1 法律実務家の「書く」とWordの活用
■ 法律実務家とWord
(1) 法律実務家にとって,訴状や準備書面あるいは判決書等の法律文書作成のため,日本語ワープロソフトが欠かせない。
しかし,そのソフトは,単なる文書の作成・浄書(印刷)のためだけのものではなく,情報の検索,処理を含めた情報処理システムとしての機能性が要求されるようになってきた。
(2) この日本語ワープロソフトとしては,以前はJustSystem社の「一太郎」が圧倒的なシェアを持っていたが,近年は,Microsoft社のWordが機能を高めて普及し,利用が拡大してきた。
(3) 法学,法律実務の世界でも,文書の作成にはWordを利用する人が増えており,近時,裁判所も一太郎からWordに移行すると伝えられており,ますますワードの普及と活用場面は広がるものと思われる。
■ Wordの魅力
(1) さて,こうした中で,Wordを使って,どう法律文書の作成を効率化するかが関心事となる。
さしあたっての問題は,現にWordソフトに備わっている操作方法にどう順応していくかである。これは実際に操作したり,マニュアルを見たりして操作方法に習熟するしかない。
しかし,Wordの本当の魅力は,キーで文字を打ち込み,しこしこと文章を作成することにあるのではない。
(2) Wordの魅力の第一は,繰り返し行われる煩わしい操作や複雑な手順操作が,ボタン一つで一連の動作として簡略化,自動実行化されることである。これがマクロ機能と呼ばれるものであり,VBA(Visual Basic for Applications)というプログラム言語で組み立てられる。これをうまく利用すれば,文書作成の作業効率は一層向上する。
(3) Wordの魅力の第二は,画面に表された入力済みの文字が,そのまま利用できる点である。これにより,ネット上の情報の収集や検索,編集,計算処理,チェック等の多様な情報処理ができ,思考は促進され,知的作業の空間が広がっていく。 Wordは,他の情報処理ツールとの連携性が高く,キーを打ち込む以上に,打ち込んだ結果を拡張して,知的な情報検索や創造力を生むツールにもなり得るのである。
■ Wordで広がる世界
(1) パソコンのキーやマクロの操作の向こう側に,単なるリーガルライティング(Legal writing)を超えて,リーガルリサーチ(Legal research)と直結した法情報処理の創造的な世界が広がる(インターネット上での情報検索と法律研究(1999伊藤博文教授)参照。)。それがマクロ(VBA)によって実現される。
(2) では,何をどのようにすれば,法律実務の情報検索と文書作成が一体化した効率化や知的作業の創造性が実現されるのであろうか。
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