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公用文における漢字使用等について


編者注:昭和56年10月1日付けで「常用漢字表」(内閣告示第1号・内閣訓令第1号)が発せられたのに伴い,各行政機関が作成する公用文の表記の統一を図るため,「公用文における漢字使用等について」を事務次官等会議で申合せし,内閣官房長官から各省庁事務次官あてに通知したものである。

内閣閣第138号
昭和56年10月1日
          殿
内閣官房長官
                
公用文における漢字使用等について(通知)

 本日,常用漢字表に関する内閣訓令が発せられたことに伴い,今後,各行政機関が作成する公用文における漢字使用等について,事務次官等会議において別紙のとおり申合せされました。
 ついては,貴省(庁)においては,この申合せを十分了知され,実施されるよう御配意願います。


(別紙)
公用文における漢字使用等について

(昭和56年10月1日付け事務次官等会議申合せ)
 昭和56年10月1日付け内閣訓令第1号「常用漢字表の実施について」が定められたことに伴い,今後,各行政機関が作成する公用文における漢字使用等は,下記によることとする。
 なお,「公用文における当用漢字の音訓使用及び送り仮名の付け方について」(昭和48年6月18日事務次官等会議申合せ)は,廃止する。


1 漢字使用について
 (1) 公用文における漢字使用は,「常用漢字表」(昭和56年内閣告示第1号)の本表及び付表
   (表の見方及び使い方を含む。)によるものとする。
     なお,字体については通用字体を用いるものとする。
 (2) 「常用漢字表」の本表に掲げる音訓によって語を書き表すに当たっては,次の事項に留意す
    る。
    ア 次のような代名詞は,原則として,漢字で書く。
       例  彼  何  僕  私  我々
    イ 次のような副詞及び連体詞は,原則として,漢字で書く。
       例  必ず  少し  既に  直ちに  甚だ  再び  全く  最も  専ら
          余り  至って  大いに  恐らく  必ずしも  辛うじて  極めて
         殊に  更に  少なくとも  絶えず  互いに  例えば  次いで  努めて
         常に  初めて  果たして  割に
          概して  実に  切に  大して  特に  突然  無論
          明くる  大きな  来る  去る  小さな  我が(国)
      ただし,次のような副詞は,原則として仮名で書く。
       例  かなり  ふと  やはり  よほど
    ウ 次の接頭語は,その接頭語が付く語を漢字で書く場合は,原則として,漢字で書き,その
     接頭語が付く語を仮名で書く場合は,原則として,仮名で書く。
       例  案内  調査
          あいさつ  べんたつ
    エ 次のような接尾語は,原則として,仮名で書く。
       例  げ(惜しもなく)  ども(私ども)  ぶる(偉ぶる)  み(弱
         め(少な
    オ 次のような接続詞は,原則として,仮名で書く。
       例  おって  かつ  したがって  ただし  ついては  ところが  ところで
         また  ゆえに
      ただし,次の4語は,原則として,漢字で書く。
          及び  並びに  又は  若しくは
    カ 助動詞及び助詞は,仮名で書く。
       例  ない(現地には,行かない。) ようだ(それ以外に方法がないようだ。)
          ぐらい(二十歳ぐらいの人) だけ(調査しただけである。) ほど(三日ほど経過し
         た。)
    キ 次のような語句を,( )の中に示した例のように用いるときは,原則として,仮名で書く。
       例  こと(許可しないことがある。)  とき(事故のときは連絡する。)
          ところ(現在のところ差し支えない。)  もの(正しいものと認める。)
          とも(説明するとともに意見を聞く。)  ほか(特別の場合を除くほか
          ゆえ(一部の反対のゆえにはかどらない。)  わけ(賛成するわけにはいかない。)
          とおり(次のとおりである。)  ある(その点に問題がある。)
          いる(ここに関係者がいる。)  なる(合計すると1万円になる。)
          できる(だれでも利用ができる。)  ・・・あげる(図書を貸してあげる。)
          ・・・ていく(負担が増えていく。)  ・・・ていただく(報告していただく。)
          ・・・ておく(通知しておく。)  ・・・てください(問題点を話してください。)
          ・・・てくる(寒くなってくる。)  ・・・てしまう(書いてしまう。)
          ・・・てみる(見てみる。)  ない(欠点がない。)
          ・・・てよい(連絡してよい。)  ・・・かもしれない(間違いかもしれない。)
          ・・・にすぎない(調査だけにすぎない。)
          ・・・について(これについて考慮する。)
2 送り仮名の付け方について
 (1) 公用文における送り仮名の付け方は,原則として,「送り仮名の付け方」(昭和48年内閣告
    示第2号)の本文の通則1から通則6までの「本則」・「例外」,通則7及び「付表の語」(1のな
    お書きを除く。)によるものとする。ただし,複合の語(「送り仮名の付け方」の本文の通則7を
    適用する語を除く。)のうち,活用のない語であって読み間違えるおそれのない語については,
    内閣官房及び文化庁からの通知の定めるところにより,「送り仮名の付け方」の本文の通則6
    の「許容」を適用して送り仮名を省くものとする。
 (2) (1)にかかわらず,必要と認める場合は,「送り仮名の付け方」の本文の通則2,通則4及び
    通則6((1)のただし書の適用がある場合を除く。)の「許容」並びに「付表の語」の1のなお書
    きを適用して差し支えない。
3 その他
 (1) 1及び2は,固有名詞を対象とするものではない。
 (2) 1及び2以外の事項は,「公用文作成の要領」(「公用文改善の趣旨徹底について」昭和27
    年内閣閣甲第16号依命通知)による。
 (3) 専門用語又は特殊用語を書き表す場合など,特別な漢字使用等を必要とする場合には,1,
    2,及び3(2)によらなくてもよい。
 (4) 専門用語等で読みにくいと思われるような場合は,必要に応じて,振り仮名を用いる等,適切
    な配慮をするものとする。
4 運用に関する事項
  1から3までの運用に関し必要な事項については,内閣官房及び文化庁から通知するものとする。
5 法令における取扱い
  法令における漢字使用等については,別途,内閣法制局からの通知による。

文化庁「公用文の書き表し方の基準(資料集)」から抜粋

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