関俊彦さん

関俊彦さんのこと

　私は声優の関俊彦さんが好きである。いわずとしれた土井先生の声をやっていらっしゃる。こんなに好きなのは、神谷明さん以来である。
　しかし、土井先生の声だから好きなのかというと、そういうわけでもない。といって、関さんの声だから土井先生が好きなのでもない。実は、私が関さんのことを知ったのは、最初はアニメではなかった。もちろん、あちこちで声は聞いていたはずだ。代表的なものだけでも、「YAWARA」も見ていたし（しかしこの時は神谷さんの声しか聞こえていなかったらしい）、「らんま２/１」も見ていた。「おーい竜馬」も何度か見たはずだ。しかし、ちょうど一時期ほど声優さんへの関心がなかった時期でもあったのか、なぜか印象が残っていない（もちろん、再放送では関さんの声しか聞こえていない）。
　そんな私が初めて関さんの名前を覚えたのは、実は声優としてではなかった。ピンときた方もいらっしゃるだろうが、NHK教育の「笛はうたう」が最初だったのだ。しかも、私が見たときは、「せきとしひこ」と、ひらがなで名前が出ていた。なぜその名前を覚えたかというと、関さんはとても歌が上手だ。私は、「歌のおにいさん」として関さんのことを覚えた。断っておくが、そのころ私は小学生だったわけではない。残念ながら。なぜか「９チャンネル」にはまっていた時期があったのだ。
　ちなみに、教育テレビはけっこう声優さんの穴場だ。けっこう豪華声優陣が共演していたりする。「笛はうたう」の「としくん」と同時期には長島雄一さんが「ちょうさん」として社会科の番組に出ていた。水島裕さんが「ゆうにいちゃん」をやっていた番組では、田中真弓さんと林原めぐみさんが共演していた。山口勝平さんと高山みなみさんは、よく海外ドラマで共演している。
　話を元に戻そう。そう、私はあまりに「としくん」の歌がうまいので、この人は「歌のおにいさん」だと思い込んでしまった。どこかの声楽科を出た人だと思ってしまった。思い込みというのはおそろしいものである。
　さて、一時的な教育テレビマイブームはあっというまに冷めた。そしてその後、総合のほうで「忍たま」第一シリーズを見る事となった。はじめはきり丸が大好きだったので、土井先生がいいなと思い始めたのは、もうシリーズ後半だった。そして何気なく、声優さんは誰なのだろうと思って、エンディングロールを見た。そしたら「関　俊彦」と出ていた。またなにげに読んでみて「え！？」と思った。「セキトシヒコ」？　しかし私はそのころすでに、「としくん」の話す声など覚えてはいなかった。しかも、絶対に「歌のおにいさん」だと思い込んでいたのだ。それで私は、同一人物ではないかもしれないと思った。なにしろ「としくん」は「せきとしひこ」と平仮名だった。こっちは漢字だ。「セキトシヒコ」とは読まないかもしれない。私は本気でそう思った。
　それで少しして、まだ「笛はうたう」にとしくんは出ているだろうかと見てみた。出ていた。しかも「関　俊彦」と漢字になって出ていた。
　それで私は思った。「歌のおにいさんが声優さんに転職したんだ」と。思い込みとは恐いものだ。
　さらに後、「忍たま」の後に「モンタナ・ジョーンズ」というアニメが始まった。単純だけど楽しんで見ていた。そんなある日、その「モンタナ」のゲストキャラに、妙に聞き覚えがある、でもだれだか思い出せない、でもすごく私好みのハートを震わす声が出てきた。ずっと考えていた。駄礼田郎。
　あ！と思ったのは、そのキャラがそれまでになく大きな声を出した時だったような気がする。土井先生だ！　そのころには土井先生大好き人間になっていた。
　でもアニメの土井先生とはずいぶん違って、ずっとクールで、時に熱情的で、大人で、貫禄があった。そしてその時の声で、私はすっかり関俊彦さんのファンになってしまった。
　その後書店でアニメ雑誌を見て、やっと関さんが声優さんだということを知った。そして「アニメディア」の表紙に「関俊彦」の文字を見つけて衝動買いしてしまい、その中で同人誌の通販というものに初めて手を染めてしまったのだあ！
　まあそれはともかく。
　私は関さんの、どちらかというと、初めてファンになったハミードのようなクール系の声が好きだ。ドムとか手塚忍とかあたりだ。ぞくぞくする。
　もちろん、デュオも格別だが。
　このところでは悪役っぽいのもあったり、「フルーツバスケット」では紅葉のパパだった。子持ちだあ。（なぜ終わってしまったんだあ）
　アレクサンダーや三蔵は、単にクールというのとも違う大人の魅力があって、高貴さが感じられていいですね。
　とてもとても全部については書き切れませんが、ここでいいたいのは、多分原作の土井先生こそ、関さんが声をあてるのにふさわしいという気がするのだ。
明るくて、温かくて、優しくて、一生懸命だ。だけどとても大人で、表面に現れたものだけがすべてとはとても思えない奥深さを感じさせる。おそらくはクールで、いざとなったら恐ろしい人だろうと思わせる。育ちがよさそうに感じさせるけど気取ったところはない。そんな人だから、関さんが演じてきた多くの魅力的な人物の多くの性格を包含していると思うから。
　絶対かないそうにない私の望みは、原作そのままの土井先生を関さんの声で見る事だ。