼ呪文め……ジョージから習ったんだ。ダメ呪文だってあいつは知ってたのに違いない」
 やっぱりだまされてきたのね。でも、その後のロンを見ると、呪文は正しくても……ってことが考えられますよ(笑)





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