3章 隠れ穴

前の座席からハリーに笑いかけているのは、ロンの双子の兄、フレッドとジョージだ。
「よう、ハリー、元気かい?」
(略)
「そんな必要ないよ。僕が誰と一緒に来たか、忘れちゃいませんか、だ」
ロンは運転席の方を顎で指して、ニヤリと笑った。
 なんだかんだ言ってロンも兄ちゃんズを頼りにしてるんだね。双子は車を飛ばしたかったというのが強いと思うんだが。まあ役に立ったからよしとしよう。

フレッドがロープの端をハリーに放ってよこした。
「それを鉄格子に巻き付けろ」
「おじさんたちが目を覚ましたら、僕はおしまいだ」
「心配するな、下がって」フレッドがエンジンを吹かした。
(略)
フレッドはそのまま車を空中で直進させた――ハリーが窓際に駆け戻って覗くと、鉄格子が地上すれすれでブラブラしているのが見えた。
 フレッド要領よすぎ(笑)。経験あるのか?

フレッドは車をバックさせて、できるだけハリーのいる窓際に近づけた。
(略)
「まかせとけ」ジョージが助手席から声をかけた。「ハリー、ちょっとどいてろ」
フレッドとジョージがそーっと窓を乗り越えて、ハリーの部屋に入ってきた。
 ジョージがなんでもない普通のヘアピンをポケットから取り出して鍵穴にねじ込んだのを見て、ハリーは舌を巻いた――この二人には、まったく負けるよな――。
「マグルの小技なんて、習うだけ時間のムダだってバカにする魔法使いが多いけど、知ってても損はないぜ。ちょっとトロいけどな」とフレッド。
 実はジョージにはまったのがここ。なんかこういうことできる人っていいなあって思っちゃうのよね。べつに本物の泥棒さんは好きじゃないですけど。なんかかっこいいのよ。

 カチャッと小さな音がして、ドアがハラリと開いた。
「それじゃ――僕たちはトランクを運び出す――君は部屋から必要なものをかたっぱしからかき集めてロンに渡してくれ」ジョージがささやいた。
「一番下の階段に気をつけて。軋むから」
踊り場の暗がりに消えていく双子の背中に向かって、ハリーがささやき返した。
(略)
それからフレッドとジョージが重いトランクを持ち上げて階段を上ってくるのに手を貸した。
 1巻に続きハリーのトランクを運んであげる双子。いいお兄ちゃんです。

フレッドが窓を乗り越えて車に戻り、ロンと一緒にトランクを引っ張り、ハリーとジョージは部屋の中から押した。
 後でも出てきますけど、こういう役割分担がとてもこの二人らしいと思ってしまうわ。きっとこういうときって相談しなくても自然にそういうふうに動いてるんだろうなって気がする。

「もうちょい」車の中から引っ張っていたフレッドが、あえぎながら言った。「あと一押し……」
 ハリーとジョージがトランクを肩の上に載せるようにしてグッと押し出すと、トランクは窓から滑り出て車の後部座席に収まった。
「オーケー。行こうぜ」ジョージがささやいた。
 私もジョージに「行こうぜ」ってささやいてほしい(←バカ)

 ロン、フレッド、ジョージがハリーの腕をつかんで、力のかぎり、ぐいと引っ張った。
(略)
ウィーズリー三兄弟が満身の力でハリーを引っ張った。
(略)
「フレッド、今だ! アクセルを踏め!」
そして車は急上昇した。
 ロンが双子に指示を出すという珍しい場面。フレッドも状況を心得ているのでちゃんと言うこときいてます。

ウィーズリー兄弟は大声で笑い、ハリーも座席に収まって、顔中をほころばせていた。
(略)
ジョージがロンにヘアピンを渡した。
 ロンもヘアピンで少なくとも鳥かごぐらいなら開けられるってことね。なかなかやるじゃん。

話し終わると、しばらくの間、ショックでみんな黙りこくってしまった。
「そりゃ、くさいな」
フレッドがまず口を開いた。
「まったく、怪しいな」ジョージが相槌を打った。「それじゃ、ドビーは、いったい誰がそんな罠を仕掛けてるのかさえ教えてくれなかったんだな?」
「教えられなかったんだと思う。今も言ったけど、もう少しで何か漏らしそうになるたびに、ドビーは壁に頭をぶっつけはじめるんだ」とハリーが答えた。
「もしかして、ドビーが僕に嘘をついてたって言いたいの?」
フレッドとジョージが顔を見合わせたのを見て、ハリーが聞いた。
 さすが兄ちゃんズ。二人が何かのときに顔を見合わせるのっていかにも双子っぽくて大好き。

「ウーン、なんと言ったらいいかな」フレッドが答えた。「『屋敷しもべ妖精』ってのは、それなりの魔力があるんだ。だけど、普通は主人の許しがないと使えない。ドビーのやつ、君がホグワーツに戻ってこないようにするために、送り込まれてきたんじゃないかな。誰かの悪い冗談だ。学校で君に恨みを持ってるやつ、誰か思いつかないか?」
「いる」ハリーとロンがすかさず同時に答えた。
「ドラコ・マルフォイ。あいつ、僕を憎んでる」ハリーが説明した。
「ドラコ・マルフォイだって?」ジョージが振り返った。
「ルシウス・マルフォイの息子じゃないのか?」
 ロンはルシウスのことは知らなかったのかな。双子のほうが何かとパパからいろいろ聞いてるようです。
 ところで、この前の1年間は学校でドラコの存在を知らなかったんだろうか。双子の視界に入ってもいない存在だった?(笑)


「たぶんそうだ。ざらにある名前じゃないもの。だろ? でも、どうして?」とハリー。
「パパがそいつのこと話してるのを、聞いたことがある。『例のあの人・・・・・』の大の信奉者だったって」とジョージ。
「ところが、『例のあの人』が消えたとなると」今度はフレッドが前の席から首を伸ばして、ハリーを振り返りながら言った。「ルシウス・マルフォイときたら、戻ってくるなり、すべて本心じゃなかったって言ったそうだ。ウソ八百さ――パパはやつが『例のあの人』の腹心の部下だったと思ってる」
 フレッド、前を見て運転しようか。

「まあ、誰が主人かは知らないけど、魔法族の旧家で、しかも金持ちだね」とフレッド。
「あぁ、ママなんか、アイロンかけする『しもべ妖精』がいたらいいのにって、しょっちゅう言ってるよ。だけど家にいるのは、やかましい屋根裏お化けと庭に巣食ってる小人だけだもんな。『屋敷しもべ妖精』は、大きな館とか城とかそういうところにいるんだ。俺たちの家なんかには、絶対来やしないさ……」とジョージ。
 ジョージのママ思いがここにも出てたのね。アイロンかけだけは私もしもべ妖精がほしいよ。

「パーシーが監督生になったとき、パパとママが、パーシーに買ってやったふくろうさ」
フレッドが前の座席から答えた。
「だけど、パーシーは僕に貸してくれなかったろうな。自分が必要だって言ってたもの」とロン。
「パーシーのやつ、この夏休みの行動がどうも変だ」ジョージが眉をひそめた。
「実際、山ほどの手紙を出してる。それに、部屋に閉じこもってる時間も半端じゃない……考えてもみろよ、監督生の銀バッジを磨くったって、限度があるだろ……。フレッド、西にそれ過ぎだぞ」
 ジョージが計器盤のコンパスを指差しながら言った。フレッドがハンドルを回した。
 まさにこの双子らしいところですね。フレッドだけだとそれちゃうのよね(笑)。パーシーのことを心配(?)するのも、行動を観察してるのもいかにもジョージらしいです。

フレッドが声をあげて笑った。
「そうだ。親父さんたら、マグルのことにはなんでも興味津々で、家の納屋なんか、マグルのものがいっぱい詰まってる。親父はみんなバラバラにして、魔法をかけて、また組み立てるのさ。もし親父が自分の家を抜き打ち調査したら、たちまち自分を逮捕しなくちゃ。お袋はそれで気が狂いそうさ」
「大通りが見えたぞ」ジョージがフロントガラスから下を覗き込んで言った。「十分で着くな……よかった。もう夜が明けてきたし……」
(略)
 フレッドが車の高度を下げ、ハリーの目に、畑や木立の茂みが黒っぽいパッチワークのように見えてきた。
「僕らの家は」ジョージが話しかけた。「オッタリー・セント・キャッチポールっていう村から少しはずれたとこにあるんだ」
(略)
「着地成功!」 フレッドの言葉とともに、車は軽く地面を打ち、一行は着陸した。
 オッタリー・セント・キャッチポールって実在しないんですよね。モデルはどこなんだろう。

「さあ、みんな、そーっと静かに二階に行くんだ」フレッドが言った。「お袋が朝食ですよって呼ぶまで待つ。それから、ロン、おまえが下に跳びはねながら下りて行って言うんだ。『ママ、夜の間に誰が来たと思う!』そうすりゃハリーを見てお袋は大喜びで、俺たちが車を飛ばしたなんてだーれも知らなくてすむ」
 さしものフレッドの悪知恵も甘かったね。

「アチャ!」とフレッド。
「こりゃ、ダメだ」とジョージ。
(略)
「それで?」と一言。
「おはよう、ママ」ジョージが、自分では朗らかに愛想良く挨拶したつもりだった。
 ジョージ、この期に及んで…(笑)。タラリ、とか汗流しながらそれでもにっこり挨拶してるジョージの顔を想像すると可愛くて仕方ないわv

「母さんがどんなに心配したか、あなたたち、わかってるの?」ウィーズリー夫人の低い声は凄みが効いていた。
「ママ、ごめんなさい。でも、僕たちどうしても――」
 三人の息子はみんな母親より背が高かったが、母親の怒りが爆発すると、三人とも縮こまっていた。
「(略)ビルやチャーリーやパーシーは、こんな苦労はかけなかったのに……」
「完璧・パーフェクト・パーシー」フレッドがつぶやいた。
「パーシーの爪のあかでも煎じて飲みなさい!」ウィーズリー夫人はフレッドの胸に指を突きつけて怒鳴った。
 縮こまってる三兄弟を想像するとほほえましいけど、このモリーの叱りかたはあまりよろしくないなあ。フレッドが皮肉言いたくなるのもわかるよ。

「ママ、曇り空だったよ!」とフレッド。
「物を食べてるときはおしゃべりしないこと!」ウィーズリー夫人が一喝した。
「ママ、連中はハリーを餓死させるとこだったんだよ!」とジョージ。
「おまえもお黙り!」とウィーズリー夫人が怒鳴った。
 モリーひでえ(笑)。ジョージは正当な理由を述べたのにぃ。

「あぁ、ハリー、君のサインを欲しがるぜ」フレッドがニヤッとしたが、母親と目が合うと途端にうつむいて、あとは黙々と朝食を食べた。
 やっぱりママにはかなわない息子であった。これくらいの力関係あったほうがいいのよね、親子って。

「なんだか疲れたぜ」
フレッドがやっとナイフとフォークを置き、あくびをした。
「僕、ベッドに行って……」
「行きませんよ」ウィーズリー夫人の一言が飛んできた。
(略)
「ママ、そんな――」
「おまえたち二人もです」夫人はロンとフレッドをギロッとにらみつけた。
 ここちょっと不自然なのよね。流れからいって「僕、ベッドに行って」と言ったのはフレッドです。なら普通「ママ、そんな」もフレッドでしょう。だったら「おまえたち二人も」はロンとジョージが普通でしょ。でも原書見てもやっぱり庭小人駆除をしろと最初にいいつけた相手がジョージだとは書いてないし、そもそもそれではやっぱりおかしいし。

「ママ、僕たち、庭小人の駆除のやり方ぐらい知ってるよ」ジョージが唸った。
 ジョージはロックハートが(ママが彼にお熱なのが)気にいらなくて言ってるのかなって、最初読んだときの印象でした。

「ママったら、彼にお熱なんだよ」フレッドはわざと聞こえるようなささやき声で言った。
「フレッド、バカなことを言うんじゃないわよ」
 親父さんのことをハリーに話したときもそうですが、フレッドのほうが両親や家族のことをちょっとドライに見てるようなとこがありますね。

 あくびをしながら、ぶつくさ言いながら、ウィーズリー三兄弟はだらだらと外に出た。
 だらだら(笑)。年頃の男の子っぽくていいなあ。

「それっぽっちか!」フレッドが言った。「俺なんかあの木の切り株まで飛ばしてみせるぜ」
 フレッド負けず嫌い。

「な? 連中はあんまり賢くないだろ」
一度に五、六匹を取り押さえながらジョージが言った。
「庭小人駆除が始まったとわかると、連中は寄ってたかって見物に出てくるんだよ。巣穴の中でじっとしている方が安全だって、いいかげんわかってもいいころなのにさ」
 これよ、これ。こういうジョージの物言いが好き(笑)。

「うわさをすれば、だ!」ジョージが言った。「親父が帰ってきた!」
四人は大急ぎで庭を横切り、家に駆け戻った。
(略)
「パパ、なんかおもしろいもの見つけた?」とフレッドが急き込んで聞いた。
(略)
「鍵なんか縮むようにして、なんになるの?」ジョージが聞いた。
 で、庭小人駆除は完了したのかね? パパ大好きの子供達。いいねえ。
ここはたまたまかもしれないけど、聞き方がまたフレッドとジョージらしいのよね。好奇心満々のフレッド。何になるのかと思考するジョージ。





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